第七十五話 僕がアマード子爵領でやる事
「レオ、この街にはいつまでいるつもりだ?」
「少なくとも来年の春頃までは居ようと思っています。冒険者として、いっぱい勉強しようかと」
「うむ、来年春までなら全く問題ないな」
僕の回答に、質問したサイオンさんだけでなく、他の人もうんうんと頷いていました。
僕がアマード子爵領に滞在する日程が重要なんだね。
すると、改めてサイオンさんが僕に話をしてきました。
「レオには、治療とかの他に頼みたい依頼がある。魔法使いとしての依頼だな。でも危険は全くないから心配はいらないぞ」
「魔法使いとしての依頼、ですか?」
「そうだ。レオには特殊な金属の精錬を手伝って貰いたいのだよ」
おお、僕への仕事は魔法使いとしての仕事なんだ。
でも、金属の精錬に何で魔法が必要なのだろう?
「レオは知らないと思うが、このアマード子爵領の鉱山では鉄や銅などに加えてミスリルやアダマンタイトなどの金属が採れるのだ。しかし、採掘した鉱石から不純物を取り除いたりする工程で、どうしても魔力が必要になるのだよ」
「だから、魔法使いが必要なんですね」
「そういう事だ。この街には教会と工房に二人の女性の魔法使いがいるのだが、妊娠や出産などで来月からはどちらも暫く働けないのだよ。でも春までには、どちらかは仕事に復帰するだろう」
妊娠や出産が働けない理由なら、サイオンさんもその二人の魔法使いには無理をさせられないね。
僕は皆の為になればと、俄然とヤル気になったよ。
僕がふんすって思いで握りこぶしを作っていたら、ガッシュさんが話をしてくれました。
「できれば、レオには工房の仕事を多めにしてもらえると助かる。工房を三日で治療と薬草採取とポーション作りを一日ずつが理想だな」
「僕も全然問題ありません。その内容でお仕事します」
「よし。では、工房には俺から連絡しておこう。さっそく明日から頼むぞ」
アマード子爵領での仕事も決まって、とっても幸先良いですね。
何よりも工房でのお仕事は頑張らないと。
すると、ローラさんが手を組み祈りながら僕に話しかけてきました。
「このアマード子爵領にとって、特殊な金属の精錬は国から任された大事な仕事です。なので、私達は何とかしようと、小さな魔法使いをこのアマード子爵領に呼び寄せようと考えていたところだったのです」
「あっ、そうだったんですね」
「ええ。ですがレオ君の方からアマード子爵領に来てくれただけでなく、先代様まで治療してくれるとは。私は神様に感謝しているのですよ」
僕としては予定通りにアマード子爵領に来ただけだけど、アマード子爵領の人にとってはナイスタイミングで僕が現れたんだね。
「レオはこの後冒険者ギルドに行くと言ったが、もう明日の朝で大丈夫だろう。司祭様、教会直営の宿にレオを泊める事は可能か?」
「ええ、問題ありません。教会直営の宿は女性と幼い子どもの宿泊が可能ですので」
おお、サイオンさんがローラさんに確認して、僕の宿まで決まってしまったよ。
しかも教会に宿があるので、防犯上もとっても安全安心ですね。
「レオ君、セルカーク直轄地からの旅で疲れているだろうから、今日は屋敷に泊まっていくと良い」
「えー!」
「そうだね。父上の命を救ってくれたばかりか、この街の抱えていた大きな問題も解決に導いてくれるのだから、そのくらいはしないと駄目だね」
更に、僕はこの屋敷に泊まる事になってしまった。
何だかトントン拍子に、物事が決まっていくなあ。
話し合いはこれで終わりになり、解散となりました。
「じゃあレオ、また明日の朝な。冒険者ギルドで待っているぞ」
「私は夕方ですね。レオ君、教会で待っているわ」
「ガッシュさん、ローラさん、明日は宜しくお願いします」
僕は玄関で、サイオンさんとウィリアムさんと共にガッシュさんとローラさんを見送りました。
何だか朝から怒涛の流れだったけど、まだ昼食前なんだよね。
「さあ、食堂に向かおう。皆にもレオ君が泊まる事になったと知らせないといけないね」
僕はジョセフさんと手を繋ぎながら、サイオンさんとウィリアムさんの後をついていきます。
とにかく屋敷が広いので、誰かに連れて行って貰わないと絶対に迷子になりそうだよ。
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