第2話

高身長でガッチリした体格に、光沢のある黒のストライプスーツを着こなし、シューズまでピッカピカの輝き。

カッコいい。


ツーブロックにアシンメのアップバングをバックに流した黒髪は、少しウェービーで上品な男らしさ。

イケてる。


そして大人の色気オーラを発してるのに、清潔感があって爽やかさもかもし出している。

完成度高いっ!


それにクリッとした二重の目元は優しそうで、なにより若そう!?


七鳥小春なとりこはるさん!」

「は、は、は、は、は、はいっ!?」


一目で惚れ惚れさせられて、名指しされたら余計に緊張してガチガチになる。


完璧容姿イケメンは私の前まで歩み寄ると、抱えていた花束を私の胸元に捧げて、一段とにこやかに笑顔マシマシで首を下げた。


「誕生日おめでとうございます!」

「あ、ありがとう、ございます…」


おずおずと広げた私の両腕に、そっと花束が乗せられるとふわっと薔薇の香りがたち籠める。


途切れぎみだった呼吸の反動で、その甘く豊潤な匂いを大きなひと息で吸い込めば……


この夢のようなシチュエーションに、

深く心酔しそうになる。


だってこんなに近くで、こんなカッコイイ男、実写で見たことないっ!

しかも!!

28の誕生日を祝って花をくれるとか!?


直視するのが困難でパチクリする私の前で、

完璧容姿はハニカムようにかわいげな笑顔を送り続ける。


イケすぎて目がヤられそう。

私の推しにも引けを取らない神々しさ!!


―――――で、

これ何のイベント???


まさかの…

ドッキリ!? 誕生日ドッキリってやつ!?


えー、もー、ヤダァ。

誰よ?

こんなの仕掛けてきて〜。


じゃなきゃモデルみたいなこの美男、ずっと私に満面のスマイルで居続けるわけないし。


ほんとに嬉しそうにニコニコしてる、

ひたすらにね。


「あ、あの…」

「は、はいっ?」


口元を花束で隠してコソコソと話しかけた私に、モデルは真顔になって屈んで耳を傾けた。


「…どこにカメラ隠れてるんですか?」

「カメラ?」


「撮影してるんですよね?」

「…撮影?

 え?何のことですか?違いますよ」


「へっ!?

 フラッシュモブ的なサプライズでは!?」


自分の予想外れにビックリしちゃった私を見て、余計に笑顔を砕けさせてキラキラの顔面オーラを放ってくる。


「ふふっ。

 サプライズですが、個人的なものです」


照れながら何でか解らないけれど凄く喜んでいる、ふうに見える。

かわいすぎて困るんですけど……


いったい、この美男、誰なの!?


「すみません、どちら様で―――――」

「副社長!お時間です」


「「 !?!? 」」


私の疑問に被せてきたその渋い声に、

私達は同時にハッとした。

美男の背後から聞こえたので、上半身を傾けて大きな図体に隠れていた声主を見てみると……


あっ、

オールバックのベテラン風な男性が、前手組みで直立してこちらを睨んでいる。

美男に釘付けで全然気付かなかった。


おっかない顔の人だけど……

そちらも、誰?


副社長って呼んでた。

副社長? もしかして、ウチの副社長???

てことは……


千馬ちばくんなの!?

 違っ、千馬副社長ですか!?」

「はい!お久しぶりです、七鳥さん」


爽やかでとろけそうな笑顔全開。

目がくらむ……嘘でしょう?

私の知ってる千馬くんはこんな美男ではないのに???

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