15. アタックホースを探して
移動と野営を繰り返し、いよいよアタックホースがいるとされる湖に向けて向かう森までたどり着いた。
周囲にほかの旅人の気配はなし、潜り込むには絶好の機会だろう。
さて、行くとするか。
「アイオライトさん、本当にこんな森の先に馬型のモンスターがいるんですか?」
「ボクはそう聞いてきた。いなかったらいなかったで諦めよう」
「そういうものですか……」
「馬型のモンスターは定期的に移動を繰り返すからね。季節で同じ場所をぐるぐる巡る群れもいれば、まったく別の場所を移動し続ける群れもいる。どちらにせよ、目撃情報があるならそちらに向かうしかない」
「わかりました。それにしても、森の中って歩きにくいですよね」
「せり出した木の根や枝に気を付けろ。足を取られて転ぶぞ」
「はい」
森の中に入ったあとはラズもしっかりと付いてきている。
街道を歩く速さは足りていなかったが、森の中を歩くのはわりとなれているようだ。
地面の凹凸や枯れ枝なども避けて歩いているあたりは望ましい。
まったくなにもできないわけでもないみたいだな。
指定された通り森を進み、森を抜けたところを更に東に進むと湖があった。
ここがテイマーギルドで話を聞いた湖だろう。
ただ、アタックホースの姿はない。
ここからが本番だな。
「ここが目的地ですか?」
「目的地はここだが、アタックホースはいなかった。よってアタックホースの群れを探す必要がある」
「探すって……そんなに簡単なんですか?」
「簡単じゃないさ。でも、ボクならできる」
アレクから降りて湖畔を調べてみる。
すると、想像通り蹄のあとが見つかった。
痕跡はかなり多い。
おそらく大きな群れなんだろう。
蹄のあとは湖の北へと向かっているようだ。
次に目指す方角はあちらだな。
「よし、アタックホースが向かったであろう方角がわかった。そちらに向けて進むぞ」
「ここで野営するんじゃないんですか?」
「今日の野営はもう少し後だ。さあ、出発するぞ」
ボクはアレクに乗らず、足跡がある方に向けて慎重に歩んでいく。
途中に踏み潰された草が見つかり、ボクの見立てが間違っていないことがわかった。
それにこの痕跡からすると、まだここを通って間もないようだ。
あの湖に群れが生息しているという情報は正しいみたいだな。
踏み潰された草をたどりながらぐんぐん北上し、たどり着いたのは小さな林。
足跡はこの中に向かって進んでいる。
もう少し追跡を続けたいところだが、日もだいぶ傾いてきたし今日はここまでだな。
また明日追いかけるとしよう。
「ラズ、今日はここで野営だ」
「わかりました。たき火用の枯れ枝を集めてきますね」
「いや、その必要はない。今日は備蓄の薪だけですごそう」
「え? いいんですか?」
「この林の中にアタックホースの群れが生息している可能性もある。不用意に林に足を踏み入れ、逃げ出されても厄介だ」
「そうなんですね。では、少し戻ったところで野営でしょうか」
「そうなる。ラズもある程度わかってきたようで偉いぞ」
ラズの言う通り、林から少し離れた場所でこの日は一日を終えた。
翌日、あいにくの小雨模様だったが、この程度ならば雨具を付けていることで体が冷えることを防げるだろう。
ラズにも雨具のマントを装備させ、野営地を片付け出発する。
今日は昨日たどり着いた林からだ。
林に入ると思ったよりも木の密度が濃い。
これならば姿を隠すにはうってつけだろう。
ボクたちの接近を悟られていたかな?
「ふむ。ランプ、ロイン、オファール。周囲を探ってきてくれ」
「メェー」
ボクはランプたちに命じて周囲の探索を開始する。
自分でも周囲に痕跡がないか調べ、草をかじり取ったあとを見つけた。
どうやらこの林で当たりのようだ。
「メー!」
「メー! メー!」
ランプたちの怒号が鳴り響くと、それに追い立てられるように地面を走る蹄の音が聞こえてきた。
どうやらランプたちがアタックホースの群れを発見してくれたようだ。
こうなれば林の外に戻り待っているだけでアタックホースの群れと会うことができるだろう。
ボクはラズとアレクを連れて林を脱出することにする。
「メェー」
林を出ると、既にオファールがボクたちを待っていた。
アタックホースの群れも一緒だ。
残りのアタックホースたちもランプとロインに追いかけられてもうすぐここに集まるみたいだね。
さて、ここからはボクの出番、モンスターとの交渉だ。
アタックホースとの交渉は初めてだからどの程度を見越せばいいだろう。
少々不安もあるが楽しみでもあるな。
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