隠れオタのギャルとアニメショップへ向かうビルのエレベーターに二人で閉じ込められた。これは恋の予感か?

霜花 桔梗

第1話 ギャルとエレベーターに閉じ込められて

 私の名前は『沙月原 薫』クラスでも有名な陰キャラでオタ男子である。部活の所属は文芸部、と、言ってもラノベを読むのが目的だ。


 今日は休日、久しぶりに総合オタショップの『アニメ一番』に足を運ぶ。


 『アニメ一番』はこの街の繁華街の地味なビルの四階に入っている。


 私がエレベータに乗ると女子が駆け込んでくる。


 おや?


この女子、クラスの上位カーストに所属する『立花 ミチル』だ。その恰好は制服にリックサックにサン〇オキャラがぶら下がっていた。多分、この恰好はギャルになかに入るのかと観察する。


「あ、ミチルさん、何階ですか?」

「四階……」


 アニメ一番の入っているフロワーだ。これは見てはならないモノを見てしまったのか?

 

 気まずい空気が流れると。突然、エレベータが途中で止まり非常灯がつく。


「え?なになに!!!」


 驚くミチルさんだが、私は冷静にスマホを取り出して。エレベータ停止の理由を探す。近所でクレーン車が倒れて電線を切ったらしい。


 これなら直ぐにエレベータから出られる。


 しかし、二人でエレベータの中に閉じ込められている時間は長く感じる。


 ああああ、つり橋効果とか言ってミチルさんの心が動いたりして。


 などと、楽観的考えていると。


 ミチルさんが震えだす。この人、本気で怖がっている。


「大丈夫、直ぐに停電が解消されてエレベータは動き出すよ」

「ホント?」


 ミチルさんは上目づかいで問うてくる。ここは男としてカッコいい男子を演じなければ。


 私は後ろ体重でポーズをきめていると。


「なにしているの?」

「いや、カッコいい男子なら落ち着いて苦難を乗り切ると思って」

「ぷっ、変なの、でも、その気持ちで少し落ち着いたわ」


 笑顔の戻ったミチルさんは少し伸びた八重歯が印象的で、ギャルの属性に似合っていた。


 しかし、ギャルか……。


 隠れオタとは言え、私には関係ないな。そんな風に考えていると。


「今期のアニメの一番は『ゲキユリ』よね」


 話題に上ったのは『激・百合物語』の話であった。説明すると、女子劇団員が変身して悪と戦う物語である。コアなオタ向けのアニメである。


「なら、文芸部に入らないか?あの部活は隠れオタの巣窟だぞ」

「へー、考えておく」


 それからは、オタ談義に花が咲き。やがて、エレベータが動き出す。


 魔法の時間は解かれたギャルのミチルさんとはここでお別れだ。

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