45(2024.10.21)
「それじゃあ、お留守番よろしくね。サム」そう言って、お母さんは買い物へ出かけました。
家の中にはサム一人だけ。怒られる心配のない、自由の身です。
さあ、何をして遊ぼうか。
サムはおもちゃ箱をひっくり返しました。沢山のおもちゃがやかましく音を立てて床に散らばります。どれも自慢のお宝です。
そこからチューイングガムのパッケージをひとつ、手に取りました。ごくありふれた板ガムです。でも、どうしておもちゃ箱から出てきたのでしょう?
わたしたちの疑問をよそに、サムはパッケージを開封して、けれども食べることなく部屋の隅に置きました。それからベッドに入り、すやすや寝息をたて始めたのです。Zzz……。
夕方になり、ようやく目覚めたサムがベッドから下りました。ガムを拾い上げ、中身を調べています。にっこり。満足げな笑み。
いったい何があったのでしょう? CMのあと、気になるその理由が明らかに!
「ヘイ、キャシー」(快活な男性があいさつする)
「ハアイ、マイク」(快活な女性がそれに応じる)
「いやあ、最近雨の日が多いね」(両掌を上に向けて軽く広げ、辺りを見渡す)
「ええ。洗濯物が乾かなくって」(うなずき、ずぶ濡れのタオルを持ち上げる)
「部屋の壁もカビてくるし」(背後の壁がみるみるうちにカビで覆われ、変色する)
「気分も沈んできちゃうわ」(ブラウスの袖をまくって手首に巻いた包帯を見せる)
「そんな天気だと、ほら、ガム蟲だって出やすくなる」(いたずらな笑みを浮かべて迫る)
「ああマイク、その名を言わないで。聞くのも嫌なの」(引きつった笑みを浮かべて退く)
「ところがキャシー。これがあれば大丈夫なんだ」(自慢げに商品を取りだす)
「何それ、ただのチューイングガムに見えるけど」(怪訝な顔で商品を眺める)
「チッチッチ。これはね、ガム蟲専用の捕獲罠、その名も『カムガムダム』! 使い方は簡単、開封して、部屋の隅に置くだけ。合成フェロモンがたちまちガム蟲をおびき寄せる。もちろん人体には無害。ガム蟲が内部に潜ると、BANG! この通り、ばっちりキャッチ!」(指を左右に振る/画面に『カムガムダム』の大文字/実演映像に切り替わる/開封して、床に罠を置く/フェロモンが出る様子の図解/人のイラストが大きな〇で囲まれる/ガム蟲の模型が罠に潜り込む/画面いっぱいの〈BANG!〉/金属板に挟まるガム蟲の模型)
「まあステキ!」(両手を顔の横で合わせ、片足を膝のところで曲げる)
「さて、このガム蟲だけど、この後どうすると思う?」(罠を軽く振りながら訊く)
「それはもちろん、ゴミ箱へPOI!に決まってるわ」(青いポリバケツを指さす)
「チッチッチ。正解はこうさ!」(罠から抜き取ったガム蟲を口に放り込む)
「オーノー、気でも狂ったの!」(目を見開き、両手で口元を押さえて叫ぶ)
「これが『カムガムダム』だけの浄化機能。捕まえたガム蟲の毒素を生命とともにキレイに抜き取って、食用ガムにできるんだ!」(毒素が生命とともに抜けでてゆく様子の図解)
「まあステキ!」(両手を顔の横で合わせ、片足を膝のところで曲げる)
「味はミント、オレンジ、グレープの選べる三種類」(緑、橙、紫のパッケージが並ぶ)
「まあステキ! ねえそこの君、美味しいかしら?」(ガムを噛んでいるサムに訊ねる)
(無言でガムを膨らませるサム。果てしなく膨らむ風船にスタジオが呑み込まれる)
「あんまりガムばっかり食べていちゃダメよ」(お母さんがサムの手からガムを没収する)
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