どこにも書けないこと 2024/02/07

 『どこにも書けないこと』というお題なので、誰にも言ったことが無い話をします。


 私が3年前の事です。

 当時、私は知らない街を散歩することが趣味で、学校が休みの日にはよく出かけて散歩していました。

 

 太陽が照り付ける暑い夏の日でした。

 その日も知らない街を歩き、知らない街並みを堪能していました。

 ですが気が付くと周りの景色が変わっていることに気が付きました。

 建物が廃墟しかなく、木も枯れ木で、なんとなく地獄みたいだなと思ったのを覚えています。


 しかし私は慌てませんでした。

 稀にですが、異世界のようなところに迷い出ることがあり、今回も『またか』くらいにしか思ってませんでした。

 なのでそのまま歩いて、そのうち帰れるだろうと思ってました。


 ですが道を歩いているうちに妙な音が聞こえてくるようになりました。

 どうやら私が向かっている方向から聞こえているようで、道を進むほど音は大きくなっていきます。


 私は不思議に思いながらも歩いていると、大きく開けた場所に出ました。

 そこには二つの影がありました。

 人ではなく、鬼です。

 赤鬼と青鬼。


 じゃあその二匹が何をしていたのかと言うと、血みどろの争いをしていました。

 嫌な予感がしました。

 なぜ争っているのかは分かりませんが、鬼に見つかると大変な事になります。

 この二匹に気づかれないようにすぐさま引き返そうとすると、足元にあった枝を踏み音を立ててしまいました。

 音に気づいた二匹が私の方を見ました。

 その時の私の恐怖が分かりますか?


 私はそのまま背中を見ずに走り出し、一目散に逃げました。

 どれだけ走ったのか、いつの間にか家の前に立っていました。


 これが今まで誰にも話さず、どこにも書かなかったことです。

 こんなのどこにも書けませんよ。

 だってこれを見た鬼が私を見つけるかもしれません。


 でも皆さん不思議に思われますよね。

 なんで今頃になって書いたのかって。


 実は最近ずっと視線を感じているんです。

 ここ一年の間、ずっと誰かが見ている気がするんです。

 外にいても、家の中にいても……

 私は疲れました。

 もう楽になりたいのです。


 これを書いている間に、部屋の外から物音が聞こえてきました。

 彼らがやってきたのでしょう。

 やっと楽になれ

 

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