第1章
第2話 うぇるかむとぅオカルト研究部!
「ここだな」
オカルト研究部部室、そう書かれたペラペラの紙1枚が扉には貼られていた。音楽室近くで階段の下にあるこの部室は吹奏楽部の練習の音は近くで聴こえるだろうし天井も狭そうで……なんというか他に場所は無かったのかなと思った。
「失礼しま……」
「ようこそ!!オカルト研究部へ〜〜〜!!!」
パーーーン!!!
……何これ、クラッカー?音の発生した方向、右下を向くと鹿島先輩が居た。どう?どう?と反応待ちな所悪いが俺も今すぐにどうにかして欲しい事がある。
「すみません、聞きたいことが沢山あるのでまずは座ってください」
「えへへ、へへ……え?あ、うん……そうだよね……ごめん」
パーティとかで使うヒゲメガネを残念そうに取りながら鹿島先輩は座った。対面の椅子に俺も座る。
「聞きたいこと何個かあるんですけど……とりあえずこの目どうにかなりませんか?」
「目?あーなるほど」
人、いや犬とかもだったかな。生き物の頭の上に浮かぶこの数字……朝目覚めた時からずっとこのままで授業とか全く集中出来なかった。
「なんていうか、スイッチを切る感じだよ」
「スイッチ、ですか……やってみます」
そんな簡単に出来るのかと目を瞑り、深呼吸。心を落ち着かせて……ゆっくりと目を開ける。
「私は死神だから、音楽室の生徒見て来たら分かると思うよ」
言われるがまま音楽室を覗く……おお、見えなくなってる!やってみるもんだな!やったぞ!良かった……。
「鹿島先輩!やりました、直りました!!!」
「そ、そっか……ほんとに辛かったんだね。教えるの遅くなってごめんなんだよ」
もしかして一生このままなのかと覚悟をしてから来たので本当に良かった。
「じゃあ安心出来た所で色々説明しよっか」
「はい」
「説明の前にまず……もかみ君は
「キサラさん……あーサインの時の人ですね。いや、これから寝るから鹿島先輩に詳しい事は聞けって」
「なら全部だね、まず死神のお仕事についてだけど……これは説明した通り、死んじゃう1週間くらい前に死んじゃいますよーって教えてあげて、その後最後まで見届ける。見届けるって言うのはあの世に魂が行くまでね」
教えるだけでは無く最後まで見届けるのか。
「なんか1ヶ月のノルマとかなんとか言われたんですけど……」
「ノルマって言っても1ヶ月に1人を目標にすれば基本問題無いよ!……それと、はいこれ」
「なんですかこれ、瓶?」
小さな瓶を渡される。
「死神としてお仕事を完了すると瓶の中に液体が貯まっていくの。満タンまで溜まると『願い』が叶うんだよ」
「願い……何でもですか?」
「んー……正確には叶えられない願いもあるよ。お金持ちになりたいは可能だけど、不老不死とかはダメみたいな。細かい事は叶える前に社長……木更さんに直接確認を取るって感じだね」
ほんとに社長って呼ばれてるんだ……というより中々すごいこと言われてるぞ?
「それはなんというか『破格』ですね」
「そのくらい貯まるまで時間もかかるし、お仕事頑張って何も無しだと文句も出ちゃうからね。それこそ『人間に戻りたい』とかでも叶うよ?」
「なるほど……」
それが可能ならノルマに怯えなくて済むわけだ。当然死神としての力も消えるだろうけど。何か考えとくか……。
「……あの、純粋な疑問なんですけどこの日に死にますって教えられたら回避出来ちゃいません?そうやって寿命を伸ばしてあげることも仕事なんですか?」
そう言うと鹿島先輩は少しだけ悲しそうな顔をした。
「ううん、違うよ。命って言うのはこの世に生まれた瞬間からいつ死ぬか決まってるんだよ。その日交通事故で死ぬ運命の人が家に閉じこもっても何か別の事が起きて死んじゃう……やるせないけれど、それが運命なんだよ」
……だったら俺みたいに皆死神になればと思ったが、そんな簡単な話では無いのかな。人手が足りないとは言っていたが有限なんだろうか。
「それでもその人に残りの寿命を悔いなく生きてもらう為私達はお仕事するんだよ。そりゃ願いを叶える為にやってる人もいるけど立派なお仕事だよ!」
元気な声で鹿嶋先輩は話を進める。
「それとさっきの目の話、それは『死神の目』と言ってその人の寿命を見ることが出来るんだよ」
「やっぱりアレ寿命だったんですね」
と言うことは……やはり。
「鹿島先輩、寿命が『7日』の女の子がいました。しかもこの学校に」
「……7日?」
鹿島先輩は俺の言葉に何か引っかかった様で少し考える。
「どうかしましたか?」
「いや高校生でそれは珍しいなって思ったんだよ。ごめんね、それだけ!よし、じゃあ早速初仕事と行こうかもかみ君!」
「はい、分かりました。鹿島先輩」
本当はもう1つ聞きたいことがあったのだが……鹿島先輩の事だ。先輩は何故死神をやっているのか、俺と同じ様に1度死んでしまった後死神として生き返ったのか。
「……?まだ気になる事でもある?」
不思議そうに顔を覗き込む先輩。まぁ……いつか教えて貰おう、今はあの女子生徒だ。
「いえ、大丈夫です。ネクタイの色が俺と同じだったので同学年のはずです。まだ残ってるか分かりませんが教室に行ってみましょう」
「了解、じゃあ先輩に着いてくるんだよ!はい!」
「……?はい」
手を差し出す鹿島先輩に対し俺はタダで手伝うわけないでしょという意味で受け取り、まぁ色々教えてもらったしなと2000円を手渡した。
「え!?何で!?」
「え……足りませんか?すみません今持ち合わせが無くて……」
「違うんだよ!私そんな先輩に見えてたの!?迷わないように手でも繋いで行こうって意味だよ!」
それはそれで意味が分からないんだけど……とりあえずそんな簡単に異性と手を繋ごうとしない方が良いですよとだけ忠告し、1年生の教室へと向かう。後ろから「やっちまったんだよ……引かれた……」と呟く声が聞こえた。
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