もっと知りたい 2024/03/12

「もっと知りたくはないか?世界の真理を!」

「別に」

「!」

 青年の言葉に男は驚愕の表情を浮かべる。


「馬鹿な。世界の真理だぞ」

「それがどうした?」

 男は激高するも、青年は涼しい顔で答える。


「真理を知ればこれから起こることが全て分かる。悲劇も回避できるし、すでに起こった出来事を変えることも――」

「興味ないね」

 青年は男の発する言葉に興味を示さず、持っていた剣を構える。

 青年は男を殺す気であった。


「言っても分からんか……」

「言いたいことはそれだけか?」

「見込みがあると思ったのだがな」

 男は懐に忍ばせた銃を取り出した。


 だが青年はそのことにも動じず、逆にニヤリと笑う。

「その代わりに俺の知っている真理を教えてやろう。タダでだ!」

「断る。タダより高いものはない」

「フ……」


 そして両者の視線は交差し、この場に静寂が訪れる。

 緊張感が極限にまで高まり、青年が足を踏み出そうとした、まさにその時――


「やめだ」

 男は殺気を収め、持っていた銃を再び懐へ納める。

 さすがの青年も、この男の行動に動揺を隠せなかった。


「どうした?」

「私も最初は君とやり合う気だったんだけどね」

「諦めたのか?」

「いや、気が変わったんだ。君をもっと知りたくなってね」


 男は青年に背を向けこの場を立ち去ろうとする。

「また会おう」

「待て!」

 青年は男を逃がすまいと走り寄る。

 だが男は目の前で闇に溶け、消え去った。

 どう考えても普通の事ではないが、分かる事は一つだけ。


「くそ、逃がしたか……」

 青年は悔しそうに吐き捨てる。

 だがすぐに切り替え、その場を立ち去る。

 青年には立ち止まっている時間は無いのだ。


「逃がしはしない。絶対に」

 青年は止まらない。

 あの男を殺すために、青年はまた旅立つのであった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る