ウカツに使うと超危険! 華麗な論破があなたにもたらすデメリット!

「何かそういうデータあるんですか?」

「それってあなたの感想ですよね」


 テレビやyou tubeで相手の論理の穴を突き、華麗な論破を行い視聴者たちから喝さいを集めるお馴染み論破王ひろゆき氏。

 熊みたいなおっさん世代は「にちゃんねるの管理人とかやってたあらゆる面でグレーな人」ってなイメージが強いのですが、今の若い子の間ではそうではなく「知識人相手に一歩も引かずに論陣を張り、華麗に論破するディベート無双の芸能人」的なイメージが強いようです。

 そして彼を見て「こんなに議論が強いなら嫌な人に頭下げる必要もなさそう! 自分もこれくらい相手を論破できる力が欲しい!」と考える子も少なく無いそうな。


 熊もボケーっとyou tube眺めてると彼の動画がおすすめ欄に出てきて、見ることもあるわけですが、確かに彼の論破劇は見ててスカっとする物があります。

 歯切れよく論敵を笑い飛ばすのは、確かに見てて痛快です。

 喝采を浴びるのも、まあわかるなーとも思いました。

 が「これだけ論戦が強ければ相手に頭下げずに済む」という事は無いなともまた思いました。

 そもそも、何か問題の解決を図る際、相手に対する対抗手段に「論破」を用いるのは事態を悪化させることの方が多いです。

 今回は、その辺りの事について語っていきますので、どうぞ皆様、よろしくオナシャス!


 はてさて。

 まず論破とは何か。

 辞典には「議論して相手の説を打ち破る事」とあります。

 なるほどなるほど。

 確かに相手の主張する意見が間違いであると指摘し、認めさせる事が出来れば自分の方が立場的に上に立てるケースもあるかもしれません。

 が、それで何か事態を変えたり相手の考えを変えることが出来るかというと、そうはならない場合の方が大多数でしょう。


 というか、もしも相手の矛盾や論理の破綻を指摘して、論破することで相手の行動や言動に変化改善をもたらすことが出来るなら、世のお父さんお母さんはそこまで子育てに苦労しないはずです。


 少し自分たちの子供時代の事を思い出してください。


「もっと勉強しなさい」

「自分の部屋の片づけちゃんとやりなさい」

「休みだからって寝てばかりじゃダメでしょ」


 親からこんな感じの言葉は幾度となく聞かされ、つたない言葉で反論を試みるもコテンパンに言い負かされた経験は皆さんあるでしょう。


 で、お父さんお母さんに論破されて、言う事聞いて素直になりました?

 相変わらず宿題をやらず、勉強をさぼり、遅刻直前まで寝こけて布団もたたまずにドタバタしながら学校に向かう生活を続けてたんじゃないですか?

「おかーさんうるさい!」とか「お父さんの話聞きたくない!」とかいってダダこねながら。


 現実もそんなもんです。

 正論を言われたからといって人は変わりませんし、むしろ相手の態度を硬化させてしまう事の方がはるかに多いです。

 それは、実社会に出たとしても変わりません。

 

 例えばですが。

 上司に対して「あなたの仕事のやり方は間違っています」と批判する部下がいたとします。

 そして、上司のミスや失態をつらつらと並べ、上司の反論を華麗に退け論破をしてきたとします。

 さて、上司はこの部下をどうするでしょう。

「素晴らしい! 確かに君の言うとおりだ!」と褒め称えて人事評価を上げるでしょうか?

 それとも「うるせーんだよボケ! ゴチャゴチャ勝手な事ぬかしてねーでとっとと働け! 言う事聞かねーなら評価下げるか左遷すっぞ!」となるでしょうか。


 まー後者ですよね。

 もし仮に上司が「確かにコイツの言うとおりだ。俺の仕事のやり方は間違っていた。これからは俺自身も態度を改めよう」と部下の指摘により決意を新たにしたとしても「それはそれとして、コイツ邪魔だから次の配置換えで移籍させよう」となる可能性は結構高いです。

 つまり、何か問題の解決を図るための手段として「相手を論破する」という行為はあまり有効ではないのです。

 そのスキルが活きるのは「整合性や論理、自説の正しさを競うための場」であって、例えば「何か議題がはっきりと確定している社内ミーティング」であったり、後は学校の学級会であったりといった限定的な場です。

 それだって考え無しに相手を論破するだけではうまくいかないケースは多々ありますが。


 相手にこちらの提案を飲ませる方法や、改心を図る方法は「論破」以外にも沢山あります。

 自分が親の存在を「ありがたい」と思い「ちょっとは親孝行しなきゃな」と思ったときはどんな時ですか?

 親から論破された時ですか?

 それとも辛かったり落ち込んだりした時に手を差し伸べてくれた時ですか?


「この上司のために働こう」とか「この部下に報いてやろう」と人が思う時というのはどんな時でしょうか。

 上司が完膚無きまでに部下をボコボコに論破した時でしょうか。

 部下が上司に思いっきり反発した時でしょうか。

 それとも、雑談の場でポツリと「君には感謝している」という一言を上司から投げかけられた時でしょうか。

 無茶な注文にも泣き言一つ言わずについてきてくれた部下の背中を見た時でしょうか。


 人の心を動かしたい、相手の態度を変えたいと思うのなら、論理に頼るよりも、まず自分はどんな時に心を動かされ態度を変えたのかを考えてみた方が良いのでしょうね。


ウカツに使うと超危険! 華麗な論破があなたにもたらすデメリット!……END

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