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時々、妻との思い出が夢に出る。
妻は時折、塾の手伝いに来てくれた。教室の片付けのほか、たまに授業もやってくれた。
だから妻は、私と同じく「先生」と呼ばれていた。
「皆さん、今日はクリスマスですね。皆さんは本当に良い子ですから、先生からプレゼントを差し上げます」
色とりどりの、可愛らしい靴下。寝る間も惜しんで作った、温かそうなsocks。
子どもたちは嬉しそうだ。妻は笑みを浮かべながら、彼らの頭を優しく撫でた。
「ねぇ、先生」
何の悪気もない生徒が、妻に話しかける。
「先生はどうして、いつも靴下をつくってるの?」
「それは……」
妻は笑顔を崩さなかったが、私にははっきりと分かった。彼女は一瞬、何を言うべきか迷っていた。
「……私が、靴下作りに誇りを持っているからです。かの麗しきマリア様だって、靴下をお召しになったのですから」
どうして妻は、靴下を編むだけの人生だったのだろう。
私が、そうさせてしまったのだろうか。
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