Vol:9 BAD END



「確かに、困難な事に変わりはありませんが、

決して、不可能ではありません。」



ーー不可能に近い、難しさですけど!?



対人関係で、圧倒的な経験が足りない

竜司にとっては、ほぼ不可能レベルであり、

なけなしの励ましにしか、聞こえない。



「何故ならば、現実では、いくらでも表面を取り繕えます。」



「しかし、夢では、その人の全てが、露わになります。」



「つまり、弱みや脆さも、剥き出し状態です。」



「竜司さんは、そこを突いて、調教すればいいのです。」



ーー弱み...ねぇ。



かすかだが、竜司は、活路を見出そうとする。



彼なりに、頭の中で整理すると、

正面突破で、真っ向から立ち向かう方法は、

まず、勝ち目がない。



みすみす、犬死するだけの結果は、目に見えている。



だから、まず、相手の弱点を探り、

アドバンテージを取る必要があるだろう。



聖女の言葉を借りれば、様々な問題を抱える

現代社会では、老若男女、皆等しく、

精神的な不安定さを抱えている。



ーー付け入る隙は、一応、あるのか。



たとえ、相手が、権力者であれ、

ケンカ自慢であれ、無敵キャラで、チート的な、

存在の手がつけられない人は、いないだろう。



ーーどこかに、ウィークポイントは、存在する。



性格や好み、タイプ、苦手・嫌いな事、

趣味、嗜好、生活パターン、価値観...etc



あらゆる視点を相手を観察し、泣き所を探し、

徐々に、篭絡する準備が、大事になるだろう。



まるで、多くのヒロイン達を攻略する、

ギャルゲーのシナリオ展開さながらである。



ーーリスクしかないが...。



一つの選択肢を誤れば、BAD ENDへまっしぐら。



一方で、その選択を一つずつ潰していけば、

いずれは、HAPPY ENDに辿り着く。



ーー出来ない事は、ないかもな。



かすかな光が、見えてきた。



少しずつ、自分の身に降りかかっている

厄介事の答えが、生まれようとしている時。



竜司は、ここで、気になる点があった。



ーーそういえば、失敗すれば、どうなる?



仮に、攻略の準備を完璧にしたしても、

100%の成功は、ゲームの様に、保証されていない。



時には、エラーも、起こるだろう。



相手は、生身の人間だ。



ーーそう都合の良い事はないはず。



恋愛シミュレーションゲームの様に、

トントン拍子に上手くいく事は、まず、無いと

思って、臨んだ方がいい。



しくじった時は、どうなるのか?



その後始末を、聖女は、簡潔に答えてくれた。



「失敗すれば、相手の夢から追い出され、現実に戻ります。」



「先程の竜司さんが辿った結末、

つまり、死ぬ、という事になりますね。」



ーーBAD ENDじゃなくて、DEAD ENDなんですけど!?



ある意味、死刑宣告をされた竜司は、

自分が、童貞とか、チェリーとか、悠長な事を

言っていられる立場ではないと、自覚を強める。



喉元に、ナイフを突きつけられる様で、肝を冷やした。



「また、死んでも、問題ありませんよ。」



そこにまた、聖女は、竜司にとって、

お節介もいいところな、フォローになっている様で、

なっていない、身も蓋もない、慰めが入った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る