それとこれとは別
「だよねだよねぇ!あの時のサイコーくんバカかっこよかったよねー!!!」
「ふふ、そうですね。こうしてあなたと言う同好の士にも出会うことが出来て、あの人は私たちみんなを幸せにするために生まれてきたような気さえします。」
「だよねー!もう毎日バカアルティメット幸せーーー!!!」
いつもの恋愛会議。
当然の如く茜崎が蒼真先輩を連れてきた時、友崎と志摩は瞬時に死を覚悟していました。
同じ男を愛する女子二人。そしてその両者の恋愛相談を引き受けたバカ二人。
修羅場&”お前どっちの味方だよ”地獄の始まり。
・・・そのはずでした。
茜崎は吠えた。
「あなたはサイコーくんと結婚したい!!」
「そうですけれど…サイコー君…?」
茜崎は叫んだ。
「アタシはサイコー君が大好き!!」
「そうなんですか。」
茜崎は満面の笑みで言った。
「なんの違いもないね!!」
「えっと…そうですね?」
蒼真先輩は困惑している!
「じゃあアタシたちは友達!!」
「とも・・・・・・・・・・だち・・・・・・?」
衝撃の言葉。
蒼真に走馬灯走る。
『そーまちゃん、わたしたちとあそんでてもつまんない?』
『蒼真ちゃん。学校でお友達は出来た?そう・・・まぁ、焦らなくても大丈夫よ。』
『二人一組になってー…蒼真。頑張って壁相手にやろうとする気合はいいけどな?ほら、先生と組もう。』
蒼真先輩の頬に一筋の水の跡が作られた。
「同じものでも同じ人でも、大好き同士ならそれはもう友達だよ!」
茜崎はポメラニアンを思わせる明るさでそう鳴いた。
「ごめんなさい…」
「えーっ!いやだったー!?」
「いえ……嬉しくて……少し、泣きますね………。」
「えっ…えーっ!?どうしよー!シスター!?ブラザー!?」
一連の流れを傍観していた志摩と友崎。
でもどうしようもありません。だってはたから見てても意味わかんなかったので。
数分間茜崎とあたふたしたのち、今に至る。
「いやー。蒼真先輩って堅そうで完璧主義っぽい人だと思ってたけど、存外おもしろ女だったんだなー。」
「…そうだな。オレもずっとそう思ってた。」
「…友崎?」
昼の終わりを告げる音。
どこか明るく、どこか寂しいそんな音。
まぁ機械音に感情なんてないので、聞いた人によりけりですが。
「志摩、今日は…」
「ゼブラちゃーーーん!久しぶりの再会だ!お喋りをしよう!べたべたしよう!そうしよう!担任じゃなかったのが非常に残念だからねぇさぁお姉ちゃんと行こうねェ!!」
あんな大見得切っておいて、美鳥は担任ではありませんでした。
黒板の文字と自己紹介の大見得の調べに対し美鳥容疑者は『一度やってみたかった』と容疑を認めており─────
「ぐぇ…わりぃ友崎、今日は無理っぽい……。」
「はいよ。じゃーまた明日。」
またあ───まで言ったあたりで、美鳥は志摩を抱え廊下をダッシュ。笑い声と叫び声が遠く遠くへと運ばれて行きました。
「友崎ー!暇なら俺らとカラオケ行かねー?」
「おぉ、そうだな。」
相談室。
美鳥と志摩。先生と生徒。いとこといとこ。机を挟んで二人きり。
…しかし、そこに温かな空気ではありませんでした。
「…ゼブラちゃん。」
「…。」
「弟君たちとは──」
「会っていません。…会えるわけねぇのは、美鳥姉だって知ってるだろ。」
「…この前会った時、弟君はだいぶ後悔しているようだったよ。『小さい頃だったとはいえ、あんなことを言ってしまって申し訳ない』って。…なんならこっそり謝罪の言葉を録音しておいたんだが、聞いてみるかい?」
美鳥は少しふざけたノリでやや古いテープレコーダーを机に置くが、志摩は突き返す。
「反省してるとか謝罪するとか許すとか、そういう事じゃねえんだよ…。」
「…。」
「今でも夢に見るときがあるんだ。朝起きたら俺が女になっていて、それから何も分からないうちに家族がどんどんぐちゃぐちゃになっていって、なのに俺は何もできなくて、それで……その時アイツは───!」
呼吸が乱れる。
汗が冷たい
視界が回る。
泥が脳をめぐるような感覚。
…。
…。
…。
「大丈夫…大丈夫だから落ち着いて、わたしもついてるから…ほら深呼吸…。」
「フー…ふぅ……。」
「…やっぱり、会うのは難しそうかい?」
「えぇ…まぁ、大丈夫です。ここまでだって一応一人で生きてこられましたし。……今日はもう帰りますね。」
志摩は荷物をまとめ立ち上がる。
そこに美鳥はすかさず飛びつく。
「うりゃ!」
「ぎゃっ。」
「お喋りタイムが終わったから、次はふれあいタイムだよゼブラちゃん!全身くまなくわしゃってあげようじゃないか!」
「ぎゃーっ!?なんすか急に!?勘弁してくださいよ!!」
「ふっふっふ、この温もりを刻み込むまでは放さないさ!」
「ったくもー…。」
「……一人で生きるなんて寂しいこと言わないでくれないかい?君がいなくなったら、わたしも悲しいよ?」
「…。」
「それ、何人に言ってるんだよ?」
「はっはっは。今はゼブラちゃん一人にさ。」
/
「いーま!イェイ!伝説がっヒュぅ!まくーをあーけーるーっ!!」
「オラ!オラ!ヘイヘイヘイヘイ!!」
「いやーあれ80点ぐらいだな。」
「んだとー!俺様の美声に酔いねぇタコ食いねぇ!だいたい95ぐらいで」
〈79点 楽しんでいるのが伝わってきます!でも力が入りすぎていますね。〉
「だっはー!80も届いてねぇー!お前も歌えや友崎!」
「おう、そうだな。」
「…んーだよ~テンション低いじょ友ッチ~?あれか?最近可愛い女の子に囲まれて浮かれてんのか~?オラオラおじさんに教えやがれ!」
「茜崎にー、最近は蒼真先輩だろ?おまけにあの…今日のしましま頭。」
「あーららそんなにおモテになって!そんな風に育てた覚えはありませんわよ!
…つーかしましまだった奴って結構よく一緒にいるっぽいけど、まさかお前ら…実はもういくとこまでいっちゃってる系!?」
「ダニィ!?貴様まさかもう卒業していたというのか!!…こほん。一番、長峰。歌います。け~っこんおめで~とう~!そつぎょうおめで~とう~!しょやでやるのは~」
「下手くそ。0点。地底に埋まれ。」
「…志摩とは、そういうんじゃねぇよ。」
「あらら、しましまちゃんふられちったねぇ。…まーあの子、男なのか女なのか分からん性格してるっつうか、関わりづらいのはあるよなー。」
「それあるわ。俺らにも最初の頃話しかけてきて?一応ある程度関わりはしたけど、やっぱ女相手じゃ話せないやつはあるし?シモとかエロとかスケベとかな!だからとりあえずよく分からん。」
「…そうなのか?」
「まー友ッチの本命なんて最初から分かってたんだけどなっ!才色兼備の蒼真先輩っ!」
「おまっ!?どこでそれを…」
しまったと友崎は口をつぐみますが、もはや手遅れ。
「くっくっく、俺ッチの観察眼と聞き込み力をなめちゃいかんぜぇ…?」
「じっくりたっぷりねっとり教えてくれやぐへへのへ…!」
「友崎、今夜は、寝かさないZE☆」
放課後はまだ、長い。
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