第二話 僕が行商人に売られた理由
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
魔法が存在し様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動していました。
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けていました。
戦争を行う理由は様々ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れていました。
そして、そんなシェルフィード王国の片田舎に、僕レオが産まれました。
荒廃が進む田舎ですが、父親の両親がそこそこの遺産を残していたため、僕の父親と母親は働くことなく生活していました。
しかし、僕が産まれた事は両親にとっては予想外の事だったらしい。
元々両親は子どもを作ることを考えていなかったのだが、酔っぱらった父親が同じく酔っぱらった母親と情事を起こした事により僕が誕生した。
僕が誕生して以降、父親はアルコール依存症になってしまった。
母親も育児ノイローゼになり、僕が二歳の頃にはアルコールが手放せなくなった。
両親は日中もお酒を飲むようになり、一気にお金の浪費が激しくなった。
「お前が産まれたから俺達はおかしくなった」
両親は、僕に向かって暴力をふるいながらそんな事を度々口にしました。
僕は何で殴られなければならないのだろうかと、本当によく分かりませんでした。
僕は殴ってくる両親に向かって、ごめんなさいごめんなさいと繰り返し言っていました。
そして家の中は荒れ果てていく中、僕が四歳を迎える前に遂に父親の両親の資産が尽きてしまいました。
お酒を買えなくなり困ってしまった両親は、たまたま村に訪れていた行商人に僕を売ろうとしました。
この行商人は、シェルフィード王国で違法とされていた違法奴隷を扱っていました。
そして行商人は僕をジロジロと見るなり、両親の僕を売りたいという依頼を快諾しました。
後で馬車の中での行商人と護衛の話を聞いて分かったのだけど、僕はこの世界ではとても珍しい黒色の髪をしているそうです。
僕は今まで鏡などで自分の顔を見たことが無かったので、自分の髪がどんな色をしているかすら分からなかった。
でも、僕には何かを言う事はできないし何も言えない。
というか、殆ど何をいう間もなく色々と決まってしまった。
こうして、僕は絶望感に包まれたままあっという間に行商人に売られてしまったのだった。
僕は馬車の中から遠ざかっていく村の様子をぼんやりと眺めていたらしいけど、僕はその事をよく覚えていなかった。
そして、僕を乗せた馬車は街道を進んで行きました。
正直な所、僕は馬車に乗っている間もぼんやりとしか覚えていなかった。
これから僕はどうなっちゃうんだろうと、ずーっとぐるぐると考えていた。
ただ覚えていたのは、家で食べていたご飯よりもずっと美味しいご飯が出てきた事だった。
いつも僕は両親の食べ残しを与えられただけだったので、キチンと食事を食べていなかった。
因みに馬車の中で行商人と護衛が何かを話していたけど、僕には難しい話だったので理解できなかった。
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