第6話

【雛視点】



 夕食を食べ終わった後――


「うふふ。裕一君。先にお風呂入っちゃってちょうだい」


 お兄様が、お母様にいわれるがままお風呂へと向かったので。

 私は、約束を守るためにお風呂へと向かう事にしたのです。

 するとお兄様は脱衣所で服を脱いでいるところでした。


「雛⁉ どうしたんだ⁉」


 驚いているお兄様に、私は昨晩の事を話します。


「お兄様は、おっしゃいました。『風呂に入ったら俺の身体を洗え』って」

「あ、や、それは、夢の中の話だよな⁉」

「雛にとっては現実と同じなのです! ですから約束通り今日からお兄様の身体は雛が洗って差し上げるのです!」


 そう言って、勢いよく服を脱ぎだすと制止されました。


「ま、まってくれ雛! いくらなんでも結婚もしてないのに一緒に風呂はまずい!」

「大丈夫なのです! お母様が言ってました! 恋人同士なら何も問題はないって!」

「まさか、雅さんに確認したのかい?」

「はいなのです。夢の事は一切、隠したりせず全部自慢したのです」


 なぜかお兄様は顔を青ざめていて、少しですが震えているようにも見えます。


「じゃ、じゃぁ、俺達が最後までしちゃった事も話しちゃったってこと?」

「当然なのです!」

「そ、そうなんだ、あはははははは。全て知っていてあの態度だったんだ」


 なにやらお兄様は落ち込んでいるご様子。

 ここは、元気づけてあげなくてはならないのです!


「大丈夫なのです! お兄様にその気があるなら雛はいつでも受け入れる準備も出来てますから! それにお母様の許可なら取ってありますから、何も問題ないのです!」

「それってつまり……」

「はい! お兄様さえよろしければ今夜から夢ではなく現実でもエッチな事させてあげるのです!」

「あ、いや、その、気持ちだけ! 気持ちだけもらっておくよ!」

「では、エッチな事は、夢の中だけで良いって事なのです?」

「あ、いや、その、夢の中でもかんべんしてくれ」

「ほぇ? でも、お兄様言いました。『これから毎日可愛がってやるから覚悟しておけよ』って」

「うわ~! 俺って最低だ、俺って最低だ……」


 なぜかお兄様は頭を抱えてうずくまってしまわれました。

 どうしてなのでしょう?

 現実と違い、夢の中ではその人の本性がでるのです。

 つまり、お兄様はとても強く私を求めていらしているはずなのです。

 それなのに、どうしてこんなにも怯えていらっしゃるのでしょうか?

 そんな時は、お母様の言葉に従うのが吉。


『男を立たせるのも女のつとめですよ!』


 つまり、今――私は、試されているということなのでしょう。


「お兄様。ばんざいしてください。雛が脱ぐの手伝ってあげますから」

「な、なぁ。雛。本当に俺なんかでいいのか?」

「何を言ってるのです? 雛は既にお兄様の所有物ですよ。ですから何をされても怒りませんし、どんなことでも受け入れるだけなのです」

「あはははははは、わかったよ。雛が覚悟決めてるってのに俺ばっかりが逃げてるなんて格好悪いもんな」


 そう言ってお兄様は立ち上がりました。

 成功なのです。

 お母様!

 あなたの娘はやり遂げましたよ!

 後は、お風呂に入って、お兄様のお身体を洗ってさしあげるだけなのです!

 お兄様が脱いだ服を洗濯機の中に入れていくので、それに私も習います。

 少しばかりパンツを脱ぐのだけは、とまどっているようでしたが。

 私が先に全てを脱ぎさると、ため息を一つこぼしてから。

 お兄様も産まれたままの姿になったのです。

 そして、二人仲良くお風呂場へ。

 覚悟を決めたらしいお兄様はとても立派でした。

 先ずは、頭を洗い。

 それから身体の隅々まで洗わせてくれました。

 途中、デリケートな部分に対してだけ少し抵抗をされましたが。

 お母様に教わった通り、優しく手洗いして差し上げたところたいへん喜んで下さったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る