第7話 映画 ルックバック 感想 後編 

今回はルックバックという言葉の解釈のいくつかと物語の構成を考えてみるよ。それぞれ独立させて書く、っていう予告をしちゃったけどごめん。一回にまとめます。


一、ルックバックという言葉に込められた作者の意図の俺なりの解釈


 1、過去を振り返れ 原点に帰れ 我、何ゆえに創作す? をたまには思い出せ。


 描けなくなるきっかけは描くきっかけにもなりうるってことかなって。


 藤野にとっては京本という読者の存在。京本をどう捉えるかによってさ。自分が勝てない相手と思って勝てないならやーめっぴって思ったり。逆に京本が自分に期待してくれてるから頑張ろうって思えたりとかさ。


2、背後に気をつけろ 油断すんなよ、エンタメ業界にはお前の寝首を掻こうとねらっているやつらが五万といるぞ。それに書き続けられなく理由なんていくらでも湧いてでてくるんだから。


まあ背中にも目をつけろっていうアニメ作品ガンダムのキャラ、アムロ・レイの名言もあるらしいけどさ。詳しくない俺にガンダムを語る資格はないと思ってはいるけど、あれなんでしょ? どうやら、このアムロって子、ニュータイプと呼ばれる超能力者で他人の感情がふんわりと感じとることができるんでしょ?


あ、あ、あ、ごめんなさい。有識者の方、怒らないで! 大きな声を出さないで! 指差してみんなで僕を嗤わないで! ごめんなさい。


ただ昔ガンダムの小説が存在することを知らなかったり、zzを「なにこれ? なんて読むの?」 って発言をして、その場にいた全員に嘲笑されたことが忘れられないだけなんですぅ。


おっと、俺の創作の原点「売れっ子になって、モテモテになって、俺を嗤った奴らを見返してやる!」 を思い出しちゃった...... そして思い出すと何やら力が湧くのよね。まあ、「俺なんて物語についてなにもわかってないんだ」って落ち込むきっかけにもなるんだけどね。この記憶。


3、背中を見ろ そして感じろ

どんな言葉よりも実際に同じことやってるやつがやってるときの背中には説得力がある、ってことがひとつ。もう一つは「誰かの想いを背負って」なんて言い方をすることがあると思うけど自分が誰かの背中に想いを預けたのと同様に自分の背中にも誰かの想いが預けられているぞ。たまにはそれを思い出せよ。っていうメッセージかと思ったよ。


まあ、ルックバックという言葉に多重に乗せられた意図で俺が推測できたのはこれくらいかな。で、これが物語の構成にもつながってくるような気がするのよね。


二、物語の構成

1、不特定多数に評価される私の初期衝動

教室の校内新聞の評判が噂される


2、私を越える不特定多数からの評価を得る存在の発現

京本が描いた4コマ漫画を見て絵の上手さに対する自信を失う


3、私とその存在との思いがけない出会いとその存在が自分を評価している事実

京本宅へ卒業証書を届ける


4、私の庇護のもとで私を認める存在との逢瀬(他者が知らない二人だけの秘密の時間の共有)

二人で漫画家を目指す日々


5、やがて私の庇護から離れ私のことよりも自分自身を認めたいと願いようになる存在

美大進学を目指す京本


6、離れた距離と時間が気持ちを二人の気持ちの距離も広げるさなかに、かつて私を認め、他者の知らない時間と空間と気持ちを共有してきた存在の消失

漫画執筆中に京本に代わる存在がいないことを感じながら京本の事件を知る


7、その存在が遺した作品により、庇護の必要がなかったことを知り、また自分は消滅しないと認識されていたことを知る。

京本宅であり得たかもしれない世界線の二人の関係のあり方と京本がかつて描いた漫画の発見 刃物で背中を刺されながらもそれでも前に進む自分の姿が4コマのオチとして描かれている。


己が京本をモデルに描いた4コマのオチでは京本は白骨死体を描いた当時の本心に気がつく。

自分も京本の才能に妬み京本に危害を加える側だったかもしれないことに気がつく。そして自分がそのようにとらえていた相手は自分は刃物で刺しても死なない自分を助けてくれた恩人として描いていた。


余談として扱うべきかもしれないけど俺は京本のモデルをシュレディンガーの猫だと思った。


8、想いを託されていたことを思い出すと同時に自分も想いを託していたことに気がつく

京本のどてらにかかれた己のサイン 自分が越えられないと思う存在に自分の名前を刻むことができていたことの視覚化


9、できない理由探しを止め、ただ創作を続ける私。

ただひたすら創作を続ける者の後ろ姿


そして涙を流した俺。

理由を考えると人間様々な側面を美しい映像で見せてくれた上で、困難に見舞われても自分の選択次第で人から奪う存在ではなく与える存在になれることを示唆していることに人間の素晴らしさ、俺、人間でよかったっス! って思わせてくれたからだと思ったよ。


あんまりこの場で言うことじゃないけどさ。


暗い話嫌な人はここでやめて。

誰もがあの男のようになってしまう可能性について俺の経験を踏まえて書くからさ。





じゃあ、いいね。あと少しスクロールしてね。












俺はかつてパワハラを続けてきたクソ上司のためにタクシーを呼ぶことがあってね。ふとめについた道路に落ちていたコンクリートブロックを奴の後頭部に叩きつけたい衝動をこらえて目眩が起きた経験があってさ。


一歩間違えば俺なんて簡単にあの犯人のようにおかしくなって実行してしまうかもしれないと思ってね。


自殺しようとして偶々失敗した、なんて経験もあってさ。


で、それでも生きている。さらには誰かのためになにかをできる。っていうのは本当に素晴らしくて、そう簡単にできるようなことではないんだなって。だけどさ。たとえ環境に恵まれなくても自分の意思で誰かのためにできることがあるんだな、って思わせてくれた作品だなって思ったよ。


ど、まあ今回はこんな感じかな。


重たい自分がたりを紛れ込ませてごめんね。でも似たような経験を持つ人が自分だけじゃないって思ってもらえるかなって期待が俺のなかでちょっとだけあってさ。

ま、俺のこの気持ちも誰かに知ってほしかったっていうのが俺の中の99%だけど。


ってことで、じゃあ、またね。


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