幸せとは 2024/0104
「あなたがそんな人だなんて思わなかったわ」
「僕もだよ。君とは分かり合えない」
「本当に残念だわ」
ママはパパを睨みつける。
パパはママの迫力にちょっとビビっていたけど、謝ることは無かった。
「君こそ、なんでショートケーキのイチゴを最初に食べるんだ!
意味が分からない」
パパの言葉を聞いて、ママは説明するようにゆっくりと話し始めた。
「ケーキの甘さを最大限味わうためよ。
最初にイチゴの酸味を味わうことによって、ケーキの甘みを引き立たせるの。
そうすることでケーキを幸せに食べることが出来るわ」
僕はイチゴを最初に食べて、ケーキを食べてみる。
なぜかは分からないけど、最初にイチゴを食べるといつもより甘くなった気がする。
なるほど、ママの言い分は正しい。
でもパパは怖い顔のままだった。
パパは分からなかったらしい。
「ふん、理解できないな」
パパはママの説明を鼻で笑う。
パパはかっこいいと思っているみたいだけど、はっきり言ってダサいからやめて欲しい。
「ケーキを甘くする?
何言っているんだ、ケーキは最初から甘い。
だから最後に口直しでイチゴを食べることで、ケーキの甘さをリセットする。
メリハリをつけることで、自分が幸せだってことを噛みしめるのさ」
僕はケーキを食べてから、イチゴを食べてみる。
なぜかは分からないけど、お口の中がすっきり爽やか。
なるほど、パパの言い分は正しい。
でもママは怖い顔のままだった。
ママは分からなかったらしい。
「ありえないわ。
甘さをリセットなんて……」
ママは目を細くしてパパを睨む。
ママがかなり怒ったときの顔なんだけど、夜に眠れなくなるからやめて欲しい。
僕は、パパとママ、どっちも正しいと思う。
でも二人とも、自分が正しいと言って喧嘩をやめない。
長くなりそうだから、自分のケーキを食べよう。
どうやって食べようかな。
すると、パパとママが、突然僕の方を見る。
「そうだ、お前はどう思―あれ?」「そうよ、あなたはどう思―あら?」
パパとママはキョトンとした顔で、僕の近くにある何も載ってない2枚の皿をじっとている。
パパとママの、ケーキが載っていた皿だ。
ゆっくりと僕の方の顔を見る。
マズイ。
僕が二人のケーキを食べたことがバレてしまった。
なんとかごまかさないと……
「うーん。僕はケーキをたくさん食べるのが幸せかな」
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