これからも、ずっと

 初めまして。

 私、伝説の木をやっている木下と申します。

 伝説と言いながらも、実はタダの木ですけどね。

 木下と言う名前も勝手に呼ばれているだけで、名乗っているわけではありません、念のため。


 それで何が伝説かと言いますと、『伝説の木の下で告白すると必ず成功する』と言うベタなモノ。

 いい機会なのではっきり言いますね。

 ガセです。


 私がこの地に生を受けて以来、数えきれないほど多くの告白の現場を見てきました。

 ですが、結構な割合で断られています。

 泣いて帰っていく人を見るのも一度や二度ではありません。


 だから、事実無根の根拠のない噂なんです――とも言い切れなかったりします。

 コレ、植物仲間に聞いたのですが、普通に告白するより私の下で告白する方が成功する確率が高いんだそうです。

 どういう事なんでしょうか。

 私にそんな特別な力なんて無いのに……


 私はただ見ているだけです。

 私としても手伝ってあげたいのですが、私には光合成しかできません。

 残念なことです。


 それにしても、なぜ何もできない私が伝説扱いされているのでしょう?

 昔、有力な説を聞いたことがあります。

 もう枯れてしまったんですけど、当時一番長生きだった老木が言うには、『お前はなんかそれっぽいから』。

 つまり私の見た目だけで、伝説扱いされていると言うのです。


 失礼な話です。

 たしかに私は、同世代の木よりも大きく立派だと言う自負がありますが、それだけで決めると言うのは、失礼以外の何物でもありません。

 もっと中身を見て欲しいものです。


 とまあ、先ほどまで『伝説の木』扱いにいきどおっていた私ですが、最近では悪くないと思っているんです。

 実は私、告白の現場を見るのが好きなのです。

 あまり大きな声では言えないのですが、光合成飽きてきたんですよね……

 告白の現場をみるのはいい暇つぶしになるんですよ。

 ただ最近は告白の仕方が似たり寄ったりなので、少し食傷気味……

 もっと奇抜に告白してくれませんかね。


 おや、どうやらまた誰かがやって来たようです。

 あっ、何か言う前に振られた。

 からの、断った側が告白!?

 さらに三人目がやって来て告白!?

 最後は三人で付き合う!?


 カップルとは二人で成立するものでは?

 コレは初めて見るパターンです

 どういうことなんでしょうか?

 ですがこの考察で、三年は暇が潰せますね。


 とまあこんな感じで、これからも告白をしに誰かがやってくることでしょう。

 私が『伝説の木』と呼ばれる限り。

 これからも、ずっと。


 私はそれが楽しみでなりません

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