第2話 オヤジ………⁉︎
爆発の瞬間、俺は死を覚悟し、これまで人生が走馬灯のように脳内に流れ込んでいくのを自覚した。
だが、俺が予想した悲惨な結末にはならなかった。
爆発はしたが、立っても身体何吹っ飛ばない。上がる灰色の煙の中、うっすらと開いた目。そこから目の前に誰かがいることが確認できた。
その後ろ姿……俺がよく知っている父親にそっくりだ。
「無事か悠斗。まったく怪しいやつには関わるなと教えたはずだが?」
その声、間違いない。
「オヤジ………⁉︎」
奇妙な白い装束を着た、オヤジが振り返る。
オヤジはニヤッと笑った。
「なんだよ。その姿。サラリーマンじゃなかったのかよ」
何をしているかは聞いたことがなかったが、確かにオヤジが毎朝スーツで出社して行く様子を見てきた。
「まぁそれは後だ。まずは…」
そう言ってオヤジは一歩ずつ前に歩いて行く。
「こいつらから、その女の子を取り戻す」
「
「ここは私がやるドスえ〜
太っている方の男が、細い方の男と同じように謎の力を解放する。
「マイクロ、いったん女あずけるべ〜」
そう言って背負っていた気絶している女子高生をマイクロと呼ばれた細い方の男に渡した。
「お前の敵では無いだろ。ネグロール」
太っている方はネグロールという名のようだ。
「まさか、お前らレベルでクリスタルを奪うため、ここまで全力とは驚いたよ。だが、
オヤジはそう言うと、タンっと音を立てて空中に飛び上がる。4から5メートルの高さは出ているだろう。
「
オヤジの姿が輝く。
瞬間的に蒼き薔薇が周囲一面に咲き誇った。それが駅のホームにいる二人に向かって落ちて行く。
「なんじゃこりゃ……なんてドスねー。美味しく吸収ドスえ〜」
ネグロールは両手をオヤジに向ける。
ズズズ…
蒼き薔薇は全てネグロールに手に収まってしまう。
「!!」
−はっきりと思い起こされる今朝の記憶。
「オヤジ、俺は春休みだぞ。いったいなんの仕事やってんだ?」
桜木家でオヤジは、俺が学校に行く前に外に出ていく。
今日も髪ボサボサで、寝ぼけながら歯磨きしていたら、オヤジがすでに玄関でスーツに身を包み靴紐を結んでいた。
「みんなを陰から守る仕事だ。だから悠斗は安心して学校に行けよ」
「…?」
今でも思う。この時まで、俺はあんたのことがよく分からなかった。幼い頃から俺は学校が休みの日もお母さんと二人っきりでご飯を食べていた。「お父さんは?」と聞いてみるものの、決まってまだ仕事だと言っていた。
俺たちのことはほっといて仕事かよ。幼いながらも、そんなことをモヤモヤと心の中で考えていた。
-だけど…今この瞬間に確信したよ。
マイクロ、ネグロール。
こんな化け物相手に、一般市民のことを守っていたんだ。
「オヤジー!! 負けるなよ!」
なんらかの力を吸い取られている最中のオヤジに向かって、俺は精一杯の応援を送る。
その戦場に聞こえてきた声に応えようとオヤジは全身に力を入れる。
さらなる力の解放の準備をし始めた。
それらの様子を見たネグロールは不敵な笑みを浮かべる。
「悲しいドスな〜。オヤジとの絆もここで終わりドスえ〜」
ネグロールの吸収の力がさらに強くなっていき、それはオヤジの準備していたであろう謎の力さえも取り上げていった。
「クソ…ダメか」
「ああ、お前じゃ俺たちには勝てない」
「⁉︎」
オヤジは後ろを振り向いたが遅かった。背中から刀が貫通している。マイクロに背後を取られて刺されたのだ。
「カ……ァッ………!」
オヤジは全身の内部から衝撃波を感じた。
マイクロの
あらゆるものを爆発物に変えて、コントロール下における。オヤジを刺した剣に『爆発』の異能をのせていた。内部から破壊された身体は修復不能。
ネグロールとマイクロの連携技が炸裂した。
「オヤジ〜〜!!」
俺にはオヤジの顔から生気が無くなっていくのをはっきりと感じられた。
フラッシュバックするオヤジとの日々。
朝早くから夜中まで毎日どこかに行っていた理由。それは一般市民を危険人物から守るための死と隣り合わせの仕事があるからだったのだ。
「ふん、たわいもない」
マイクロは地面に落ちて動かないオヤジに捨て台詞を吐いた。
正義が負けて悪が勝つ。
小さな頃からヒーローものアニメを見ていた俺にとって信じられない結末だった。
今やオヤジは亡きがらとなって横たわっている。それを見ると絶望と怒りが同時に襲ってきた。
「悠……斗…お前に…この力を託す……!」
俺の目の前で地に伏せていたオヤジが残っていたわずかな力で起き上がる。最後の力を振り絞って向きを変えて俺に向かって片手をかざす。
その瞬間、何かが俺に移った。
それは身体の底から溢れ、エネルギーとなり、『異能』を覚醒させた。
「ウオオオオオオオオオォ、
衝撃波が鳴動し、周囲のモノを上吹き飛ばす。事態を予測したネグロールとマイクロは先に、違和感を感じて駅のホームの奥にまで避難しに飛び上がっていた。
「逃すか!」
背を向けた敵に向かって俺は叫んだ。
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