ハッピーエンド 2024/03/29

 今日僕は有名な占い師の元に来ていた。

 自分の運命の相手を占ってもらうためである。

 この占い師は、未来を確実に当てる美少女占い師との評判だ。

 『的中率100%』

 『マジで当たる』

 『占いが外れたら、それは未来のほうが間違っている』。

 とんでもない評価だ。

 有名なだけあって、いつ来ても長い行列があり、一時間待ちが普通と言う状況が続いていた。


 きっとこの占い師なら、僕の運命の相手を占ってくれるだろうと思っていた。

 とはいうものの、僕も男なので、どうしても『占いをしてもらう』ことに抵抗がある。

 なので占ってほしいと言う感情とは裏腹に、ずるずると行かない日が続いていた。


 ところがである。

 今週の初め、僕は『受験に専念するため、今週いっぱいで占い師を辞める』と聞いてしまったのだ。

 僕はその言葉を聞いた僕は、今を逃せば運命の相手に出会えないと思い、こうして占い師のもとにやってきたのだった。


 そして行列に並んでから耐える事、三時間。

 ついに僕の番が回ってきた。

「次の方、どうぞ」

「はい」

 僕は声に促されるまま、緊張しながら占い師の個室に入っていく。

 そこにはいかにも、占い師ルックの女性がいた。

 顔は隠されており美少女化は分からなうが、神秘来な雰囲気を醸し出して――


「はい、未来が見えました」

「え?もう!?」

 早い!

 まだ何も言ってないのに……


「時間がありませんからサクサク行きましょう」

 たしかに、僕の後ろにはまだ多くの人が並んでいた。

 だけど、こうも雑に扱われると、少々気分が悪い。

 だがあまりごねても、他の人に迷惑なので、ぐっと不満を飲み込むことにする。


「実は僕の運――」

「筋トレしなさい」

 『僕の運命の相手が知りたい』。

 そう言い切る前に、占い師が僕の言葉にかぶせてくる。

「どういう――」

「月曜日になったら、学校の図書室に行き、最初に目に入った筋トレ本の借りて、そこに書いてあるメニューを忠実にこなしなさい」

 占い師は僕の都合などお構いなしに言葉を紡ぐ。

「待って――」

「ああ、あと馬術部に入りなさい」

「何で――」

「そうすれば、あなたは運命の相手に出会える」

「!」

 最後の占い師の言葉に、僕はドキリとする。


「これがあなたの知りたいことですよね。鈴木さん。鈴木 雅之さん」

 全部お見通しらしい。

 さすが占い師。

 何も言ってないのに、名前や知りたいことを当てて見せた。

 矢継ぎ早に繰り出される占い師の言葉に若干引き気味であったが、この占い師は信頼できる

 実は半信半疑であった

 でも認識を改める。

 間違いなく本物だ。

「ありがとうございます」

「はい、がんばってください」


 そして僕は占い小屋を出て、さっきの事を考える。

『そうすれば、あなたは運命の相手に出会える』

 彼女の言葉が

 なにも分からないが、とりあえず筋トレを始めることにしよう。

 馬術部というのもよく分からないが、とりあえず従っておこう。

 運命の相手が馬術部にいるのかもしれない。

 まだなにも分からないが、未来に会うであろう運命の相手のため、筋トレをすることを誓うのだった。


 🔮 🔮 🔮


 私は佐々木さんの相手を終え、一息つく。

 かなり緊張したが、やるべきことはやったので一安心だ。

 私の『未来予知』で、筋トレと乗馬に励む佐々木さんを見る。

 どうやら信じてくれたようだ。

 これで一安心。

 あとは時が来るのを待つだけ。

 そして私は理想の彼氏をゲットするのだ。


 そう……

 さっきのやりとりは事は私が理想の彼氏を得るための、布石……

 佐々木さんは同じ学校のクラスメイト。

 顔と性格は私好みで学業優秀、将来有望ののハイスペック男子だ。

 ほとんど文句なしだが、唯一の欠点はひょろ過ぎる事。

 風が吹けば飛びそうなほど、ヒョロイのだ。


 さすがにこれはいかんと思い、あらゆる策略を張り巡らせた。

 ここに来るように仕向け、筋トレを行わせる。

 そして筋トレで鍛え抜かれた彼は、馬術部で飼われている白馬に乗って私を迎えに来る。

 もちろん、そう仕向ける。

 私の未来予知を使えば、造作もない。


 二人は結ばれた後、田舎の広い土地に庭付の小さな家を買うの。

 庭で遊ぶのは、私たちの子供。

 ああ、私たちのキューピットである白馬の住む場所も作らないとね。

 そして二人は結ばれ永遠に幸せに過ごす。

 なんて完璧な未来予想図。


 どんどん私の妄想が広がっていく。

 これが私の――いや、これが私たちハッピーエンドだ。

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