Vol:3 再会



ーー竜司さん、ご機嫌よう。



どこかで聞き覚えのある声が、聞こえた気がした。



ーー気のせいか?



一瞬、竜司は、空耳かと思った。



が、目の前に広がる光景を見た刹那、



竜司は、理解してしまった。



「また!」



「ここかよ!!」



さっきまでいた、あの夢の世界であった。



現在、竜司がいる場所は、

彼の部屋ではなく、東ヨーロッパの

レンガブロックの建物に囲まれた街中。



その屋外にある、カフェのイスに座っていた。



竜司にとって、夢から離れたばかりなのに、

まだ、生温かな感覚として残っている。



つい、最近の出来事だが、遠い過去の様でもあり、

一度、離れた筈なのに、身体は忘れそうにない。



そして、例の人物とも、再会を果たした。



「また、会いましたね。」



変わらない振る舞いや雰囲気の、聖女がいた。



そして、少し離れたテーブルの席で、

紅茶を一杯、優雅に、嗜んでいる。



ーーいやいやいやいや...!



竜司は、ただただ、困惑していた。



無理もない話ではある。



彼にとっては、ほんの少し前に、別れたばかり。



しかも、意味深な言い回しを残して消えたのだ。



何かしらの、いくつもの謎や伏線を

回収された後、その全てが明かされる時に、

ボス格として登場する展開ではないか。



それが、こうも容易く、現れていいのものなのか。



ーーああいう別れ方をしてからの再会は、

随分、先の話になるパターンでしょうに...。



竜司は、アニメやドラマ等のシーンに

よく見られる、劇的な別れからの再会、



というお決まりなパターンを想像していた。



しかし、あっけなく、その期待は裏切られた。



どうやら、ありきたりのテンプレートは、

竜司のシナリオに、用意されていないらしい。



ある意味、物語の空気を読まない聖女は

もちろん、この世界では、これまでの

常識が通用しない事を、竜司は、思い知る。



ーーハァ...仕方ないか。



これも、自分の描かれたシナリオ、

運命だと、諦めの境地に達する竜司。



だが、予想に反してのスピード再会を

果たした代わりに、モヤモヤと抱いていた

彼の疑問は、解消される事になるだろう。



不意を突かれた形だが、竜司は、好機とも捉えた。



「束の間の現実は、いかがでしたか?」



聖女は、竜司が現実に戻り、その目で見て

感じた出来事を尋ねてきた。



その佇まいは、洗練されており、

竜司自身、どう切り出していいのか、

口籠もりながら、慎重に選んでいく。



「時間が...。」



竜司の最初の言葉が出る前から、

すでに、聖女は把握しているかもしれないが、

遮る事も、挟む事もせず、待っている。



竜司も、ゆっくりと、素直に、

その身に起きた事を話し始めていく。



「時間が、巻き戻っていました。」



「まるで、最初から、そんなに時間が

経っていなくて、そもそも夢にいる事が、

ほんの一瞬に、過ぎなかった様でした。」



まだ、竜司の頭の中では、状況を

整理し切れておらず、中途半端なまま、

説明している状態だ。



それでも、何とか、彼なりの現状に対する

理解度を確かめる様に、連想ゲームの感覚で、

何が起きているのかを、言葉にしていく。



「なんと言えばいいか、わかりませんが...」

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