ニラカナのリレー小説企画24話

双葉音子(煌星双葉)

第24話

 段々と、身体が言う事を利かなくなる。

 嗚呼。もう、終わりなんだ。

 絶望の2文字が脳裏を過った瞬間だった。


「……っ!?」


 突如として、身体の支配権が戻った。そして、眼の前には倒した筈の髑髏左衛門がいた。

 さっきのは未来予知? それとも時間が戻った? 今の私にはそんな事を考えている余裕なんてなかった。あの術を封じなければ、奴を殺すことは出来ない。

 ……あの術を使わないといけないみたい。一か八か。成功しても、勝てるとは限らない。でも、僅かな可能性に賭けるしかない。


邪廉魔じれんま!」


 あの時と同じように、カラスたちはドリル状に集まり、髑髏左衛門に向かって飛んでゆく。

 それと同時に、髑髏左衛門は口を開いた。


「こむ……」

「『小娘よ。貴様の血と魂……全部寄越せ!』でしょ?」

「なっ……!?」


 髑髏左衛門は、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をした。


「何故、わしの思考が読める!?」

「さあ、何故なのかしら。まあ、別に解っても、此の後殺されるから意味無いでしょう? それに、あなたにやる物なんて、つゆ一つ有りやしないわ!!」

「生意気な小娘め……」


 髑髏左衛門は、いとも容易く私の挑発に乗った。それで良い。


「その生意気な口を閉じないと言うのならば、貴様の期待に、応えてやろう!」

「フッ、上等よ。……『罪連永さいれんと』」


 その言葉が周囲に響くと同時に、集まっていたカラスたちは、一気に散開し、私と髑髏左衛門を取り囲み、羽だけを残して消えた。


「なんだ、不発に終わったようだな」

「確かにそうね。……このままじゃ、ね?」

「ハッタリか? フン、死物狂いで醜く足掻くが良い」

「……それはこっちの台詞よ」


『蛇蝎の肋』


 髑髏左衛門の声が、あたりに響く。唯それだけだった。


「な……、何故だ。何故、何も起こらぬ……!?」

「種明かしよ。『罪連永』、この技はターヤガラスの羽で出来た円の中で発生する魔力と呪力を、全てゼロにする。強力な代わりに、私自身もその中にいないといけないんだけどね」


 さっきの『邪廉魔』はフェイク。髑髏左衛門に『蛇蝎の肋』を使わせる為の。

 髑髏左衛門の体……、いや、髑髏左衛門のように見えていたものは、段々と崩れ落ちてゆく。


「巫山戯ルナァ゙ァ゙。巫山戯ルナァ゙ァ゙!!」

「あとはあなたの本体を破壊するだけ。その本体は、カラスたちが見つけてくれたみたい」


 肩に飛んできた1羽のカラスを見やる。


「フン! 死物狂いで醜く足掻くが良いわ!」

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ニラカナのリレー小説企画24話 双葉音子(煌星双葉) @arik0930

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