Ⅲ - Ⅰ
ブルターニュとは、もう少し、のどかな地方だと思っていた。興味深い伝説もいくつかあり、芸術家たちも愛する場所だと聞く。
しかし、目の前に広がる光景は、私の期待を裏切った。
ブルターニュには、確かにマルジンの仲間がいた。が、その半分は何かしらの損傷を負っていたし、さらにその中の半分は今にも死にそうか、もしくは既に死んでいた。
要するに、ドルイドはクリスチャンと戦争をしていたのだ。
彼らの言い分はこうだ。この国では、ユグノーという名の新教徒と、カトリック系の旧教徒が争っている。それ自体はドルイドには関係のない話なのだが、ある日旧教徒によるユグノーの虐殺が始まってから、各地で異教徒への探りが過激さを増し、ついにこのブルターニュで見つかってしまった、とのことだった。
争いごとに巻き込まれるなど、聞いてないぞ。私はマルジンに詰め寄ったが、彼は飄々と言うよりは、むしろ冷たい口調で言った。
「ええ、そうですよ。ですが、いやだからこそ、貴方の発明品が輝くのです」
まるで私の方がおかしくて、彼の方が当たり前であるかのような物言い。
今日は何の日だ、祈りの日だったか。その程度の気軽さだった。
「銃を改造して欲しいのです。ドルイドを支持する者の中には、いわゆる『魔術』を嗜まない者もいます。ですから、こういう武器が必要になってくるのですが……。如何んせん、我々が持っているのは旧式でして、火縄の臭いがきつい上に、装填に時間が掛かるのです」
「ふざけるな!! 私は、こういうものを作るために呼ばれたのか!!」
……思わず激昂したのち、私は後悔する。
大勢のドルイドたちが、私を見ている。
見ている。見ている。私を見ている。
「……お言葉ですが、こういう機械こそが、『役に立つもの』だと思うのですが?」
マルジンは言った。彼の心の声が聞こえる。
我々は神の下に生きている。だから他人のふりをすることは出来ない。そう、出来はしないのですよ。
「目の前の命を救えてこそ、貴方は立派な発明家ですよ」
──……を、……て。
妻が言う。
逃げないで。救って。私の命を、救ってください。
妻がそう言うのなら。そうせざるを得ないではないか。
私は頭を抱えた。
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