冬晴れ 2024/01/05

 俺は目的地について、スマホの時計を見る。

 彼女とのデートの時間まであと一時間。

 遅れてはいけないと、いつもより早めに出たが早すぎたようだ。


 当然、待ち合わせの相手はまだいない。

 どこかで時間をつぶすか、このまま待つか。

 まわりを見ても、時間をつぶせるような物は見当たらない。

 道を戻るのも面倒なので、このまま待つより他にない。

 幸い今日は冬だというのに、春を思わせるような暖かさ。

 このまま待っても、凍えることはないだろう。


 近くにあったベンチに座る。

 日に温められたのか、ほんのり暖かい。

 

 座っても見て面白いものがないので、なんとなく空を見上げれる。

 空は一つない冬晴れだった。

 冬で空気が澄んでいるのか、いつも見る空よりきれいに見える。


 別に面白いわけでもないのだが、なんとなくずっと見続けることが出来た。

 しばらくすると、ポカポカ暖かいので眠気がやってきた。

 いつもより早く起きたので、少々寝不足なのだ。


 少し考えて、寝ることにする。

 やることもないし。

 目を閉じると、そのまま夢の世界に落ちていく。




 どれくらい寝たのか、意識が覚醒する。

 時間を見ようとスマホを取り出そうとすると、誰かが肩にもたれかかっていることに気が付いた。

 待ち合わせをしていた彼女だった。

 彼女は、規則正しい寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。


 起こすべきか迷ったが、とりあえず今の時間を確認することにする。

 スマホを見ると、まだ待ち合わせの時間の三十分前だった。

 少し考えて、時間までこのまま寝かすことに決める。

 別に急ぐこともないだろう。


 もう一度彼女をみると、とても気持ちよさそうに寝ている。

 これだけ気持ちよさそうに寝ていれば、起こすのは気が引ける。

 彼女も、俺が寝ているのを見て起こすのをためらったのだろう。


 空を見上げれば、さっきと変わらない冬晴れの空。

 相変わらず、太陽が暖かい陽気を降り注いでいる。

 寒がりの彼女とデートするにはいい空模様だ。


 俺はそう思いながら、あくびをかみ殺すのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る