声劇台本 ブザービート

@arone

ブザービート

テーマは家族愛、兄弟愛です。

反抗期の高校生、明は家族が嫌いだった

姉の入院と共に自分に関心が向かなくなった両親が嫌いだった、だが、ある日の出来事…



登場人物

音無 明(おとなし あきら)

男、16歳、高校生、バスケ部。沙織の弟


音無 拓郎(おとなし たくろう)

男、45歳、会社員、明と沙織の父親


音無 芳子(おとなし よしこ)

女、48歳、パート、明と沙織の母親


音無 沙織(おとなし さおり)

女、21歳、大学生、裁縫部、明の姉


鳴神 一(なるかみ はじめ)

男、21歳、大学生、沙織の彼氏





0:家、リビング

卓郎:明、明日は沙織んとこ行こうか

明:え、無理

芳子:あーくん、最近お見舞い行ってないでしょ?たまにはお姉ちゃんに会いたくない?

卓郎:お母さんの言う通りだぞ、たまの休みくらい、沙織に顔見せてやったらどうだ?

明:いい

芳子:あのね、あーくん。お姉ちゃんは病気で大変なんだよ? 友達も少ないからきっと寂しがってると思うなぁ

明:しらないよ

卓郎:明!

明:うるさいなぁ!2人で行ってくればいいじゃん!どうせ俺のことなんてどうでもいいんだろ!?

明:いっつもお姉ちゃんお姉ちゃんって!俺の事なんてほっとけよ!

卓郎:そんなことはない!父さんと母さんは…

明:試合!

明:…最後に来たの、いつだよ。

芳子:あーくん、それはね…

明:いいよ!!、聞きたくない!

卓郎:明!待ちなさい!!

芳子:(被るように)あーくん!ちょっと!あーくん!?

卓郎:今は、そっとしておこう。

芳子:でも…

卓郎:…僕らが沙織の事ばかりになってしまっているのは本当の事だよ。

芳子:そう、ね。

卓郎:明日にでも、俺から話してみるよ。

芳子:ええ、お願い。

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0:翌日、午前9時

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芳子:お父さん、荷物持った?

卓郎:あぁ、新しい着替えと、歯磨き粉、あと電動歯ブラシと…うん、大丈夫だ

0:そこで明が降りてくる

卓郎:(喜んで)明!

芳子:あーくん!、行く気になったのね!朝ごはんは…

明:行かないよ、飯もいらない。

卓郎:そうか……明、昨日は悪かったな。

卓郎:でもな、お前に話さなきゃいけない事があるんだ、ちょっといいか?

明:知らねえよ!!!

芳子:ちょっ、あーくん!?

卓郎:明!待て!!大事なっ!

0:最後まで聞かずに家を出る明

0:途方に暮れる2人

芳子:…

卓郎:遅くなるし、もう行こうか。

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0:病院

卓郎:よし、着いたぞ!

芳子:運転お疲れ様、そうだ!受付の場所、変わったらしいの、私手続きしてくるからお父さん荷物持って先に行っててくれる?

卓郎:あぁ、分かった。

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0:沙織の病室をノックする一

沙織:はーい!、うーん。このノックは…はじくんでしょ!

一:あたりー!世界一幸せな男、鳴神一(なるかみはじめ)でーす!笑

沙織:もう笑、何言ってんの笑

一:いや本当の事だから笑

沙織:もう…馬鹿。

沙織:毎日毎日、よく飽きないよねはじくん。

一:え、何が?

沙織:お見舞い、よく毎日来てくれるよねって。こんなとこ、毎日来てもつまんないでしょ

一:いやいや、何言ってんの。俺彼氏だよ?

一:飽きる飽きないじゃなくて、沙織に会いたいから来てるんだよ。だめ?

沙織:そりゃあ、ダメなんて言えないけどさ…はじくん、最近はお仕事も休んでるんでしょ?流石に悪いよ。

一:いいんだ、本当に。  俺が好きでやってる事だからさ…

沙織:うん…

一:それよりさ、聞いてよ! 今日来る途中にね…

沙織:(被せて)はじくん。

一:え、なに?

沙織:あのね、聞いてほしい…話があるの。

一:うんうん、なんでもどうぞ。

沙織:私、ね。

一:…うん。

沙織:もう、だめかもしれないの。

一:え…

沙織:最近ね、身体が、上手く動かせないの…それに…

一:いやいや!、そんな訳ないって!! 沙織は…沙織は大丈夫だよ!!!、そんな、そんな事…言うなよ。。。

沙織:うん、ごめんね、はじくん。だから…

沙織:だから、私なんか忘れてさ、良い人…見つけてよ…

一:…は?

沙織:私より可愛くて、スタイルがよくて、健康で…裁縫が上手い人!、ね?

一:…やめろよ

沙織:はじくんはかっこよくて優しいから、きっとすぐに…

一:(被せて)やめろよッ!!!

沙織:………

一:なんなんだよ…いきなり!、もうだめとか良い人見つけてとか!、意味わかんないよ!

一:ふざけんなよ…俺たちの5年間はなんだったんだよ…ッ!

一:…!?

一:ごめん…

沙織:ううん!、私こそごめん!

沙織:そう…だよね、病気なんかに、負けちゃだめだよね…

一:うん、そうだよ。まったく…

一:はぁ…なんか喉渇いた、ジュース買ってくるけど、何かいる?

沙織:ううん、大丈夫。

一:そっか、じゃあ行ってくるね。

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明:(M)よっしゃ、目当てのゲームも買えたし、さっさと帰ろ!

卓郎:(M)たまの休みくらい、沙織に顔見せてやったらどうだ?

芳子:(M)友達も少ないから寂しがってると思うなぁ

明:…

明:……

明:………

明:(M)あー、くそっ!うるせえなぁ!

明:(M)様子見るだけ、一瞬見に行くだけ!

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明:(M)確か、こっちの道を行くと病院の裏に着くんだよな…

明:(M)うん、やっぱりだ

明:(M)受付は…いいか、めんどくせぇし

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明:確か姉さんの病室は…と、あったここだ。

0:病室をノックする明

沙織:はい、どうぞー!

明:…

卓郎:明!!来てくれたのか!

明:気が向いただけ…

沙織:それでも嬉しいよ、ありがとー!

卓郎:ほら、こっちおいで!

明:いいよ、こっちで

卓郎:何言ってんだまったく、恥ずかしいのか?

明:そんなんじゃない!うるさいなーもう

沙織:ふふふ、なんだか家に帰ったみたい。

卓郎:もうすぐ母さんも来るよ、そしたら久しぶりに家族が揃うな!

沙織:今日ははじくんも来てるんだよ、今は飲み物買いに行ってるけど。明にも会わせたいな

明:あー、姉ちゃんの彼氏ね…ほんと趣味わるいよね

沙織:うるさいなーもう、そうゆう明なんて彼女出来たことも無いじゃん

明:お、俺はバスケで忙しいんだよ!マジうるせえな…

明:ってか、なにその大荷物

卓郎:あぁ、沙織の着替えとか…歯ブラシとかだよ。

明:ふーん、え…待ってそっちに置いてるのって、俺のジャージ?

卓郎:あ、あぁ…

沙織:お母さんからね、明のジャージが穴あいてるって聞いたからさ…

沙織:直したくて…勝手にごめんね?

明:ちょっ…なんだよこれ! AKIRAって…だっさ!

明:はぁ、しかも縫い目もなんかほつれてるし。姉ちゃん腕落ちただろ?

卓郎:明、やめなさい! 沙織はな…

沙織:ううん、いいのお父さん。私が勝手にやってることだし。

明:なんなんだよ、ったく、マジやってらんねぇよ!

0:病室を出て行く明。

卓郎:まて、明!…はぁ。まったくあいつは。

沙織:いいの、下手になっちゃってるって自分でもわかってるし…

沙織:でも、悔しいなぁ、裁縫…得意だったのにな……(泣)っ!

卓郎:沙織…

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芳子:ええーっと、受付…受付は…あった!

芳子:こんにちわ~、…はい、…はい、音無沙織の母です。ありがとう…え、先生が?

芳子:えぇ、主人も来てますが…分かりました、行ってみますね。

芳子:(M)何かしら、先生が伝えたい事って…なんだか、嫌な予感がするわ。

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芳子:(ノック)あの、音無沙織の母ですが…

芳子:はい、失礼します…

芳子:えぇ、えぇ…

芳子:…はい。

芳子:えっ…いや、そんな…っ!

芳子:そんな事………っ!!!

芳子:えぇ、分かってます。私が、私達がしっかりしないと…

芳子:はい……はい、分かりました。

芳子:失礼します。

芳子:(M)沙織の所に行く前に、お化粧、直さないと…

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0:間

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一:えっと…自販機〜自販機は…と。あれ?

一:お母さん!、こんにちは!今日も沙織のお見舞いですか?

芳子:あら、はじめくん…

一:え、、、なにか…あったんですか?

芳子:はじめくん…私、どうしたら…っ!

一:あっ、えっと!とにかく、場所を変えましょうか!

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0:間

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一:ここなら…大丈夫かな。それで、何があったんですか?

芳子:ええ、はじめくん、心して聞いてね………

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0:間

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明:(M)クソっ!何で俺が怒られるんだよ…

明:(M)勝手にジャージ取られて直されて、しかも下手だしだせえし…はぁ、帰ってゲームしよ。

明:(M)あれ、この声、お母さ ん?…と、姉ちゃんの彼氏だ…何話してんだろ。

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芳子:はじめくん、心して聞いてね。

芳子:さっき、先生から聞いたんだけどね…

芳子:沙織は、、もう長くないかもしれないの…

一:…え。

芳子:もともと、珍しい病気で…今までも症状を遅らせる事しか出来なかったけど。

芳子:病気の進行が、思ってたより早かったみたいでね…

芳子:もう、立って歩くことも出来ないし、細かい作業なんかも出来ないだろうって。

一:そんな!!、そんなのって……

一:あぁ…ッ!!!

芳子:だからね、はじめくん、沙織のことは…忘れて…

一:(被せて)嫌ですよ!

一:沙織にも、同じこと言われました…

一:良い人見つけてねって…でもそんなの無理ですよ!

一:俺は、、、最後まで沙織と一緒に居たいです!

一:…最期まで…沙織の彼氏で居たいです。

一:大好きなんですっ!

芳子:分かった、分かったわ。

芳子:変な事言ってごめんなさい、私もどうかしてたわ。

芳子:じゃあ、戻りましょうか。

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0:間

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明:嘘…だろ…

明:いや嘘だろ?

明:こんなの、信じねえよ…

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明:そんなの聞いてない…

明:いや、違う…

明:俺が…聞かなかっただけ…

明:知ろうとしなかった…

明:姉ちゃんの事、気にも留めなかった…

明:細かい作業が出来ないって、じゃああの裁縫も…!?

明:俺、最悪だな…

明:…クソッ!

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0:翌日、明の部屋。

卓郎:明?起きてるか?

卓郎:なんだ、今日は早起きだな!

明:…

卓郎:父さんこれからスーパー行くけど、明も来ないか

明:…

卓郎:来たら好きなもん一つ買ってやるけど…

明:父さん。

卓郎:あぁ!、なんだ!?

明:前から言ってた、話したい事ってやつ、聞かせてよ。

卓郎:あぁ!、そうだな!そんな話、あったな!

明:…

卓郎:…あー

卓郎:そうだな…なにから話したものか…

卓郎:沙織の話なんだ。

卓郎:実は、な………

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0:間

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0:

明:…知ってたよ

明:昨日、病院でたまたま母さんと姉ちゃんの彼氏が話してるの聞いたんだ。

明:俺、病院で姉ちゃんに酷いこと言っちゃったよ…

明:父さんたちも話そうとしてくれてたのにさ。

卓郎:いいんだよ、今度は3人でお見舞い行こうな。

明:うん。

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0:卓郎の携帯が鳴る

卓郎:おっと、誰からだろ?…え、病院からだ。

卓郎:はい、もしもし?

卓郎:え、沙織が!?

卓郎:そんな!!すぐに行きます!!!

0:震える手で電話をきる

卓郎:沙織の容態が、悪くなったって…!

明:え…

卓郎:母さん!、母さん!!

0:

芳子:あなた!どうしたの!

卓郎:病院から、電話で…

卓郎:沙織が、危篤(きとく)だって…!

芳子:そんな!!!、すぐに行きましょ!

卓郎:あぁ畜生!なんでこんな!!

芳子:あなた!しっかりして!、運転できる!?

卓郎:あ、あぁ!、すまん!、行こうか。

明:俺も行く!

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0:間

0:沙織の病室

0:

一:沙織!ほらお母さん達来てくれたよ!

卓郎:沙織っ!

芳子:さおちゃん!

明:あ…あぁっ!

卓郎:沙織!沙織!おい聞こえるか、沙織!!

芳子:さおちゃん!、今ね、あーくんも来てるのよ!、ほらあーくんも声掛けて!

明:え、え…ねぇ、ちゃん…?姉ちゃん!

沙織:ん、ぅぅ…

卓郎:沙織!!

芳子:さおちゃん!さおちゃん!ここよ!ここにいるわ!!

明:姉ちゃん!ごめん、ごめん姉ちゃん!

明:俺、姉ちゃんの事なんも知らなかった!

明:姉ちゃんの病気のことも、姉ちゃんが俺のためにジャージ直してくれた事も…

明:このジャージ、すげえカッコいいよ!

明:見てよこの刺繍!流石姉ちゃんだよ!!ねぇ、姉ちゃん!!!

沙織:あ、あ…き、ら。

沙織:(明)

明:姉ちゃん!!!

沙織:ご、め…んね、おねぇ、ちゃ、ん。へた、く…そ、、で。

沙織:(ごめんね、お姉ちゃん下手くそで)

明:そんな事ない!僕こそごめんよ姉ちゃん!僕、姉ちゃんに酷いこと言った!!

沙織:う、うん、あ、き…ら、は、なーんも、わ…る、く、なぃ。

沙織:それ、は、わ、たし、が…す、きで、やっ、た、こと…だ、か、ら

沙織:(ううん、明はなーんも悪くない、それは私が好きでやった事だから)

明:いや、俺が馬鹿だったんだよ!俺、姉ちゃんがこんなに大変だったなんて知らなかった!、知ろうともしなかった!

明:俺、最低だよ…

沙織:あ、き…ら。それ、き、て…しあい、がん…ば、て

沙織:(明、それ着て試合頑張って)

明:うん…うん!!こんな格好いいジャージ、直ぐにみんなに自慢したいよ!

明:だからさ、姉ちゃんも試合、観にきてよ!

沙織:う、ん。いき、たい…なぁ。

沙織:(うん、行きたいなぁ)

卓郎:大丈夫だ!絶対連れてってやる!!

芳子:そうよ!、2人でお弁当も作って、それから…それ、から…

0:

0:

0:機械音

0:

0:

一:沙織…?

一:沙織!?、ダメだよ、行かないで!!

卓郎:沙織!!!

芳子:さおちゃん…っ!

明:(M)そこから先は目まぐるしく時間が過ぎていった。枕元のモニターから無機質な機械音が流れた

明:(M)ピー、というその音は嫌に耳に残り、永遠に聴こえ続けるようだった

明:

明:(M)慌ただしく動く医師達に部屋を出された僕たち、泣き崩れる母さん、それを抱きしめる父さん

明:(M)僕は、ただ呆然と立っているだけだった。

明:(M)ピー、と言う音は未だに聞こえてくるような感覚がして、意味もなく両耳を塞いでみたりしたけれど、音は止まなかった

明:

明:

明:

明:(M)姉ちゃんが、死んだ。

明:

明:(M)そのあとは呆気なく事が運んだ、お葬式とお通夜ではなぜか涙は出てこなかった

明:(M)母さんはずっと泣いてて、父さんはずっと忙しそうだった。

0:

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明:(M)それらが終わって、気がつけば僕はバスケの試合会場にいた

明:

明:(M)僕の試合は昼過ぎからで、お昼に父さんと母さんと、姉ちゃんの彼氏も来てた

明:

明:(M)試合が始まった

明:(M)始まると、身体が勝手に動く。

明:(M)何も考えずに居られるから、バスケは好きだ

明:(M)ドリブルして、パスして、シュート、なんて楽なスポーツなんだ。

明:

明:(M)気づけば試合終了の時間が迫っていた

明:(M)相手チームとは同点だった

明:(M)奇跡的なタイミングと連携で、上手く僕にパスが来た、何も考えずにシュートを決めた

明:

明:(M)その時、何故か姉さんの事を思い出した

明:(M)最期の瞬間、頭に残るあの嫌な音。ピーって音だ

明:(M)堪らず、また耳を塞ぐ。すると今度は音が止んだ

明:(M)遠くで、会場の歓声だけが聞こえる。

明:

明:(M)あぁ、今は試合中だった。

明:(M)結果は、僕らのチームが一点差で勝っていた。

明:

明:(M)それから、姉さんの声を聞いた気がしたんだ。

明:

明:

沙織:明!!おめでとう!!!

沙織:

明:えっ?

0:

0:

明:(泣)あぁもう、訳わかんねえよ…

明:

明:

明:

明:(M)袖口で涙を拭くと、刺繍から姉ちゃんの匂いがした、優しくて、時にはしかってくれて、裁縫が得意で…僕が服に穴をあけたりしたら直ぐに縫ってくれた、

明:(M)そんな姉ちゃんも、もう居ない。考えたらやっぱり涙が止まらなくて、姉ちゃんの匂いに包まれながら、いつまでも泣いた。

明:

明:姉ちゃん…

明:

明:

0:完

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