第7話 二度目の幼稚園
プレゴールデンエイジ。
それは幼稚園に入る年頃の間の、神経系の成長が著しい期間を示す言葉である。
スポーツにおいて必要な資質である反射神経やバランス感覚なんかはこの時期に鍛えることで、大きく伸ばすことができると言う。
この春から、近所の幼稚園に通園することになったのだがそこで俺が身につけるものは集団生活や協調性なんかでは無く、運動神経だ。
という訳で、俺は晴れてお遊戯の時間を抜け出しては外を走り回る問題児となったのである。
すまんな、命がかかってるんだ……許せ、とは言わない。えりか先生、まり先生、ほんとすんません。
そんな感じで順調に園児生活を過ごし、気づけば初夏になるという頃。
爺さんが突然、テニスコートに現れた。
「おう、練習熱心だな。偉いぞー、環!」
爺さんは金持ちなだけあって、働き者だ。いつも忙しそうに、あっちこっちと飛び回っているので、孫バカ具合に比べると遭遇する頻度はそれほどでも無い。
このコートで会うのは三回目くらいかな。
「あ、じいじ。見てよ、サーブの早くなったでしょ!」
ファンサービスとばかりに、そこそこ強めのサーブを決めて見せる。
「お、おお! 凄いな!? もしかして、環は天才か!」
「しょーらいはプロだからね」
というか、それ以外の選択肢がないのだ。こうして、プロになる根回しはコツコツしていかないとな。
不安定な職だからと反対されたら目も当てられない。
「おお、そうか。環ならきっとなれるぞ!」
よし、言質は取ったぞ。
「じいじは今日、どうして来たの?」
「そうだ、環に聞きたいことがあってな。じいじの知り合いの娘さんにプロのテニス選手と結婚した子がおってのう」
「へー、プロの選手」
ほほう、それは興味深い。
「でだな、このコートを使ってみたいと言っていてな。丁度、環と同い年の子もいるらしくての。環が良ければ一度会ってみるのはどうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます