20歳 2024/01/10

 我が家には20年物がたくさんある。

 私は今年で二十歳になるのだが、私が生まれた時に待望の子供ということで、親戚一同がいろいろ買ってきたのだ。


 20年物のブルーベリーの木。

 毎年実がなったものをお菓子にして食べている。


 20年物の株券。

 あまり値上がりしてないが、買った株の配当は私のお小遣いになった。


 20年物のぬいぐるみ。

 単に捨ててないだけだが、今ではプレミアでとんでもない値が……。


 私が二十歳になるまで、一緒にいられなかったものもあるけど、どれも私の人生を豊かにしてくれた。


 そして今日は私の誕生日。

 目の前に20本のろうそくが立てられたバースデイケーキが鎮座していた。

 こんな歳になると嬉しいやら恥ずかしいやら、複雑だ。


 私は家族に見守られながら、ろうそくの火を吹き消す。

 『誕生日おめでとう』と祝福され、みんなからプレゼントをもらう。


 それを見た父は嬉しそうに20年物のワインを取り出す。

 私が生まれた時に、一緒に飲むんだと言って買ったワイン。


 私の誕生日が近づくにつれて、ワインを眺めながら『まだかな』と言い続ける父。

 本人よりも誕生日を楽しみにしているとか、何だこいつと思わなくもないが、今日は許してやろう。

 正直お酒にはずっと興味があったのだ。


 そして20年物――ではないワイングラスを取り出し、ワインを注ぐ。

 ワインの香りは初めてだが、とても良い香りがする。


 ワインを興味深げに眺める私を見て、父は満足気にうなずいた。

「それでは一人前の君に乾杯」

 お互いのグラスをカチンと鳴らして、口をつける。

 初めて飲んだワインは、とても甘美で苦い大人の味がした。

 

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