第2章ー2
俺たちは「
―― ”首席”入学の泉と、”補欠”入学の俺。
この時点で、二人の差は歴然としており、その差が広がるのに比例するかのように、母の愛情の差もまた、大きく広がっていくように感じた。次々にコンクールに挑み、好成績を残していった泉は、ルックスの良さも相俟って大変な人気者となり、メディアからも注目され、テレビ出演することも多くなっていった。しかし、どんなに有名になろうとも、決して天狗になることはなく、毎日ストイックに練習に取り組み、真摯にピアノと向き合っていた。
俺は兄が羨ましかった。それと同時に、憎くて憎くてたまらなかった。もう決して埋まることのない、二人の差。母から貰い受ける”愛情”の差。いつからか、母の目に、全く自分の姿が映らなくなっていたことに気付いた俺は、愕然とし、ますます、ピアノが嫌いになっていった。
――『ねえ、泉くんと舜くんは、ピアノを弾かないの?』
あの言葉さえなければ……と、俺は、心の中で、まったく罪のないマリカお姉さんを何度も恨んだ。
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