親の話

「立花はさぁ、お父さんと仲いい?」

「いや、悪い。口ほとんど利かない」

「マジか」

「悪いというか、没交渉」

「まぁそうなるか……」

「横峯はどうなんだよ?」

「俺の父さんはヘンな人だからな。なんかちょっかいかけてくるよ」

「お前の父親、チェリストだったよな」

「そう。顔合わせるたびにクラシックのイントロクイズ出してくる」

「愉快なお父さんだな」


「なあに、なんの話?」

 香宮が教室を横切ってやってきた。

「香宮はさ、父親と仲いい?」

「悪いわよ〜、未だにキスしようとしてくるのよ? 全力で拒否してる」

「香宮って親に愛されてそうだもんな〜」

「そうかしら。うちは母親が放任主義で、父親が過干渉なのよ。嫌ったらありゃしない」

「そうなのか」

「立花は、母親とはどんな感じなんだよ?」

「母親とはねー、仲良くやってるよ」

「大人だな〜」

「思春期抜けてるし」

「まあ、確かにそうか」

「横峯は?」

「うちも母親は放任主義なんだよね〜」

「なんか聞いてると、横峯んとこが一番家庭環境良さそうだな〜」

「そうかな」

「うん」

「まぁでも、真っ直ぐ育ったとは言い難いから、子育てって難しいねぇ」

 と、カラカラと笑う横峯。

「横峯くんは単純な人間ではないけど、曲がってるとも思わないわよ」

「横峯は……軸というより、ブラックホールみたいな人間だよな」

「なにそれ、褒められてんの?」

 笑いながら言う横峯。

「まぁ、そう」

「立花の褒め方、難しいな〜」

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