残念ながら2024年は訪れません

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第1話残念ながら2024年は訪れません

「残念ながら2024年は訪れません」

あと1時間で年が開けようとする中、突然ベットの上に立ち上がり長い髪の少女は、宣言した。

「いや、あと少しで年明けだろう。つか、ベットの上で立ち上がるなよ」

田中 空(たなか そら)は、コタツの中からベットを見上げるように注意した。

コタツには、みかんと目がギョロギョロしたモンスターが描かれたバックが乗っている。

もうちょっと角度が良ければスカートの中が、見えそうだ。

俺の部屋のベットを占領して、この頓珍漢な事を言っているのは、黒いブレザーに少し長めのスカートを着た神原 蒼(かんばら あおい)だ。

ちなみに俺は、神原が好きだ。

空の一個下の後輩になるが、正直神原との関係はよく分からないところがある。

「いえいえ。絶対2024年は訪れません。私達は永遠に2023年に閉じ込められてしまったのです」

冗談に思える内容を神原は、表情を変える事なく真剣に言っている。

大きく開かれた目は、空を見ておりいつものパターンに入った事を意味していた。

神原と空の出会いも、大体この状況と一緒だった気がする。

入学式早々に神原は、問題をおこしていた。

校門の前に立ち、目を合った人に向かって

「私と世界を侵略しませんか?」

めちゃくちゃに聞きまくっていた。

神原は、今も小さいが初めて見た時は、もっと小さかったと思う。

中学生が間違えて来てしまったじゃないかってくらい小さかった。

だから、最初は神原が変な事を言っても聞かれた方はニコニコと対応してきたが、そのうちこいつヤバい奴って事になり人が離れていく。

それの繰り返し。

それを繰り返しいれば、ドン引きだし、多くの人の目を集めた。

そんな事お構いなしに、聞き続ける神原。

みんな関わらないように避けていたが、俺は違う。

確か理由は、面白そうだったからとかくだらないものだったと思う。

だから、自分に言われた時

「一緒に侵略するよ」

って答えてやった。

そう答えると神原は、目を大きく開けて空の手をガシっ!と握りブンブンと振り始めた。

いきなり手を握られたのもびっくりしたし、めちゃくちゃ汗ばんでいたのも別の意味でびっくりした。

とにかく嬉しいのは伝わってくるが、表情が目以外変化ないのでよく分からなかった。

とりあえず好奇心で、神原に声を掛けてみたが結論から言うとめちゃくちゃに面白い奴だった。

ここの2年間で、侵略と呼ばれた行為は一度もされてない。

ただとにかく絡んでくるの。

朝、昼、夜ととにかく絡んでる。

何故か俺の家知ってるし、何故か昼になるといつのまにか隣に座ってるし。

最初は面白そうが勝ってましたよ。

神原よく見たら凄く美人だったし、背が低いのも結構可愛いかったし。

ただ今みたいに毎回よく分からないお題が出されて、それに困惑する。

「学校の階段を上がる人と下る人の数を調べたいので手伝ってください」

「先輩の握力を計りたいです。とりあえず私の手を強く握ってもらっても大丈夫ですか」

「ちょっとタイムトラベルしてくるんで、何か過去の私に伝えたい事とかありますか」

など様々な事を言われてきた。

困惑はするが、最終的には面白い結果になった。

今回は普通に今朝電話がかかってきた。

大晦日に何か変な事するのかとワクワクして電話に出てみると、

「一緒に年越しませんか?」

と言われて椅子から転げ落ちた。

なんの企みなしに、ただ一緒に過ごしたい!?

そんなわけがない。

だから、神原いつも通り頓珍漢な事を言い出しくれて安心してる。

いや、だって。

なんか男女二人きりとか緊張しちゃうでしょ。

「迎えられないって。じゃあどうすれば迎えられるんだよ」

「私達は、年を超える為に試練をクリアする必要があるんです」

ベットから飛ぶように降りた神原は、空のすぐ真上を通って、ギョロギョロ目のバックを開けた。

今度は普通に見えて、黒だった。

こいつ年中スカートなのに、無防備すぎるんだよな。

でも勿体無いからあえて言いません。

しばらくするとダン!と中々強い音が、机の上から聞こえてきた。

「おいおい。まさか、家具とか壊す感じじゃないだろうな」

「そんな事しません。さぁコタツの上を見てください」

ちょっといつもよ声が高い気がする。

2年間一緒だと表情がなくても、それ以外の部分で判断する事が出来るようになった。

今みたいに声が高い時は、ちょっと危ない事をする時。

俺の部屋で危ない事しないで欲しいけどな。

とりあえずコタツの上を見てみる。

「何この安っぽいガラスの玉」

ラムネに入っているガラスの玉をボーリングの玉サイズまで大きくしたような物が、机の上に置かれていた。

「安っぽくありません。水晶です。3万円で買いました。これは、全能水晶と呼ばれる物で私に未来を教えてくれる水晶です」

「それ騙されてるよ」

「騙されてません。それに弘法は筆を選ばずって言葉あるように別にガラス玉でも、問題はないです」

やっぱガラスじゃん。

もう少しガラス玉をイジろうと思ったが、話が進まなそうなので、とりあえず放置する事にした。

「先輩。部屋の電気消してください」

「明るいとなんか問題あるのか?」

「ないです。気分的にそっちの方が、盛り上がります」

気分ですか。

言われた通りドアの横にあるスイッチで、電気を消します。

「うっわ!光ってる!」

さっきのガラス玉が緑色になり、暗くなった部屋を緑色に染めていた。

緑色が禍々しいし、絶対盛り上がらないだろこれ。

なんか神原は、得意げな目をしてるし。

「どうしたんですか?早くこっちに来て座ってください。2024年を迎える為の儀式を行いますよ」

「そんなガラス玉で2024年を迎えたくないけどな」

そんな風に言いつつ、いつものように面白い事が起きる予感がしていて、ワクワクしていた。

とりあえず素直に座りますか。

「先輩。この水晶に触れてください」

神原は、いつのまにか黒いローブと黒い手袋をしていた。

来ているものが元から黒だからか、本当に占い師に見える。

とりあえずなんの疑問も持たずに触れます。

緑色に光っているガラス玉を触ってみると

「いや、あっつ!」

熱い!

火傷するとかそんなレベルじゃないけど、まぁまぁの熱湯に手を触れた感じ。

「やっぱりですね」

神原は、熱さにびっくりしている空の手をギュッと握った。

身体ごとこっちに乗り出しいる為、顔がかなり近くに合って少し照れる。

「私に隠している事ありますね」

「何故そいゆう結論になったか聞いてもいいか」

「この水晶は、私に対して隠し事をしている人に容赦なく牙を剥けます。つまりこの水晶を触って熱いと感じた先輩は、私に対してやましい事を隠しているって事です!その証拠に私が触れても大丈夫です」

神崎は、そういうと空を握っていたのを離し、水晶に手を伸ばしピタッと触れた。

「ほら。私は、やましい隠し事をしていない為熱くありません」

「いや、その黒い手袋取れよ」

「この手袋は関係ありません。水晶が先輩に罰を与えてるんですから」

さっき握られた時、その手袋結構分厚かったぞ。

絶対耐熱バッチリの手袋だって。

でも、凄い目力でこっちみてる。

おおよそ余計いな事は、突っ込むなって言ってるんだろう。

とりあえず乗ってみる。

「仮にその水晶が本物だったとして、何にも隠してる事とかないぞ。ちなみ後10分くらいで年明けだからな」

「分かってます。ただ先輩が私に隠している事を言うまで、時間は止まったままです」

今日はだいぶ気合いが入ってるな。

余程俺が隠している事言わせたいみたいだけど、正直心辺りはあるけど恥ずかしくて言えないしな。

「恥ずかしくて言えない奴は、後回しにしていいか?」

「いいですけど。そんなに何個も隠している事あるんですか?」

神原の目がこっちを疑っているものに変わる。

また手を掴まれ水晶に引っ張れていく。

早く全部ゲロれって事だろう。

でも、どれから言っていけばいいんだ?

「じゃあ、分かりました。私が先輩に疑惑がある事を言っていきます。それに先輩は、正直に答えてください」

神原の掴む力が徐々に強くなっていく。

つまり、神原が一個ずつ質問するからそれについて答えろって事だろう。

それで真偽を確かめる為に、この水晶が使われると。

「確定で有罪じゃねぇか」

ずっと水晶熱いだから、絶対有罪判決出るだろうこれ。

「うるさいうるさい。とりあえず一つ目の質問です。先輩割と高確率で、私のスカート覗こうとしてますよね?」

「いいえ」

ジュウ!

もう間髪入れずに水晶にてを押しつけられましたね。

当然めちゃくちゃ熱いし、そんなわけねぇだろって目を向けられる。

そのせいか水晶から離そうとしても、結構な力で押しつけられている。

「悪かった悪かった!時々!時々見てた!」

ちゃんと白状すると、ちょっとしたため息が聞こえた後、水晶から手が離された。

だって見えるんだからしょうがないじゃん。

「見せたくないならもっと気をつけろよ」

「見たいなら見せますんで、ちゃんと言ってください」

はぁ?

まぁまぁの爆弾発言したように気がしたんだけど。

言った方も少し赤くなってるし。

「じゃあ、今お願いすれば見せてくれるの?」

「いいですよぅ。見せますぜ」

口調おかしいし、すげぇ早口だ。

空を握ってない手は、髪をぐしゃぐしゃにいじくりまわしてる。

でも見せてもらいました。

立ち上がってもらい、見やすいようにスカートを上げてもらいました。

さっき見たように、黒でした。

「どうですか?」

「どうも」

下着を見せてくれた代償は、お互い何を言ったらいいのか分からない気まずい空気でした。

今日はお互いテンションがおかしい。

いつもこんな感じの事はしてないし、頼んでも絶対に見せてくれない。

大晦日の魔物ってやつなんでしょうか

「はーい次々。次の質問いきます。先輩好きな人いますか?」

「修学旅行の夜かよ」

でも、空気を壊してくれた事に感謝。

いやあんまり変わってない気がする。

目を輝かせて聞いている。

やっぱテンションおかしいな。

「これってふざけて答えたらどうなる?」

「手をコンガリ焼く事になります」

すでにどんどんと近づいていく。

とりあえず答えてみます。

「神原」

「はい。コンガリ焼きましょうね」

ジュジュー。

めちゃ熱い。

え〜割と真面目に答えてたんだけど。

普通に一緒にいると楽しいし、とにかく面白い。

そしてかわいい。

絶賛コンガリ焼いている神崎を見てみる。

うわぁ。

すげぇ怒っている。

目が怒ってるよ。

ふざけて答えたと思われたみたいで、機嫌を損ねてしまったみたいだ。

なんかこのままだと悔しいので、意地を張ってみます。

「あ、熱くない!これは俺が本当の事を言ってるって事だよね!?」

「はぁ!?めちゃくちゃジュージュー鳴らしてるでしょ」

「いーや。熱くないね。俺は神崎が好きだから本当に熱くない!」

大晦日の魔物の正体は、寝不足による深夜テンションかも知れない。

なんか心のストッパーが外れてる。

すると神原は、分厚い手袋を投げ捨て何故か水晶を触り始めた。

「やっぱり熱いじゃないですか!」

顔を歪めて、こちらを見てくる。

「それは神原が、嘘ついてるからだろ!」

「嘘ついているのはそっちじゃないですか!どうせ冗談で言ってるんでしょ!!」

「嘘じゃねぇし!!」

うぉぉぉ!!と聞こえてきそうな二人の熱い戦い。

なんか最初の目的なんてとっくに忘れてしまったけど、とにかく楽しいからいいか。

この二人の不毛な戦いを止めたのは、パァーン!!と発砲音だった。

「びっくりした」

二人ともビクと水晶から手を離す。

これは、空がクラッカーの替わりに用意していたスマホアラームだった。

クラッカーないから年越したら、鳴るようにセットしていたんだ。

「年越しましたね」

「年越しましたよ」

二人共何も言わない。

今までの戦いってまじでなんだったんだ。

この戦いのオチってどうするんだよ。

普通に2024年来たし。

「なぁ。次は俺が聞いていいか?」

「どうぞ」

「とりあえずさっきの勢いで、言った告白の返事を教えてほしい」

「照れるなら言わないでよ」

お互い照れてるから、視線がキョロキョロしている。

沈黙が凄く重い。

しばらく目を泳がした後

「えーっと嫌です」

と言われました。

ショック。

「水晶に触ろ」

「嫌です」

はい。

無理やり水晶に持っていきます。

「熱いですって!!」

「熱いって事は、嘘って事だよな!?」

「分かりました分かりました!嘘つきました!私も同じ気持ちです!」

緑色に染められた部屋で、なんともムードも甘酸っぱいストーリーもない告白。

心も手のひらも熱い新年になりました。

ハッピーニューイヤー

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