Ⅲ - Ⅲ

 久々に私の下を訪ねたマルジンは、流石にぎょっとしたような顔をしていた。

 驚いたのだ。私が銃を完成させたから。思った以上に、良い出来だったから。


「どうだ、お前の言う通りに、銃を作ってみたぞ」


 私は彼に銃を手渡した。わざとらしく、もったいぶった調子で。


「ただ、火縄の臭いを抑えただけではない。装填速度も速いし、銃身もぶれにくい」


 ああ、素晴らしい。私の機械は素晴らしい。

 最高だ。最高だ。最高だ。


「これならば、特許も取れる。お前も世界を見返せるし、私も妻に愛される。そうだろう、なぁ、そうだろう?」


 私はマルジンを見た。彼は珍しく、笑っていなかった。


「なるほど、これは……」


 異教徒はわざとらしく、言葉を切る。


「狂気的ですね」

 そして何の躊躇いもなく、引き金を引いて柱を撃った。


 ばん、と乾いた音が響き、火縄の焦げたにおいがする。


 ──その瞬間、私は膝から崩れ落ちた。


「あ、ああ……」


 妻がいる。兵士に腕を掴まれた妻が、私の方を振り返っている。


「あっ、ああっ……」


 妻は私が殺したのだ。私が機械などを作ったから、血を流して死んだのだ。

 それならば、私がこの銃で彼女を殺したと言っても、過言ではない。


「ああああああっ……!!」


 私は泣いた。顔を埋めて、床を殴った。手から血が出るまで、何度も、何度も。


 いつの間にか、私は一人になっていた。

 マルジンもいない。そして、妻もいなかった。

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