第6話 日常
休み時間、今日も上位カーストが騒いている。中心にいるのは勿論、ミチルさんだ。
いいなー学校が楽しくて……。
陰キャラの私はラノベにカバーをかけて読むのであった。
「おや、お困りのようで」
後ろから山水美琴から話かけられる。
「お前は隣のクラスだろうに、この短時間に何用だ?」
「えへへへ、私も沙月原君のことが好きでね」
ああああ、何度も聞いたセリフだ。今更、本気にできないのである。
「その表情は本気にしていないな」
「当たり前だ、普段の行いが悪い」
「てへ、もう夫婦同然ですもの」
しかし、山水美琴の見た目は可愛い系なので黙っていれば恋人にしたいと思う人も多いはずだ。
「ギャルのミチルさんなど諦めて我恋人になるといい」
そのセリフは世界の半分を貰うから和平を結ぶ選択に近い。絶対、その選択肢を選ぶと宿屋で夢落ちだ。
「時間だ、自分教室に帰れ!」
「へいへい」
頭をポリポリかきながら帰る山水美琴の見た目は可憐であった。
***
放課後。
私が文芸部に行くと、そこは修羅場であった。半袖にハーフパンツの体操服姿のミキティに山水美琴とミチルさん達であった。
「体育祭の部活対抗の女子騎馬戦で誰が上に乗るかもめてね」
ミキティが疲れた表情で私に泣きつく。どうやら、ミキティが上になりたくて仕方がないらしい。
「部長である私が当然上よね?」
うむ、同意を求められても困る。
「何故、ミキティが上だとダメなのだ?」
山水美琴に聞くと。
「体重が一番重いのよ」
それは不満が出ても仕方がないな。では、ミチルさんが良いかと聞かれたら二人は反対なのである。
「こんな、目立つギャルが上だと速攻で狙われる」
と、山水美琴が異議を唱える。
結果、山水美琴が良いかと言うと。文芸部の恥じを上に出来ないと二人が異議を言うのであった。
まさに三すくみである。
さて、結論も出ない事だし帰るか……。私が逃げようとすると。
『沙月原が決めてよ』
難題を三人が声を揃えて言う。
ああああああ……迷った結果。
「ここはバストのサイズが一番小さい残念な女子が上になればいい」
「了解した。それなら恨みっこなしだ」
ミキティ達が納得する。
「ここは女子更衣室で正確に測りましょう」
山水美琴の言葉に皆は同意すると三人で女子更衣室に向かう。
そして……。
ミキティが上になった。体重が一番重いのにバストのサイズは一番小さいと言うのだ。残念な女子を上にと決めたのだ、こんな予感はしていた。
***
昼休みに教室を抜け出て、部室の中でまったりである。
『ゴゴゴ』
突然の豪雨が降り出す。最近はゲリラ豪雨が多いなと思い。ミキティと世間話をしていると。
「あー降られた。降られた」
ミチルさんがずぶ濡れになって入ってくる。この部室棟は校舎から少し離れているので油断をすると濡れるのだ。
あー濡れたブラウスはエロかった。しかし、ここは紳士にならねば。
「はい、タオルです」
私はスクールバックの中からタオルを取り出す。
「ありがと!」
渡したタオルでミチルさんが顔を拭いていると。
「幸せ……沙月原君の匂いがする」
顔を赤くするミチルさんは恋する少女であった。これは照れるな。まるでバカップルだ。
「お嬢さん、このジャージでもっと幸せになるといい」
不意にミキティがジャージを取り出す。
「はい、奥の部屋で着替えます」
そして、着替えたミチルさんはジャージを着てもギャルオーラは消えず。コスプレに近かった。
すると、ミキティがスマホを取り出してジャージ姿のミチルさんを撮影する。
「エロいのー、エロいのー」
相変わらずミキティの性癖は不明である。私が小首を傾げていると。
「沙月原も入るといい」
「は?」
「勿論、裸で」
このミキティの考える事は不明である。このまま暴走しては不味い。この辺で止めなければ。
「ミキティ、お手!」
「アウーン」
ミキティの動きが止まり私に近づくと頭の上に手を乗せる。私の考えた斜め上を行くミキティにはかなわないなと思うのであった。色々諦めた結果、ミキティの暴走は止まる。
「あ!晴れてきた。これなら午後の授業を受けているうちに制服が渇くわ」
ミチルさんの言葉と共に部室の窓から光が差し込み、天候が回復したのを告げる。
さて、教室に戻るか。そんな日常であった。
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