第5話

【裕一視点】


 大学について早々――


 席に着いた俺は、ため息をこぼしていた。

 そんな俺を見て近づいて来たのが和也かずやだった。

 高校までは、サッカーに打ち込んでいて彼女なんて欲しいとも思わなかったそうなのだが。

 大学デビューして活躍の場をフィールドからベットの上に変えた凄いヤツである。

 短めの茶髪にピアスと言ったチャラ男系なのだが、その軽さが良いらしく女受けは良い。

 素直に羨ましいと思う。


「よっ! 裕一! お前に吉報持ってきてやったぜ!」


 昨日までの俺なら間違いなく喜んで話に乗ったところなのだが……

 とてもじゃないが、こいつのテンションに付き合える自信がない。


「はぁ……。まぁ期待しないで話だけは聞いてやるよ」

「そうかぁ! 実はさぁ昨日もハットトリック決めてさ! その中の一人にお前みたいな童貞が大好物だって言うお姉さんが居たんだよ!」


 ちなみに、この場合のハットトリックと言うのは、一日に三人以上口説き落としたって事になる。

 って、ゆーか、昨日までの俺だったらマジで喜んで食いつくネタじゃねぇか!

 だが、今の俺には婚約者がいる。

 とてもじゃないが浮気なんて出来ないし……

 雅さんの信頼を裏切るような事はしたくなかった。


「そうか、正直おしいとは思うが断っておいてくれ」

「は? お前、マジなに言ってんの? まさか童貞こじらせて頭おかしくなったか?」

「いや、婚約したんだよ」

「ま、まじで?」

「あぁ、マジもおおマジ。しかも相手は、まだ子供だ……」

「は? お前、ロリコンじゃなくてお姉さん系だったよな?」

「あぁ、今でも年上のお姉さんが好みだ」

「だったら、婚約なんて破棄して俺と一緒に楽しもうぜ⁉」

「それが出来るならそうしている」

「ふ~ん。つまりそれができねぇ弱みか何かを握られてるって話か?」

「察しが良くて助かるよ」

「まっ。今日まで守ってきた童貞だ。相手が大人になるまで待ってやるのも一興かもな」


 そう言い残して和也は去って行った。

 はぁ~。

 雛との婚約がなければ童貞卒業出来てたのになぁ……

 残念だ。

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