ディスク1の2 俺はメイドさんを抱く!?

 コンコンッ!

「失礼しまぁす!」

 元気いっぱいに入ってきたメイドさん。

 一応紹介しておこう。このメイドさんは俺がこの館を買うと同時に雇った身の回りのお世話係だ。俺は家事全般何もできないのでメイドを雇わざるを得なかっただけなんだけどね。

歳は二十歳で俺とためだ。顔は正直言ってめちゃくちゃ美人。そこらの雑誌が顔負けするくらいだなめっちゃ失礼だけど。顔や雰囲気はお姉さん系だけどドジで天然の元気っぷりからはお姉さん感は失われている。もったいないね。

 ベッドに座っていた俺の横へ来るようぎこちない合図をした。俺のコミュ障っぷりに一切気にしないメイドさんは俺の横へと座った。

「お話というのはなんでしょうか?」

「メイドを始めて最近どうですか?」と書いた紙を見せた。

「もともと家事は得意なので問題ありません!」

 と明るく返事を返された。

 それから色々と館の事とかこの先も継続してメイドをやってくれるとか話した。紙に書いてだけど。

 一度会話が途切れ、休憩体勢に入る俺とメイドさん。ベッドの横にある小さな机の棚に入ってあるチョコを取り出して食べ始める。チョコを食べる俺に気づいたメイドさんは軽く指をさして言った。

「あ〜! ご主人様ったら、寝る前なのにチョコ食べてますねぇ〜! 寝る前に食べるのはいけませんよ?」

 とにやけながら言われてしまった。なので俺はチョコを一粒摘んでメイドさんの方へ近づけて小さい声で言った。

「じゃ、じゃあたべる?」

 途端にメイドさんの顔が赤くなり驚いた表情に変わった。俺が不思議に思うとメイドさんが照れた顔で言った。

「しょ、まぁお言葉に甘えさせてもらいますね?////」

 片手で髪を耳にかけて、もう片手はベッドに置いて自分の体を支えてこちらに体を傾けてきた。

「はむっ!」

 メイドさんは俺が摘んだチョコをそのまま食べた。あーん状態である。

「えっ?////」

 目を瞑りチョコをはむっと食べてしまった。ついでに俺の指も少し甘噛みされた。

「んー! 美味しいてますねー!」

 そんな事を言うメイドさんを横目に俺はほんの少しだけ考えてしまった。

 ごくりっ!

 この潤った指を舐めてしまおうか。そんな邪な考えが頭をよぎる。よぎりまくる! もうやっちまおうか!?

「実はわたし……」

 興奮している最中の俺に話しかけてきたメイドさん。

「私の家は結構貧乏で、チョコも食べた事なかったんです」

 そう語り始める彼女の目は寂しそうだった。

「お父さんは私が物心つく前に居なくて、お母さんが一人で私と下の子二人を育ててくれたんです。私が小学生低学年の時からお母さんのお手伝いをしていたので、だから家事は大の得意なんです!」

 メイドさんは過去の苦労を打ち明けてくれた。突然でびっくりはしたが、信用されている気がしてなんでか悪い気はしなかった。

「そこでです!」

 メイドさんが人差し指を立ててにこにこで言った。

「下の子二人のお世話もしてたわけですよ!」

 こくっと頷く俺。

「私は長女! お姉ちゃんなのです!」

 またもやこくっと頷く俺。

「弟が泣いた時にはぎゅっと抱きしめて撫でてあげた事もありましたねぇ……」

 ぎゅっと抱きしめた!? 決してそういう目で見ていたわけではないが、このメイドさんは結構お胸が大きい方であるのだ! だめだ、兄弟姉妹だぞ? そんな変な事をしているわけがないだろ! あやしているだけだ! 落ち着けぇ、落ち着け俺ぇ〜!

「チョコ食べただけなのに貧乏時代や家族の事を思い出すなんて変ですね、わたし。」

「へん、じゃ、ないよ!」

 ぎこちなくともなんとか言葉を出した。

「ふふ。ご主人様はお優しいですね! それとちょっと可愛らしいです」

「か、かわか、かわかみ!////」

「あはは! なんですかかわかみって!」

 驚いて変な言葉が出てしまったのを笑うメイドさんと目を逸らして顔が熱くなる俺。

「でも、そんな可愛らしい所、私大好きですよ! ご主人様!」

 !!?

 にこにこ笑顔ではいるが、その目は決して馬鹿にするような目ではなかった。むしろ、幼い子を甘やかすような目をしていた。

「メイドさん……」

「どうしたんですか? ご主人様」

 にこっとする笑顔に耐えきれず俺はついにやってしまった。

 ドサッ!

「きゃっ!」

 俺はついにメイドさんに抱きついてしまった。頭の中ではやばいだの嫌われるだの捕まるだの考えているのだが体はもう動かない。

 だがメイドさんは俺を優しく抱きしめてくれた。

「うふふ。薄々勘づいていたんですけど、やっぱりご主人様は甘えん坊さんなんですね!」

 俺はさらに強く抱きしめて顔は見えないように肩に顔を置く。

「いいんですよぉ〜! 今夜はたっぷりこのメイドに甘えてください♡」


 そしてこの日はメイドさんに抱きつきながらベッドに眠り込んだ。いや、メイドさんに眠り込んだ。

 あんな事になるとは知らずに……

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俺のメイドとの生活習慣びょう @11277loxy

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