特別な夜 2024/01/21

 かつてチートデイというものがあった。

 チートデイというのは、過剰なカロリーをとっても太らないという夢のようなチートである。

 これは自らに過酷なダイエットを課した一部の限られたダイエッターのみの特権であり義務でもあった。

 彼らは言う。

 必要なことなのだ、と。


 ところがこれに意を唱える者たちがいた。

 世界中の食いしん坊たちである。

 特権を廃止し、誰もがその権利を持つべきだと訴えた。

 曰く、食べても太らないなんておかしい、と。


 これを受けて、ダイエッターたちは抵抗をした。

 チートデイは辛いダイエットのご褒美のようなもので、なんの苦労もしていない人間がご褒美をもらうのはおかしいと反論したのだ。

 もちろん食いしん坊たちは反発し、両者が激突、死傷者も出た。


 ダイエッターたちは善戦したものの、数の暴力には勝てず、最終的に特権を手放すことに合意。

 そして万人にチートデイは開かれた。

 俗に言うチート革命である。


 これによって誰もがチートデイの恩恵にあずかり、無制限ではないが誰もがチートできるようになった。

 世の中は歓喜の声で満ち溢れ、誰もがその奇跡に涙した。


 こうして誰もが好きな物をたくさん食べても太らなくなり、世界に平和が訪れたのだった。


 ○ ○ ○


 という妄想をしながら、私はお菓子を机の上に並べる。

 今日はチートデイ、特別な夜。

 どれだけ食べても太らない日。


 私は別にダイエットをしていないけれども、私の脳内世界では誰もがチートデイを持っているので問題ない。

 そう、問題ないのだ!

 

 一口、お菓子を口に入れる。

 口の中に悪魔的なカロリーを感じる。

 だが、今日はチートデイなので、カロリーゼロ。

 ああ、なんて素晴らしい日なんだろう。


 私は次のお菓子を頬張り、チートデイの偉大さを噛みしめるのであった。



 P.S.

 この短編で語ったチートデイについて。


 チートデイとはダイエット中に設ける「好きなものを自由に食べる日」のこと。

 これを設けることで、一時的に体重が増えてもやせることができる、というものです。

 カロリーがゼロになる日ではない(時間が無いので違うのを承知で書いた)


 ただ様々な言説があり、真偽のほども不明です。

 モチベーション維持はともかく、食べて痩せるなんて『オカルトでは?』という人もいます。


 詳しくは自分で調べて、自己責任でお願いします。

 私は責任を取りません。あしからず。


 一つだけ言えることは、主人公のように運動をせずにチートデイを設定しても、普通に太るだけなのでご注意ください。

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