第5話 仕事
結婚式から一週間
「宗二さん、宗二さん」
「ど、どうしましたか。そんなに慌てて」
ずっと気になっていたことを聞いてみることにした
「宗二さんは趣味で物語を書いていらっしゃるんですよね?」
「....はい。でもどこでそれを......?」
「お義父様が結婚式のときに話してくださいました」
「父が....ですか......」
どこか納得のいかないような顔をされる
なんとなく思っていたことだけれど、宗二さんはお義父様とあまり仲が良くないのだろうか?それとも過去に何かあったのだろうか
「物語を書くことは幼い頃から好きなんです。幼い頃からずっと鉛筆と紙さえあれば、暇も不満も感じない質だったもので」
「では幼い頃からずっと書いていたのですか!?」
「は、はい」
「すごいですね!!」
そう素直に言うと、そっぽを向かれてしまった
おかしな言い方でもしてしまったかな
「元々は本当にただの趣味だったんです........」
「?....元々?というのは......」
「ウメノにそれを仕事にしてみてはどうかと勧められて......小さな出版社の、その中でもあまり有名ではない雑誌なのですが、連載を持つことができたんです」
「すごいです、宗二さん!!」
「いえ、そんな......」
ということは、宗二さんは物書きさんなんだ。すごいなあ
あれ......ってことは
「出版社さんの方へ出向いたりはしないのですか?」
「僕が外に出ることが苦手なのを向こうも知っているので、月に何度かは担当の人がうちに来てくれるんです」
「そうなんですか」
月に何度か....今日は二月八日......
「あ、あの!今月、担当の方はいつ来られるのでしょうか!?」
「今月は確か......十日と二十日だったはずです。どちらも昼過ぎ......二時に来ると」
「明後日ですか!!?」
「はい」
これは宗二さんの仕事であって、本来ならば私は無関係だと分かっている
分かってはいるのだけど、宗二さんの妻としてその......なんと言うべきか....
相応しい?恥ずかしくない?
「だ、大丈夫ですか?仁子さん......仁子さん?」
私はどうすればいいのでしょうか、ウメノ姉さん
・
結局、何もできずに十日になってしまった
どうしよう......
いや敢えてここは何もせずにどっしりと構えているべき?
「御免下さい!!」
「ひゃい!!!」
驚いてそのまま玄関に行き、戸を開けてしまう
開けた先にいたのは背広姿の男性
宗二さんよりかなり年上?のように見えるけれど、それはおそらく目元の深い隈と眉間に寄ったくっきりとした皺のせいだろう
実際はもう少し若いか、宗二さんより少し上か........
「...........う」
「う......?」
「宗二が雇った使用人か?」
「え?」
使用人......?
「いや、彼奴はそんなことしないか。では君は本邸の方から来た奉公の子か?」
奉公......
「違うよ、
「そ、宗二さん......」
「は!?嫁ぇ!!?」
驚きのあまり、口が閉じられない様子の由昌?さん
「奥さんってお前、この子どう見ても12とかそこらだろ」
「じゅ、16です!!」
「それでも若いわ。31のおっさんに嫁ぐにしてはな......」
......何も言い返せない
「とりあえず、ここじゃ立ち話になっちゃうから。上がってよ、由昌」
「そうさせてもらうが、その前に少しいいか?お嬢さん」
「はい?」
お嬢さん....やっぱり妻には見えないんだ
「ちゃんとした自己紹介無しですまなかった。俺は此奴の担当の
「宗二さんの妻の館花仁子です」
宗二さんとの話し方を聞く限り、気心知れた仲というものなのでしょうか
お二人は何か小難しそうな話をしながら、宗二さんの部屋へ行ってしまった
あ!お茶とお茶菓子の準備をしなければ!!
続
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます