Ⅲ - Ⅱ

 マルジンは、私に最低限の部屋を与えた。薄暗く、面白みのない、閉ざされた空間。

 いつ、この場所が見つかって、カトリックに頭を吹き飛ばされるか分からない。

 魔女狩りに怯える人間とは、こういう心境に陥るのだ。ここに来て、それが初めて分かった。

 

 時折、爆発にも満たない破裂音と、押し殺したような呻き声が聞こえる。外に出れば、お前もこうなるぞと、脅しをかけているのだ。そうだ。そうに違いない。


 自分の目の前に置かれた銃を見る。話の通り、ガタのきている旧式だ。

 この銃は、冷たいフォルムをしている。武器ならば、余分な部分は削ぎ落とさねばならないのに、あえて虚飾を嗜むように、ごちゃごちゃと複雑な構造をしている。

 

 銃に手を伸ばしかけて、そして止めるのを、一体何度繰り返しただろう。


 だが、マルジン・エムリスと居ると、妻の言葉を思い出す。

 機械作りに精を出すと、妻の姿を思い出す。

 だから私は、間違っていない。間違ってなど、いないのだ。


 ──僕たちの発明はどうなるんです!? 自動編み機を広める夢は!?


「黙れ……!!」


 ──すごい、すごい! まほうみたい!


「黙れ、黙れ……!!」


 憎い、憎たらしい。

 何も知らぬ癖に、勝手なことを言うな。


 ──……を、……て。

 

 「……そうだ。お前の言う通りだ」


 お前は私の頭の中で、何度も死んだ。

 頭の中で、何度も何度も死んだ。

 頭をかち割られた。血が飛び散った。

 

 お前はとっくに死んだのだ。

 それなのに、お前は私に意見をしようとする。


 だから、私は間違っていない。間違っていないのだから、お前は今でも、私の下に現れるのだろう?

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