これ以上登場人物を増やしてはいけない

「黄瀬医薬グループ、最高院財閥に吸収合併、だとさ。」

そう男子生徒は言いました。

「あ~…?黄瀬?このクソ眠いときになんで彼奴の話…」

隣の席の女子(?)生徒はだるそうに答えました。


「前会った黄瀬って女子について、オレなりに調べてみたんだよ。最高院のこと『お兄様』っつってただろ?案外、恋愛会議での攻略の鍵になるかもしれないしな。その結果、”最高院”とはそういう流れで付き合いが出来たと分かったんだよ。…まさかあの若さで3つも会社回してるとは、とんでもない女子と喧嘩してるな、お前。」


「あー…さいで。」


「…お前があのヤバい女子とどういう関係かは知らないけど、改めて「最高院と周りの女子たちとでくっつけ大作戦」を成功させるために、ちったあ我慢してくれよ、志摩。」

友崎は口調は軽いですが、内心は真剣そのもの。

NT…いえ、BSSぼくがさきにすきだったのにをリアルに体験してしまった彼としては、とっととこの最高院モテモテ学校生活にピリオドを打ち、改めて蒼真先輩とお近づきになりたいのです。

「…肝心の女子ズがずっと最高院のこと褒めてばっかなだけで、攻略の糸口もろくにつかめねぇけどな。」

志摩もめんどくさそうにつぶやきます。


「…なぁ志摩。」

「あんだよ。」


「会ってみないか?最高院に。」

今更ながら二人は、得体のしれないあの発光体と、もう一度会ってみることにしたのでした。



お昼休み。

菓子パンとカロリーバーでぱっぱと飯を済ませた二人は、”最高院だいすきトーク”を繰り広げる女子二人を放置し、最高院を探すことにしました。

目指すは女子の黄色い悲鳴。いざというときビームが出てきても大丈夫なように、サングラスもしっかり装着しております。

サングラスをつけて廊下を走り回る男女二人は、どうみても異様でした。

しかし片方が”変人の志摩”だと分かると、みんなすぐにどうでもよくなりました。


学生食堂で黄色い悲鳴。

ダッシュで駆け込めばそこには調理担当の人から下級生まで幅広く倒れております。

「何かあったんですか!?」


一人の女子生徒が、うなるようにその問いに答えます。

「ゔぅううううう…うどんを食べる最高院様…お美しい…。」


うどんを食べる男子生徒は、そこにはもうおりませんでしたが。



校庭で黄色い悲鳴。


階段をすべるように二人は駆け抜けます。(階段を段飛ばしで跳んだり雨の日に走ったりするのは非常に危険なのでやめましょう。)


花壇のそばのベンチで弁当なりパンなり食べていたり談笑していたであろう生徒たちは軒並み倒れ伏しておりました。


「どうしたんすか!?」


「…あっ変人の人…」

「しばき倒すぞ。」

気を取り直したように、倒れた生徒の一人はかぼそい声でこう言うのでした。

「……弁当と戯れながらお花を食べる最高院さん…最高…♡」

ボケなのか本当にあったのか分かりませんが、とにかくそんな男子生徒はいませんでした。



またまたどこからか黄色い悲鳴。

「きゃーっ!!卵焼きを食べるサイコー君バカかっこいいよー!!!」

…知ってる声でした。



「…志摩……俺に構わず……先に行け……!」

「…いや無理だわ。飯食って走り回るとか腹痛すぎるわ。ジュースでも飲もうぜ。」

「……コーラで頼む…!」

一時休憩。


「会えねえな。」

「そうだなー。」

志摩はコーラを投げ渡す。


「俺ら避けられてね?」

「オレもそう思ってたとこだ。」

友崎はあふれ出る泡に少し慌てた。


「…そもそも会う必要あるか?マジにめんどくさくなってきた。」

「相手がどんな奴かちゃんと見極めないと、攻略の糸口もつかめないだろ?でなきゃ他の女子とくっつけるってこともできない。現状”最高院”の、を、オレらは何一つ持ってないんだぞ?」

「まぁそうだけどなぁ~…。」

二人ともつかれた社会人みたいにベンチに背中を預け、天を仰いだ。


「お前はいいのかよ、志摩。」

「何が。」

「…茜崎がとられても。」

「…昔の話だろ。俺はもういいよ、そのことは。」

「そうか。」



「聞いちゃったよ~?聞いちゃったよ~?」

するりと通るその声と共に。

二人の目の前に女子3人組が躍り出る。


「「お前は!!」」


女子三人組は謎のポージングを決めた。

「夏美!」向かって右の女子がそう言った。

「双葉っす!」左の女子もそれに続いた。

「「そして我らが…!」」


「「不二華ちゃーん!」」

「ぎゃーん。」

真ん中の女子が、きゃるーん☆と音が鳴りそうな効果音とともにポージング。

教室の中のカラフル頭ほどではありませんが、十分に目立つ見た目の女子生徒が、そこにおりました。


「…誰ですか。」

もちろん友崎はよく分かりません。こんなバチバチキラキラしたメイクとアクセサリーだらけのギャルギャルしい女子は…いやクラスにいたようないなかったような?

と。

「あ~…。」

「ありゃりゃ志摩ちゃんや、もーしやもしや、あーしらの事話してない?」

しかし、志摩とは面識があるようでございました。

他に友達はいなかったはずでは。

そんな友崎の想いもつゆ知らずにじりよるギャル…不二華に対し、志摩はにじり去ろうとしますが、お供の娘っ子二人がしっかり羽交い絞め。

逃れるすべはありません。

「まぁいっか。さぁその体にしっかりと聞いて差し上げよ~。ぐへへのへだよ。」

わきわきと手を動かす不二華。

「吐くっス!”最高院…以下略計画”とは何かを!」

「吐いてね!このちょっと渋めなオトコノコとの関係を!」


「やだぁ…友崎…助けて……。」

志摩は涙目で助けを求めます。

思い返すはあの日。金髪に襲われて守れなかった日。


友崎は咄嗟に助けに入ろうとして、


涙目で羽交い絞めにされる志摩を見て。


ふと立ち止まり。


「志摩。」


「…。」


「今のお前、ちょっとエロいぞ」

「お前は殴る。」



こいつらはであると、判断するのでした。


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