作戦失敗?
「………き………友崎!起きろ!!」
「…っ!?」
呼び声に体を起こせば、隣には少し化粧後の残る見知った顔。
「オレ、どうしてたんだ…?さっきまで廊下で…」
そうだ、廊下で。
あの男に話しかけられて
それで。
あの人とあいつの恋人同然のふるまいを見せつけられて。
それから。
それから俺は…
何をしたんだ?
「びっくりしたわマジで。真っ青な顔で帰って来たかと思ったら、いきなりぶっ倒れたんだからな?お前。」
「そうなのか?」
「そーそー。あんまり遅いから、一旦やめてあーしらで探しに行かないかって感じだったんだよ?」
「そんなに?」
スマホを開けば、もう戸締りされていてもおかしくない時刻だった。
「にしても、結局〈最高院〉来なかったな~」
…。
「そだね~。…明日はもっと色んな服着ようね!シマ太郎!?」
「おいやめてください。」
「だが断るっス!」
「〈純粋に愛されたことが無いゆえに相手の一部を食べることでしか愛情表現できなくなった廃墟に住まうお嬢様〉とかもあるのですよ??」
「さっきからお前の考えるその謎シチュはなんなんだ…。」
「…それじゃあ、今日はもう解散としよう。友崎君も、それからゼブラちゃんも…あと不二華ちゃんたちも、気を付けて帰るんだよ。家に帰ったらしっかり休むように。」
「はーい!ミドリン!!」
「”お姉ちゃん”と呼んでくれたまえ!!」
「恥ずかしいからやめてくれ、美鳥姉…。」
…。
/
いつもよりなんとなく暗い雨の夜。
二つの傘が街灯照らす暗闇を進みます。
「いや~マジ疲れたな~、わりぃな友崎。連絡しなかったからあんな感じなっちまって、もう痛くねぇか?蹴られた脇腹。」
「ああ。」
「しかし女ってすげえな?化粧一つでここまで化けられるんだから。俺も一応覚えた方がいいのかな~…。」
「そうかもな。」
一人の男子生徒が口を開く
「なぁ志摩。」
一人の元男子生徒が返す。
「どうした?」
「フラれた。」
「…。」
「…。」
「いや、フラれたってのは違うかも。」
「はは、なんだソレ?てーかお前、好きな人いたんだな?」
「あぁ。蒼真先輩だ。」
「…そっか。」
「…日ごろから『最高院様大好き~』とか言ってた人だし?多少は覚悟してただろ?」
「自分が好きな人と仲良さそうに腕組んでるよく分からん男に話しかけられたこととか、お前あんのかよ?」
「…そりゃキツい。」
「…。」
「おい友崎、ちょいとしゃがめ。」
「お?どうし…」
もふっ。
「…なんのつもりだ。」
志摩が友崎の頭を両腕で抱く。
その行為を世間一般的に呼ぶなら、つまりそれは──
「ハグ、またの名を抱擁。両腕で対象を抱きしめることにより、友情やら愛情やら親愛やら根性やら思いやりやらを伝える行為であり……」
「なんでこんなことしてんだって聞いてんだよ。分かってて言ってるだろ。」
「一応かわいい…のかな?俺?まぁとにかく、可愛い系美少女の抱擁で失恋のショックをなぐさめられれば~的なやつだったんだが。どうよ?安らいだか?」
「…ちょっと硬い。」
「はは、そりゃすまねーな。……でも、まだあきらめんの早いと思うぜ?」
「は?」
「お前な…俺らの作戦目標忘れたのかよ。〈最高院を別の女子とくっつける〉だぞ?蒼真先輩が仲良さそうに抱き着いてたのって、その〈最高院〉なんじゃねーの?」
「…あ~…あ?」
友崎はちょっと疑問に思いました。
あのぱっとしないどこにでも良そうなのが最高院?
転校初日にビーム出したり光輝いたり、噂では不良やら裏社会やらをバッタバッタとなぎ倒したのが、あんなパッとしない男子生徒?
なんか名前もイカだかタコだかダサい名前だった気がするし。
…でも女遊びにかまけていそうという雰囲気だけは、共通点がありました。
取り巻きもいましたし。
まぁ恋敵だからそう思えるだけかもしれませんが。
「最終的に〈最高院〉を蒼真先輩からどうにか引きはがせば、お前にもまだ勝機はあるっ!しかもお前は今日〈最高院〉と出会った!!…俺のとこの作戦は駄目だったけど、結果オーライ!大手柄じゃん?」
「…そう、かあ?」
「〈最高院〉がどんなやつなのかは明日聞くとして、まぁとにかく大手柄。大手柄だよ。お前頑張った、うん。よく泣かなかった。」
「…慰め方雑だな、お前。」
「ほっとけ。」
「志摩、そろそろ放せ。」
「お、癒されたか?恥ずかしかったか?恥ずかしくなったか?」
「…ったく。」
ぽつぽつと
二つの傘はT字路に差し掛かります。
「んじゃ友崎、また。」
「ん。…そういや志麻」
「なんだー?」
………今後は休みの日もああいう服を着たらどうだ?
いやいや。
「なんでもねー。」
「おう。」
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