第3話 初仕事
「あ、居ました!あの人です!」
「ほほう……確かに7日って書いてるね」
丁度教室に残っている友達らしき生徒にまたね〜と手を振って1人廊下に出た所だった。
「もう言っちゃえばいいんですかね?ちょうど1人ですし」
「いやその前に……あの子の名前を知っといた方が良いね、急に余命宣告されても怪しまれるだけだし」
多分名前知ってても怪しまれるのは変わらないとは思うが、確かに名前くらいは知っといた方がいいだろう。
「じゃあ……もかみ君、さっきまでターゲットと話してた教室の女子生徒に上手い感じに名前を聞いてくるんだよ!私は人見知りだからここで待ってるね!」
そんな自信満々に言われさっきまで話していた女子生徒に話しかける。
「あの、ちょっといい?こんな感じの茶髪のツインテールの生徒知らない?ちょっと用があるんだけど別クラスで名前が分からなくてさ」
「……ん?あーそれ瑠璃かな『
「分かった、ありがとう!」
廊下からコソコソと覗く先輩の元へと戻る。
「『大神瑠璃』だそうです、急いで追いかけましょう」
「流石は私の後輩だね、もかみ君!」
……先輩、人見知りとか言ってたけど俺とは普通に話してるし経験を積ませたいだけなのか?そんなことを考えつつ後を追った。
「居ました」
そんなに時間も経っていない為、昇降口で大神瑠璃を発見。
「歩いて帰るみたいだし、1人になるまで待とうか」
「なんか悪いことしてる気分ですね……」
見つからない程度の距離感で隠れつつ彼女を追う。
「あ、なんか泣いてる子供に話しかけてますね」
「迷子かな……手を繋いで一緒に歩き始めた、行こう」
それから十分後。
「お母さん見つかってよかったね」
「ですね。あ、でも今度は横断歩道を渡ろうとしてるおばあちゃんと話してます」
その後も……コンタクトを落として探している女性と一緒に探したり、自転車置き場でまとめて倒してしまった男性の手伝いをしたり。
「……なんていうかさ」
「はい、人助けしまくってますね……」
そういえば俺が目を覚ました時も直接声をかけてくれたのは彼女だけだったな。ザ・善人って感じの人。たった1時間ほどしか経っていないが彼女がこれから死んでしまうのは……少し嫌だなと思った。
「あの、何してるんですか?」
「「え!?」」
考え事をしていると……彼女がいつのまにか目の前に居た。
「な、何?私達はただ2人で仲良く帰ってるだけなんだよ〜。ね、もかみ君?」
鹿島先輩が下手くそなウインクで話に乗っかって!と合図する。俺も出来るだけ普通に見えるように話し始める。
「はい、そうですね。こっちこそ急に話しかけられてびっくりしたといいますか」
「同じ学校……あ!あんた朝の時の……!」
「え?あ……」
まずい、そういえば朝悪い印象を与えたままだった。
「何してんの……?とりあえずそこのベンチに座りなさい」
「「はい……」」
情けない死神2人の声が綺麗な空に
「……瑠璃さんは1週間後に死んでしまいます。悔いの無いように過ごして下さい」
「瑠璃でいいわよ……それで?そんなバカげた話を信じろっての?」
ある程度自己紹介や説明を済ませた後
「悪いけどそうなるな」
「……なんなのよあんたら。意味不明だって、目的とか」
そりゃこうなる、というか瑠璃はちゃんと話聞いてくれてる方だ。なんか証拠になるものとか無いんですか?と鹿島先輩に耳打ちする。
「ち、近いんだよーもかみ君。そういうのは2人きりの時だけに〜」
「ふざけてる場合じゃないです、なにか信じてもらう方法ありますか?」
「私は死神の格好してたよ、もかみ君にも勧めた方良かったね」
「あんな格好してたら余計怪しまれますよ……」
そんな俺達の姿を見てはぁ、とため息をついた後瑠璃は口を開いた。
「鹿島先輩と未来……だっけ?信じる信じないは置いといて話を進めるけど、私が1週間後に死ぬとしてどうやったら助かるのよ、それを教えてくれるんでしょ?」
その質問に対し俺はつい言葉が詰まってしまう。そんな姿を見て瑠璃は何かを察した。
「え?何、もしかして私助からないの?」
「……ごめん、助からない。その日に死ぬって運命で決まってるんだ。瑠璃がいくら頑張って回避しようとしても、また何か別の事で死んでしまう」
「瑠璃ちゃんが残りの1週間、悔いの残らないように出来る限りのお手伝いをして最後を見届けるのが私達のお仕事なんだよ」
「……ふーん。助かる方法も無いなら、いっそ知らない方が苦しまなくてすむんじゃないの?」
「そうかもな、そもそも俺も信じてなかったし……でも、俺は死んでから後悔したよ。やりたいこと見つけたかったなって」
瑠璃の言葉も俺の言葉も間違いじゃないと思う。人によっては死神側の意見の押しつけ……なんだろうか。
「……え、アンタ達も1回死んでんの?ならなんで……死神?として生きてんのよ」
「それは生まれ変わって───────」
「もかみ君」
鹿島先輩に強い声で止められる。
「ごめんね、後で詳しく話してあげるから。今はその事話しちゃダメ」
「……?」
そんな会話が聞こえていたのかは分からないが瑠璃は不思議そうにこちらを見ていた。
「……んーごめんよく分かんないわ。とりあえずさ何かやりたいことあったら相談しに行く、これじゃダメ?」
「いや、それで大丈夫だ。気軽に何でも言ってくれ。これ連絡先」
ん、と連絡先を交換し瑠璃は家に帰って行った。
シニガミミライ アマオト @Colagumi
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