第2話 文芸部にて

 翌日。


 私は文芸部の部室でパイプ椅子に座り。ラノベを読んでいた。すると、ノック音と共にミチルさんが入ってくる。マジか!確かに文芸部に誘ったがホントに来てくれた。


「あ、ぁ、あのー……」


 モジモジした様子のミチルさんは高校生なのにぴっちりメイクされていた。恰好はギャルそのモノであった。


「貴女だれ?」


 部長のミキティこと美鬼煮先輩が応対する。


「先輩、私の知り合いです。たぶん、入部希望者かと」


 私が二人に近づくとミキティに説明する。


「沙月原の知り合い?オタなのか?」

「まあ……」


 私がミキティの問いに答えをにごしていると。


「はい、オタの友達が欲しいので入部希望です」


 ミチルさんはモジモジモードから一変して。ミキティの目を見て返事を言う。ハッキリしているな……性格はやはりギャルなのか。


 さて、ラノベの読書に戻るか。私は再びパイプ椅子に座り。文庫本を広げる。


「あれれれれ、沙月原君は新入部員の事が好きじゃないの?」


 同じ文芸部の部員の『山水美琴』が私に絡んでくる。口調がコ〇ン君である。


 決して名探偵ではなく。ただの迷惑ガールなのである。


「一回、死んでみるか、この迷惑ガールが」

「はいはい、好きなのは私なのね」


 ダメだ、こいつ、ここはミチルさんと仲がいいことを知らしめよう。私は渋々、ミチルさんにパイプ椅子を用意して本棚からBL本を渡す。


「これって、BL本じゃないですか!!!」

「はて、女子はBLが嫌いな人はいないと聞いたが?」

「私は健全なオタです」


 ミチルさんは顔を赤くしている。


 すると……。


「見た目は綾波〇イ、頭脳はガチオタ、その名は『山水 美琴』!!!」


 横から山水が割って話しに入ってくる。しかし、いい加減、怒られるぞ。


「楽しい人達、やはりオタをカミングアウトしてよかったわ」


 ミチルさんが笑顔になる。


 教室での上位カーストのミチルさんには見られない笑顔であった。


「それで、文芸部の入部条件だけど、国立大学入試の国語のテストを受けてもらうわ」


 部長のミキティが今思いつた様に話し始める。絶対、即興で思い付いたことだ。


「今、適当に国立大学の過去問を持ってくるわね」


 廊下に置いてある赤本を取りにミキティは部室を出る。私は部長のミキティの気まぐれに首を傾げる。


 やがて、赤本を手にしたミキティが帰ってくる。それから、過去問が出題されてミチルさんはテストを受ける事になる。


……。


 回答時間が終わるとミキティが採点する。結果は60点であった。ミキティの顔が歪む。


「中途半端な点数ね、アホキャラでもないし、それでいて満点の天才キャラでもない」


 ミキティはしばしの長考の後でスクールバックからサイコロを取り出す。


「このサイコロで決めましょう」


 は!?


 このミキティは何を言う。国立大学の入試で60点なら十分だろ。


「入部条件は一のゾロ目よ」


 私が口を出そうとすると。


「ルールブックは私だ、この部活の部長である私が決める事に異議は認めない」


 まさに恐怖政治だ、こんな部活辞めてやる。私がそんな事を思っているとミキティはサイコロを振る。


 出た目は一のゾロ目であった。


 ふ~う、何とかミチルさんの入部が決まった。これなら部活を辞めないですむ。


「ちなみにこのサイコロはグラサイよ」


 イカサマで一のゾロ目を出したのか。このツンデレ部長が!と、心の中で思うであった。

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