【カクヨムコン応募中】他人事

三愛紫月

何もない

テレビを消して

ぼんやりヒーターの灯りに照らされただけの部屋にいる


そんな俺の日常は代わり映えしない何でもないが続いている


ニュースで起きている出来事も

SNSを開いて目に入る記事も

全部、全部

異国で 

異色で


俺は感情の持たない無機質なロボットになったみたいに

全部、全部

他人事ひとごと


俺には起きない事だって、どこかで勝手に信じてる

そんな事ないのに


今まで生きてきてわかってるのに

明日は我が身だって事ぐらいわかってるのに


それでも、今の俺には他人事で

この小さなアパートで自分の事だけをひたすらに考えて布団にゴロゴロと転がりながら毛布の温もりに包まれている


それに飽きたら、温かいご飯を食べてふかふかの布団にくるまって眠る


そうできない人がこの世界のどこかにいて

泣いてる人がこの世界のどこかにいて

苦しんでる人がこの世界のどこかにいて


かつて俺もその一人だった時があったのに


年月は恐ろしい

そんな事さえも忘れさす


悲しみや苦しみよりも

脳が楽しみや喜びだけを探しだそうとする


気づいたら俺は、この無機質な機械の虜だ


こいつに向き合って毎日過ごすと

まるで全てが小さな絵のようで


全部、全部

本当なんてない気がするんだ


ちゃんと目で見れてない気がする

俺は、こいつに支配されてる


気づけないまま大人になって

気づかないまま大人になった


いつか

感情を取り戻せるだろうか?


いつか

人の痛みを自分の痛みのように味わう事が出来るだろうか?


いつか

そんな日が来ますように


いつか

そんな日が来る事を願っている



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