第6話 見取稽古


 完成したテニスコートは順調に運営されている。俺のわがままから始まった施設だが、運営管理費とコート使用料で釣り合いが取れているようだ。


 物珍しさもあって、利用者は途切れることなく来ているようなので、このまま順調に進んで言って欲しいものだ。


 俺が利用しているのは基本的に室内のハードコートだ。芝だと跳ねないし、クレーは逆に跳ねすぎるので、一番気持ちよく練習できるのがハードコートだった。


「てい、やっ、はぁっー!」


 専業主婦である我が母上殿にボール出しをお願いし、俺はひたすら理想形をめざしてスイングしていく。


 テニスコートを一般開放したことで、俺が利用するにも予約が必要になってしまったが、利点もいくつかあった。


 その最たるものが、自分より上手いテニス選手を生で見れることだ。


 ステータスのシステムを使えばどんなプレイスタイルにも適応できる、と俺は思っている。しかし、ほとんど初心者の俺が参考にできる教材がほとんどない。


 自分自身の年齢も相まって、テニスのコーチをお願いするにしても、幼児向けのレッスン内容になるだろう。


 また、インターネットのない時代。こうしたリアルタイムな情報は貴重なのだ。


 ところでついこの前。《モーションアシスト》のスキルを取得したのだが、今回もまたひとつスキルを取得した。


 スキル《見取稽古》である。

 TPを1ポイント消費して獲得したこのスキル。その効果は他人のプレーを観たあと、それを参考にした練習に補正がかかる。


 来年からは幼稚園に通わなければならないので、自由に使える時間を最大効率化するためこのスキルを取得したのだ。


 TPは誕生日になると1ポイント増えることは確認しているので、これからはなるべく使っていこうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る