第七十六話 皆で昼食を食べます
そして、大きなドアの前に僕達は到着しました。
ドアが開くと、大きなテーブルがドーンと置かれていました。
更に、侍従さんも壁際に控えています。
うん、やっぱり貴族の食卓って凄いんだね。
「レオ君、子ども用の椅子を用意したからこっちにいらっしゃい」
僕はメアリーさんの手招きで、席の前に用意された子ども用の椅子に座ります。
そして、各自がそれぞれの席に座りました。
すると、僕達の前に次々と料理が並んで行きました。
凄い豪華な料理に、僕はとってもビックリです。
料理の準備が整ったところで、サイオンさんが皆に僕の今後の予定を話し始めました。
「レオ君は、今日は我が家に泊まって、明日から冒険者活動する事になった。少なくとも来年の春までは我が領に滞在するそうなので、今後も我々と会う事はあるだろう」
僕の今後の予定を、皆さん真剣に聞いています。
僕もアマード子爵領にいる間は、アマード子爵家の皆さんと会う機会は多くなりそうな気がしています。
「では、レオ君の歓迎も兼ねて乾杯をする。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
そして、乾杯の合図と共に、一斉に食事が始まりました。
「あら、レオ君はとっても丁寧な食べ方が出来るのね」
「皆さんの食べ方のマネをしているだけです」
「そうなのね。でも、作法は気にせず普段どおり食べていいのよ」
僕が周りの人のマネをしながら食べていると、メアリーさんが普通に食べていいよと言ってきたのですが、見たことがない料理の数々なので、普通の食べ方が分からないんだよね。
「ふふふ、ジョセフとデイジーもレオ君の年齢の頃は元気よく食べていたわね。それこそ食べ終わると口の周りも服もベタベタに汚れていたわ」
「は、母上、それは昔の話ですよ」
「そ、そうですわ。今はちゃんと淑女としてのマナーが出来ておりますわよ」
そして、何故かグレイスさんからジョセフさんとデイジーさんに小さい頃の食事の事で飛び火していました。
ジョセフさんもデイジーさんも顔を真っ赤にしながらグレイスさんに反論していたけど、美男美女の兄妹二人にもそんな過去があったんですね。
「そういえば、レオ君はどこの宿に泊まるのかしら?」
「明日から教会が運営している宿に泊まる予定です」
「そう、それなら安全面でも安心ね。宿は教会の敷地内にあるし、教会には聖騎士団もいるわ」
グレイスさんが僕の泊まる宿を聞いてきたけど、安心できる場所があるのは良い事だよね。
と、ここでデイジーさんがニコニコしながら僕に話し掛けてきました。
「レオ君、一緒にお風呂に入ろうね。それで、一緒に寝るんだ」
「えーっと……」
「レオ君、楽しみだね!」
「は、はい」
僕は、デイジーさんの笑顔に押し切られました。
アマード子爵家の皆さんは、押しがとっても強いですね。
あっ、昼食はとても美味しくて、あっという間に完食しましたよ。
「ふわあ……」
「あら、色々あって疲れちゃったのかな? お昼寝しないとね」
昼食を食べ終えた僕は、朝のドタバタや応接室での話し合いなどもあったので眠くなっちゃいました。
ひょい。
「私の部屋のベッドに運んであげるわ。レオ君は本当に軽いわね」
「ああ、お母様ずるい!」
グレイスさんが僕の事をひょいと抱っこすると、デイジーさんが抗議の声を上げました。
僕はというとそんな余裕なんて全く無く、暖かさと柔らかさと良い匂いに包まれてあっという間に眠ってしまいました。
「凄いわ! これが魔法なんですね」
一時間のお昼寝の後、僕はデイジーさんと屋敷の庭にいました。
他の人はそれぞれ用事があるみたいで、唯一用事がなかったデイジーさんに魔法の訓練を披露しています。
魔力玉を空中でくるくると動かしながら魔力制御の訓練を見せているのですが、デイジーさんは目を輝かせて僕の訓練風景を見ていました。
「回復魔法はどうやるのですの?」
「あ、はい。まず、相手に軽く魔力を流して体の悪い場所を探します」
今度は回復魔法が見たいとデイジーさんに言われたので、実際に回復魔法を使ってみます。
因みにデイジーさんに魔力を流してみても、全く無く悪い所はありません。
健康で、とても良いですね。
なので、一緒にいた侍従さんに軽く魔力を流してみました。
「おや? お腹と膝が悪いみたいですね」
「流石でございます。最近少し調子が悪くて」
調子が悪いのに、無理をしちゃ駄目だよね。
僕は、侍従さんのお腹と膝が良くなるように回復魔法をかけます。
「ふう、どうですか?」
「あ、ああ、体がとても軽いです。それに、膝が痛まず普通に歩けます。本当にありがとうございます!」
「す、凄い。これが、レオ君の回復魔法」
あれ?
何だか侍従さんが涙ながらにお礼を言ってきて、デイジーさんはとてもビックリしているよ。
「実はね、彼は以前は冒険者だったんだけど、大怪我が原因で冒険者を引退して、我が家で侍従をしていたのよ。これまで色々な治療をしたけど、完治しなかったのよ」
デイジーさんが僕に説明してくれたけど、侍従さんにそんな過去があったんだね。
「体が良くなって、本当に良かったね」
「はい、お嬢様」
そして、デイジーさんはまだ涙が止まらない侍従さんを抱きしめていました。
アマード子爵家の人達は、とっても優しいですね。
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