毒キノコ「あれ、ボクまた何か殺っちゃいました?」

 どうも、熊ノ翁です。

 皆さん、毒を持つ生物と聞いて何を思い浮かべますか?


 獲物にかみつき、その鋭い牙から毒を流し込んで狩りをするハブやコブラといった毒蛇ですか?

 それとも、身に宿す猛毒で捕食者達に警告をする毒ガエルやフグといった生き物たちでしょうか。

 

 生物がなんの為に毒を持つのか。

 その理由は大体の場合、上で挙げた生き物たちのように毒を使って獲物を捕るためか、毒を使って身を守るためです。

 そのために毒蛇は鋭い牙と毒腺と発達させ、フグは特定のプランクトンを食べることで体内に猛毒のテトロドトキシンを貯め込むよう進化してきたわけです。


 ところがですね。

 自然界とはわからないものでして。

 いるんですよ。

 獲物を捕るためとか敵から身を守るためとか、特にそういうつもりはまったく無く、進化の過程でなんとなく毒を持っちゃったうっかりさんが!


 そう!

 それこそが、毒キノコの皆さんです!


「いやいやいや! 何の目的もなく毒持っちゃったとか、それは流石に無理あるやろ! あいつら今まで結構な数の人間ぶっ殺してきてるぞ! あれを特に理由とか無く、何となく殺ってたって言うのか!?」

 と思う方もいらっしゃる事でしょう。

 本日はこの「毒キノコ、何となく毒持っちゃっただけの天然さん説」について語っていきたいと思います。

 皆様、ご笑覧頂けましたらこれ幸い!


 まず、生物が毒を活用するとして、必要な事は一体何か。

 それは「即効性」です。

 たとえば毒を使って獲物を狩る場合、それは毒で相手を弱らせなければなりません。

 仮に毒蛇の噛んだ獲物に毒が効くのが半日後とかだった場合、せっかく毒を流し込んだ獲物に高確率で逃げられてしまう事でしょう。

 捕食者から身を守るために毒を持った生物もそれは同じです。

 

 たとえば1匹で大人十人余裕で殺せるほどの毒を持つ猛毒のヤドクガエル。

 もし彼らの毒が遅効性で、食べられてから数日後に症状が出るようなものだったなら、自分の食べたどれが毒を持っていたのかがわからず警告になりません。

 各種フグをはじめとする毒を持つ魚や陸の動物、植物たちもそれは同じです。

 毒の強弱はあれど、その毒を相手に警告の意味で使っている場合、基本即効性です。

 だってそうでなければ「俺たちは毒だから食べるな!」という警告が伝わらないわけで。

 なので、生物が狩りや警告として毒を使う場合、即効性は超重要事項なのです。


 では、それを踏まえたうえで我らが毒キノコさん達がどうなのかというと……

圧倒的に遅いんですよ。毒の回りが。

もちろん、食って即症状の現れる毒キノコもありますが、そうじゃないキノコも多いんですよね。



 有名どころで言えば、たとえばドクツルタケ。

 毒キノコ界の覇を競う、その強毒性と知名度共に抜群のカリスマ猛毒キノコで英名も「Destroying angel」と字面までイケメン。

 その「殺しの天使」という英名に違わず一本食ったら成人男性一人死ぬようなヤベー奴なわけですけどもな。

 中毒症状がこんな感じなんですよ。


摂食から6 - 24時間でコレラの様な症状(腹痛、嘔吐、下痢)が起こり、1日ほどで治まったかに見えるが、その約1週間後には肝臓や腎臓の組織が破壊され、劇症肝炎様の症状が現れる。早期に胃洗浄や血液透析などの適切な処置がなされない場合、肝性昏睡を起こして死に至る。また、運良く助かっても、重篤な後遺症が残ることが多い。

以上ウィキより引用。


 初期症状で考えるにしても6時間~24時間後ってさ。

 もうとっくに他のメシ食ってて何が原因で中毒したかなんて探さにゃ気づかんでしょ。

 しかも本格的な症状出るのは1週間後とか。

 こんなん病院あって医者のいる人間ならまだしも、野生生物がコイツに毒があるって特定すんのまあ難しいでしょ。

 このキノコ、ツルの名前が入ってる通り見た目も真っ白で、ヤドクガエルみたいな警戒色持ってるわけでもありませんしね。



 そんでもってお次に紹介するのは、毒キノコ愛好家なら知らぬ者はいないとされる、毒キノコ界イチ性格の悪い中毒症状を引き起こす性悪キノコなドクササコ!

 こいつは手足の指、くちびる、鼻、おち〇ち〇など、体の抹消部分が火傷にでもなったかのように大炎症を引き起こし食べたものに激痛を与えるという、ユニークかつ非常に悪質な中毒症状を持つ毒キノコなわけですがな。

 こいつも肝心の毒の症状が現れるのは食ってから24時間~1週間後なんすよ。


 いやだから気づかないって!

 キノコ食った翌朝のメシの目玉焼き食ってるときに症状出ても「うわマジかよこれ卵アレルギーか!?」とかあらぬ疑いを目玉焼きに抱くだけじゃん!



 そして極めつけに気づかない毒キノコとしてはコイツ!

 スギヒラタケ!


 この毒キノコ、あまりに潜伏期間が長く毒キノコであることが西暦2000年を超えるまで気づかれませんでした。

 てか食品として流通してました。

歯切れがよく、缶詰等に入れて各地のスーパーで販売され、味噌汁やけんちん汁の具にするとおいしいと評判だったそうです。

 中毒症状はwikiによるとこんな感じ。


意図しない筋肉の収縮や弛緩を繰り返す「振戦」や発音が正しく出来ない「構音障害」、下肢の麻痺を示す。その後、意識の混濁や昏睡などの様々な意識障害を起こし、回復までには1 - 2ヶ月程度を必要

以上、wikiより引用


 とまあ結構重いわけですが、注目すべきは潜伏期間でこれがなんと「2日から1年」ほどあります。

 1年て!

 そりゃわからんよ!

 むしろよく発見したわ!


 ちなみに発見の経緯は炭そ菌等のバイオテロ対策のため、感染症法が改正されたことを切っ掛けに急性脳炎発症者が出たら行政へ報告をする事になったわけですが。

 そこでどうも急性脳炎発症者がキノコシーズンにやたら増えてた事がわかり、そっからスギヒラタケの毒キノコ特定に至ったそうです。

 つまり、食った人たちそれまで誰も毒キノコだと気付くことなく、統計見て初めて「あれ? なんかこれ変じゃね?」と疑問を抱くに至ったというわけです。



 はてさて。

 こんな毒キノコさん達なわけですが、食ってから症状出るのが翌日だの一週間後だの果ては一年後だのといった有り様で、いったいどこの誰に警告が出来るというのでしょう。

 つーかスギヒラタケとかスーパーで売られる始末ですし。

 警告の意味皆無!


 なので、毒キノコが何故毒を持ったかについてはこんな説が言われていたりするようです。


「毒キノコは別に捕食生物に食べられないよう自衛のために毒を持ったというのではなく、そんなん全く関係なくゴーイングマイウェイに進化してたら、なんかたまたま毒の体になっていたのではないか」


 毒キノコ「あれ、ボクまた何か殺っちゃいました?」……END




 追記。

 ちなみにですが、調べてたら「キノコは動植物の死骸を分解することで栄養を得る生物なので、毒キノコは遅効性でも毒を生物に与えて死に近づけて獲物の生存率を下げるという方法を取っているのだ」という意見があったり。

 なるほどなーと思う反面、それならやっぱりその場で仕留めないと、遠く離れた場所で苗床になられても自分の生殖にはまったく有利に働かんわけでちょっと考えづらいかもなーと思ったり。


 こんどこそEND



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