第2話

【裕一視点】


 とんでもなくリアルな夢を見た。

 見ず知らずの、女の子と――

 とんでもなくエッチな事をする夢だ。


『いいのです! お兄様の気が済むまで! 存分にしてくださいなのです!』


 何度となくそう言った彼女は外国人とのハーフらしく。

 その少女の髪は煌びやかな金色で。

 お母さん譲りの瞳は、綺麗なエメラルドグリーン。

 まだまだ子供だからだろう、おっぱいも膨らみかけで、ほぼぺったんこに近かった。

 そんな相手だと言うのに俺は、欲望のおもむくまま何度も何度も。

 その少女を求めてしまっていた。

 お互いに初めてだったと言うのに――

 痛いのを我慢してくれてるだけだって分かっていたのに――

 俺の欲望は、とどまるということを知らず。


「あぁぁ。俺は、なんて夢を見てるんだ!」


 そう言って、身体を起こして頭を抱えようとした瞬間!

 左腕にとんでもない違和感を感じそちらに目をやると……


「なっ――⁉」


 なぜか夢で見た少女と同じ顔をした娘が俺の左側で小さな寝息をたてていた。


「いやいやいやいや、いや、まてって!」

「ふわぁ……なにを待つのです?」


 まだ少し眠そうな。

 でも、綺麗なエメラルドグリーンが俺を見つめていた。

 肩にかかるくらいで切りそろえられた少し癖のある髪も瞳の色も夢と同じ。


 否――


 あれは、本当に夢だったのか?

 なぜなら俺は、会った事も見たこともないはずの。

 この、少女の名前を何度も呼びながら行為を楽しんでいた。

 まるで、昔から知っている人のように扱っていた。

 と言うか、ある程度の事なら知っている。

 自己紹介されていたからだ。


「名前は、住良木すめらぎ ひなで合ってる?」

「はいなのです」

「11歳だよね?」

「そうなのです」


 背中に冷たいものが突き刺さったみたいな悪寒を覚えた。


「もしかしなくても小学生だよね?」

「はいなのです」

「もしかして、俺キミに酷い事とかしちゃった?」

「ほぇ? 酷い事なんて何もされてないのです」

「そ、そうだよね。あはははははは」


 いくら彼女居ない歴が年齢と同じ俺だからといって童貞こじらせたあげく。

 こんな少女に手を出すなんてありえないもんな。


「ちょっとだけビックリしたですけど。その、とても貴重な体験をさせてもらっただけなのです」


 そう言って、白い頬を朱に染める少女。


「え……?」


 貴重な体験って……まさか……。


「もしかしてだけど、大人の恋人同士じゃないとしちゃいけないような事しちゃったりとか?」

「大人じゃなくても恋人同士ならしても良いってお母様が言ってたのです」


 再び、背筋に悪寒を感じた。

 だって、どう考えてもリアル過ぎる。

 と言うか、この状況が事後にしか思えない。

 だとすると俺は、とんでもない鬼畜野郎ってことになってしまう。


「えと、その、もしかしなくても身体の調子悪かったりする?」

「はぅ、ごめんなさいなのです。初めてだったので……」

「そ、そうですよねぇ~。あはははははは」


 って、笑い事じゃない!

 どうすんだよ!

 とてもじゃないけど言い逃れ出来る状況に思えねぇ!


「でもでも! 雛のこと、お嫁さんにしてくれるって言ってもらえて。雛は、とっても嬉しかったのです!」


 言った。

 確かに言った。


『いいかよく聞けよ! 俺の嫁になりたかったら、とりあえずパンツ脱いで足開け! 話は、それからだ!』


 そして、俺は何度となく欲望を注ぎながら話をしたのだ。

 ざっくり話すと俺の言うことは何でも聞け!

 我ながら酷い話である。

 まさに鬼畜の所業と言えよう。

 もう責任をとるしかないだろう。

 でなけりゃ警察沙汰になりかねない。

 つまり、将来結婚してあげるから昨晩の事は内緒にしてくれって頼むほか選択肢が思い浮かばないのだ。


「わかったよ。雛のことは、お嫁さんにする。だから、今回の事は、黙っててくれないか?」

「ほぇ? 二人だけの秘密ってことなのです?」

「そうだ、でなけりゃ俺が死ぬ……」


 もちろん社会的な意味で。


「でもでも、もうお母様も知ってるですよ?」


 そうだったー!


 やや背は低いものの。

 俺好みのスタイルをした母親と一緒に挨拶に来たんだった。

 相手の母親前にしてあのセリフを吐いた俺は間違いなくどうかしていたとしか思えん。


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