第36話 火曜日の雪だんご

昨日の雪は夜をとおしても、そんなに積もらなかった。

せいぜい屋根や木の上を白くするくらい。

道路脇にまとまっている雪は、汚れてベチャッとしていた。

このぐらいなら滑る心配もないので安心だ。


病院の外周、細かい白い石をしいて木が植えられている箇所がある。

ちょうど見える場所で二人の女性が話をしていた。

おばあさん向かって「ほらっ、雪よー、久しぶりでしょう。」と話しかける女性。

おばあさんは、うん、うん、と二度ほど頷いていた。


(嬉しそう、本当に久しぶりなんだなぁ、微笑ましい)


すると、おばあさんが「石じゃろっ」


(へ?)


確かに細かな丸っこい石がたくさんある。が、その先の木の根元に、丸っこい雪が、だんごのように集められている。

先程の話の雪は、どう見てもあれだ。

その後の二人は想像どおりの問答大会。


微笑ましいを通り越して笑いになってしまい、こらえながら、足ばやにその場を過ぎた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る