始まりの日
俺が死体の山に立っている夢を見だしたのは家族が殺された時からだ。服や身体は血に汚れ、切れており自分でも不思議だった。あまりにも、リアルで怖気付いた。そして、ただの夢だと言い聞かせ、その夢から目を背けた。けどそれが、夢じゃない現実だとわかったのは、その夢を見だしてから実に半年の時が過ぎていた。
俺は、絶対に家族を殺したあいつを許さない。許してたもるものか。
午前5時に目覚ましが鳴り響いた。
「……煩い」
その音がうるさく手荒に止めた。5日前から徹夜して睡魔に負けて机にへばりつくって寝ていた。今日もちゃんと布団で寝れなかったと後悔しながらまた、資料を読み出した。机の上にある沢山の本や資料を片付けながら。そして、何度目かの愚痴が漏れた。心の中で言ったはずの愚痴が口に出ていた。
「今日で、覚えろとか無理だろこれ」
「そうかい、無理かい」
首元に冷たいものが触れる。いつの間に、その人は背後にいた。不味い、聞かれてた、そう思い必死で謝り続けた。
「ごめんなさい、うそです。ですから、その刀を首に当てるのをやめてください。死にますよ洒落になりませんよ!!」
「大丈夫だよ、わしが殺すヘマなんてするか」
よけーと洒落にならねーよと、心で思いながら弁解をし続けた。この人は、国もが称える1人。俺の師匠だ。この師匠の家に俺は居候さしてもらいながら修行をしている。
「ほれ、もう飯だから早く支度しな」
「はい」
師匠はそう言って、キッチンへ向かった。良く嗅げば、朝ごはんのいい匂いがする。師匠の手伝いをして、手を合わせ食べ始めた。温かい味噌汁が体から温めてくれる。美味しい。心からそう思った。
「そういえば師匠」
「なんだ?」
「今日はどんな修行するんですか?」
「そうじゃなぁ、まぁ、あの本を覚えてもらうまで無理じゃな」
「え、冗談じゃなかったんですか!?」
「当たり前じゃ!ほれ、飯食ったらいつも通り基礎やって暗記じゃ」
「!!!!!」
穏やかでもない日常が今日も始まった。
そういえば、いつからだろうかこの国がEsser《イーサー》と言う怪物に襲われるようになったのは。俺が生まれた時はもう、いた存在だ。ふと、気になった。
「師匠」
「なんだい」
「今更、聞きますがEsserっていつから現れたんですか?」
「そうじゃなぁ、話すと長くなる。」
考えたあとため息をひとつついて、仕方ない今日は、Esserの歴史の話をしようか、と言ってくれた。僕は喜びのあまり、大声で「ありがとうございます!」と言った。喜んだのは、情報を得るため、俺にはその情報が必要だった。
急いで、ご飯をかけ込み食器を洗い師匠がいる部屋に向かった。長い長い廊下の奥に一部屋ぽつりとある。扉の前に立ち、静かに戸を叩く。中から返事が聞こえた。
「師匠、失礼します」
ドアの軋む音が俺を緊張させた。机に向かって本を開いてる師匠の後ろに座った。すると、こちらを向き座り直した。
「さぁ、どこから話そうか」
俺を見る瞳はどこか寂しげだった。
今は2×××年だから、ざっと、600年も前の話だ。昔はロボットやAIが沢山開発され、沢山役に立っていた。しかし、ある日1人の超能力者を名乗る人物が現れた。当時は珍しく、多くのマスコミに引っ張りだこだった。彼は、ものを作る能力に長けていた。水、火、人など、ありとあらゆるものを自分の手から作っていた。それは、よく見れば詐欺だとうたわれても仕方なかった。だから、彼は沢山の挑戦を受けた。本物だと分かれば次には気味が悪られそして、研究所送りになった。殴られ、切られ沢山の酷い実験を受け彼は死んだ。はずだった、だが、彼が死んでちょうど一ヶ月後に彼は姿を研究者達の前に現した。彼は元々居た研究所に、乗り込んできた。研究員は怖気付いて、緊急用の麻酔銃を打ったが効かなかった。そうだろう、彼は死んだ存在だ。彼は死ぬ間際に自分のドールを作っていたんだ。自分の憎い感情をひたすら入れてあるドールを作っていた。そして、起動は死んでからきっちり一ヶ月後だ。そして、彼は憎む人間を殺すため人を食す化け物を創った。それが、「Esser」だ。そして、その場に居た研究員はほぼ皆殺しされた。ある1人が警察に電話したお陰で、早い発見になり3人は重症だったが命を取り止めた。しかし、1人は自殺、もう1人は精神的に病を抱え隔離されていた。命があっても、目の前で殺されていく同期、先輩、後輩が目に焼き付いているんだ。耐えられなくなるのは当たり前だな。だが、ある1人は立ち上がったのだ。そいつは、彼の幼なじみだった。彼は、まず不死の研究をした。年日にして50年だろうか、不老不死の薬が出来たのだ。そして、彼はそれを飲み次に、幼なじみに対抗する事を考えた。昔の研究資料を参考にしながらそれから年日はどれくらい経っていたのかは分からないそうだ。ただ、ある日突然に彼と同じように能力が使える子供が5人現れた。彼は、即座に彼らに研究所に連れてくるよう頼んだ。初めは渋々だったけど、ことは一刻を争う事態だった。半年後にまた襲来するとEsserは予告しに来ていたと言う。研究所には1人、また1人と増えて皆が集まってくれた。前回のような過ちをしないよう、研究は進められて行った。そして、分かったのは11歳までに発症しやすく、発生言語は異なり、鎖骨あたりにスペードみたいな形の印がある。それだけでも十分だった。ただ、問題は酷にも国を守るにはその子供たちにお願いするしか無かったのだ。彼は子供たちにお願いした、「この国を救ってくれ」と。彼らは幼いのだ、まだそんなたいそれた事をできるはずがないのだ。だが、子供中で年長の男の子が承諾したのだ。それに続き、1人また1人と全員が承諾した。だがしかし、やるからには家族と別れないといけない。親には、正直に話した子もいれば、嘘をついて家を出てきた者もいる。次の日には、子供にしては大人びた顔をして彼の前に集まった。彼はせめてものお守りで、不老不死の薬を与えた。だが、ある1人は飲まなかった。その子は、「本当に死にそうになった時飲む」と言った。そして、彼らはEsserの襲撃に備えて修行をした。夜中、泣き出す子もいた、精神的に壊れる子もいた。それでも、彼や子供たちは立派にたくましく育った。2ヶ月とあまりにも短い月日で5人の戦士を作り上げたのだ。しかし、襲撃はあまりにも酷なものだった。多くの地域に襲撃が起こった。空間移動の子が何とか繋げてくれて、Esserを相手をしたがそれでも、被害は大きかった。彼は、幼なじみを説得しようとした。だが、出来なかった。次の襲撃は1年後、もっと強い俺の子供を送ると断言して消えた。その日からだろうか、あちらこちらで能力を持った人が増えたのは。そして、5人は散らばり、次の襲撃を迎え撃つために弟子を育てようと決めた。しかし、拠点はいるだからこの研究所を本部にしよう。と言って再会を約束してみんなバラバラになった。弟子を取り育て、襲撃に備えた。弟子なんて、なかなか集まるわけがなかった。だが、小さな女の子が1人の戦士の所に来たのだ。服はボロボロで、細く痩せこけていた。眼に光はなく、ただ、何かに対抗してるそんな目だった。彼女は、目の前で親をEsserに食われた被害者だったのだ。彼が、対抗していたのは復讐心だったのかもしれない。彼女を筆頭に、100人に近い弟子が各戦士の元に弟子入りをした。期間は色々だったけど、戦う戦力を作れた。そう、皆自負していた。だけど、弟子の大半は死んだ。あまりにもむごい死に方をした。首を飛ばされ、手足をとられ、目を耳をえぐられ、死んでいった。だが、5人の戦士は国に称えられた。前回に加え今回の活躍で多くの弟子の犠牲の上で、代表として称えられた。そして、正式にEsserを撲滅する組織が建てられた。いやでも、これは建前であって戦士5人とその育て親は幼なじみの更生を最終目標にしていた。そして、その超能力を皆で「チート」と呼ぶようになった。現在では、戦闘員を養成する学校もある。
その話はあまりにも悲しく、あまりにも残虐だった。Esserの親は組織のトップの幼なじみ。そして、国もが称える5人の戦士そうか、目の前にいるこの人は国を救い、弟子を育てようとしてるのか。そして、決して死ねない存在。この何百年の間にどれだけの屍と血と涙と助けを求める声を聞いたのだろうか。俺にははかりしれない。
「師匠は、その5人の1人なんですね」
「あぁ、そうだよ」
「そうですか」
「お前が、この家に来た時わしはもう、何十年も弟子をとらんかった。とるつもりもなかった。だが、最後にお前にかけようと思った。お前なら皆の、弟子の仇をとってくれると思った。だから、弟子をとった。今からでも辞められる。わしがお前を利用してるのだけなのだからな」
たしかにそうだ、だが、利用されようと俺は家族の仇もある。強くならないといけない。Esserを殺さないといけない。
「俺は辞めませんよ。家族の分もありますから。ついでに師匠に教えてもらってる恩もあるのでその、先輩方の仇も取りますよ」
俺にはこれが最善だ。これが最も有効な手段なのだ。今はとりあえず、戦闘高等学校入学試験に合格しないといけないのだ。
「お前もものを言うようになったの」
その眼差しは輝いていてそして、悲しでもいた。傷だらけの大きな手が俺の頭を撫でた。もう一度ここに誓おう、
「俺は死にませんよ、師匠」
そう笑って見せた。
「なら、修行だ。高等学校行くんだろ、あの本暗記しな。はなしはそれからだ!」
やっぱり、師匠は鬼です。でも、誰よりも頼れる存在です。
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