シニガミミライ

アマオト

プロローグ

第1話 三鴨未来:リブート

「突然ですが君は明日死んでしまいます。悔いの無いように過ごして下さい」


 放課後、学校の下駄箱に小さな手紙を発見し書かれていた公園に来ると余命宣告をされた。しかも余命1日。俺、三鴨未来みかもみらいに今起こった事を簡単にまとめるとこうなる。


「……あの、鹿島先輩ですよね?何してるんですか?」


「え!?な、なんで……ち、違うよ!知らないんだよ、そんな人!」


「その割に慌ててますけど」


 鹿島篝かしまかがり、高校2年生の背の小さな先輩……なのだが、俺と先輩に面識は無い。入る部活を探している際にオカルト研究部という珍しい部活を見つけ、その部員の名前が『篝』という珍しい名前だったので覚えていた。


「と、とにかくもかみ君!」


「みかもです」


 鹿島先輩はこほん……と咳払いの後、息を一つ吐いた。


「改めまして……私は『死神』。もかみ君は明日死んじゃうから悔いを残さないでって事を言いたいんだよ!」


 名前は間違えたままなんだ。それはともかくこの状況、いたずらのつもりなんだろうか。せっかくなので話にのってみることにした。


「普通もっと前に言いません?もう夕方ですし、今日もあと少ししか無いですし悔いの無いようにとか言われても困りますよ」


「うっ……」


「それと公園でそんな格好で恥ずかしくないんですか?僕達初対面ですよね?」


 鹿島先輩は死神のコスプレみたいな格好をしている。俺を待っている間公園でずっとこの姿でいたのだろうか。


「う、うぅ……うわあああああん!!!」


 突然大きな声を上げ鹿島先輩は逃げて行った。自分の状況に恥ずかしくなったのだろう。これでいたずらには懲りたと思う、うん今日もいい事した。帰って早めに寝よう。




「ふわ……」


 ちゅんちゅんと雀の声で目が覚める、とても気持ちのいい目覚めだ。10分ほどしてリビングへ向かい、いつもの椅子に腰かける。

 パンをかじりながら昨日の事を思い出す。鹿島先輩は『死神』……とか言ってたな。何度考えても意味不明である。やべぇ人なのかな……あんま考えないようにしよう。


「いってきまーす」


 学校まで徒歩10分ほどの時間を使い歩きながら考え事をするのが俺の毎日のルーティンだ。高校に入学し早1ヶ月。そろそろ入る部活を決めなければいけない。

 自分で言うのもあれだが俺は何でも割と出来て、勉強も運動も得意な方だ。だから運動部で汗水を垂らし青春を過ごすのも憧れるし、文化部で趣味の合う友達と仲良く過ごすのも良い。

 だが俺は今日までの人生で1つの事を頑張った経験が無い。なので毎日何か面白い事は無いかと探しているのだ。今日はどうしようか、運動部の見学にあれ痛い






「え」


 突然目の前の景色が真っ暗に変わった。周りを見渡しても何も見えない。手を握る……腕が無い。足も……体も何も、無い。


「やあ、昨日ぶりだねもかみ君。どう?悔いの無い1日を過ごせた?」


「鹿島先輩」


 鹿島先輩が目の前に現れて、俺は1つの推理が頭に浮かぶ。


「もしかして俺、本当に死んだ……って事ですか?」


「うんそうだよ。大型トラックに轢かれて死んじゃったみたいだね、痛みとか大丈夫だった?」


「いや、考え事してたのでよく分からないまま死んじゃったかも」


「あちゃーなんだよ。その様子だと私の言った事やっぱり信じて無かったでしょ、全く……」


 そりゃ信じれない話でしょと言いたかったがそれどころでは無い。


「そうですか、死んだんですね……俺」


 死神とか信じてなかったけど、こんな近くにいたんだな。そんな不思議な事……沢山知りたかった。何も成せず、家族に別れも言えず……あっけないな。


「あ、あー……それでね、もかみ君。こんな時に私の話を落ち着いて聞ける状況じゃないとは思うんだけどね。ちょっとね……がありまして」


「手違い?」


 なんだか鹿島先輩が目を逸らしていて気まずそうに見えた。


「……本当はね、もかみ君の言う通り大体1週間くらい前に死神が死んじゃうよーって言いに行くんだよね」


「でも俺は昨日……」


「そ、そうなんだよー……実は死神も人材不足でさ、人手が足りないんだよ。それでもかみ君は死んじゃう前日になっちゃって」


「なるほど……まぁ、しょうがないですよ。昨日のはからかって遊んでただけなので」


 え!?からかってたの!?という言葉を聞き流しながら考える。なんか、人間界と同じ感じなんだな……世知辛い世の中は人だけじゃ無いんだ。


「それでね……まだ未練とか、無い?」


「そりゃまぁありますけど……」


 そっかそっかー!そうだよねー!と鹿島先輩はなんだか大袈裟に頷く。






「もかみ君さ『死神』にならない?」






「​​───────え」


「お仕事はとーっても簡単で死んじゃう1週間くらい前に死んじゃうよって伝えるだけ、それに死神になればまた現世で生活出来るよ!さっきも言った通り猫の手も借りたいくらい人手、いや死神手?が足りなくて……お願い!」


「そんな誰でもなれるものなんですか?」


「まぁ誰でも……というか?えーっとね……えっと、そう!今回なら私だけど、死神の推薦があれば基本的にはなれるんだよ!」


 願っても無い事なのだが、本当にそんな誰でもなれるものなのか?人手不足とは言っていたけど。なんか鹿島先輩の言い方も怪しいし。

 でも……正直ワクワクしていた。『死神』という非現実的な存在になってする仕事というのには興味がある。


「分かりました、やります」


「ほんと!?」


 わー嬉しいよー!と鹿島先輩は全身で表現をする。


「じゃあ続きは学校で話そう、1階の音楽室の近くの階段下の部屋分かる?一応部室なんだけど……」


「はい、分かります」


「じゃあ放課後にそこに来て欲しいんだよ!あ、そろそろ時間か……それじゃあ……目が覚めたら……よろしく……ね、もかみ君……」


 声が、意識が少しづつ途切れて遠くなり……光が見えた。






「おはよう、君がミライ君ねー。カガリちゃんから話は聞いてるよー。私は『キサラ』、キサラさんって呼んでね。はいここにサインしたら死神になれるよ」


「え?あ、はい」


 また目の前の景色が変わったと思ったら、誰?キサラと名乗る女性にサインを書いてと言われた。なんか社長的な人?


「あの、聞きたいことが何個かあるんですけど」


「ん?あー詳しくは起きてからカガリちゃんから聞いといてー私は今から寝なくちゃいけないから……ふわ」


「分かりました……」


 サインを書き終わると……うわ、またか……意識が……。


「あ、聞いてると思うけど死神には毎月ノルマが合ってそれをクリアしないとミライ君、なんやかんやで死んじゃうからね。じゃよろしくー」


 ……は!?いや今初めて聞いたけど、まぁ生き返れるだけマシなのか……?


 あー……上手く考えられない……意識……が。






「ん……」


 目を開けると空が見えた。


「あのー?大丈夫?急に倒れて……」


 むくりと起き上がる……うちの学校と同じ制服を着た女子に声をかけられる。


「あ、大丈夫です。それよりトラックは?」


「トラック……?いや、急にあなたが倒れただけですけど、本当に大丈夫?」


 なるほど、トラックに轢かれたという事象自体が無かった事にされたのか。


「そりより、あの……それなんですか?」


「それって?」


「頭の上、7って」


「は……?何、からかってんの?」


「いや頭の上ですって、それ!」


 それ!と指差すもその女子生徒は自分の髪の毛を引っ張るだけ。傍から見れば何をしてるんだコイツらはという感じに見えるだろう。


「もういいです!元気そうなら良かったです!あー心配して損した!」


 離れていく女子生徒の背中を見ながら気づく。あの人だけじゃなく、全ての人の頭に数字がある……。とにかく鹿島先輩に聞きたいことも沢山あるし学校へに急ごう。

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