Vol:2 ご機嫌よう
寝る直前、電気は消しており、部屋も暗かった。
外も、カーテン越しからでもわかる程、
深夜帯で、辺りは暗闇であったはず。
竜司が、夢にいた時、時刻は、朝の8時過ぎ。
会社の遅刻が、確定していた。
窓の外も、明るく、朝陽が出ていた。
しかし、現在、部屋は、暗いままである。
ようやく、竜司は、異変に気づいた。
ーーシャー!
カーテンを開けてみたが、外は、真っ暗闇の夜であった。
「おかしい...。」
この違和感の正体を掴むべく、時計を見た。
時計の針は、ちょうど、深夜0時過ぎを指している。
秒針が示している時刻は、竜司に衝撃の事実を
伝えるのに、必要十分な材料であった。
「嘘...だろ...?」
眠ってから、たったの10分しか経過していない。
彼の感覚では、夢にいた時と同じ、
遅刻の時間を過ぎる程、寝ていた。
つまり、8時間以上の睡眠を取った。
そう思っていた。
だが、現実は、ほんの10分しか経っていない。
信じられない余り、竜司は、携帯の画面に
表示されている時刻も、確認した。
ーー同じだ...。
結果は、アナログ時計と同じ時を、指していた。
それでも、この疑心暗鬼の状態を解消すべく、
テレビのスイッチを入れ、公共放送の右上に
表示されている時間も、確認した。
ーーこっちも...。
が、こちらも、同じであった。
日付も、竜司が眠る前と同様。
1日以上寝過ぎたという線も消えた。
彼の体内時計も、10分しか経っていない事実に、
戸惑い、混乱が生じている。
「一体、これはどういう事だ?」
夢と現実のギャップに、困惑するばかり。
あれだけ、濃密な夢であったのに、
現実の時間では、ほんの一瞬の出来事として、
片づけられていた。
実際の竜司の身体は、十分な睡眠を取れていない。
アドレナリンが分泌されていて
興奮状態であったが、徐々に、
冷静さを取り戻しつつある。
そのせいか、再び、自然と、瞼が重くなっていく。
いくら、夢で8時間以上眠っていたとはいえ、
リアルでは、たかが10分しか寝れていないのだ。
「とりあえず...。」
「また、寝てから考えるか...。」
ひとまず、十分な休息を取った後、出直す事にした。
布団を身体に被せ、竜司は、思った。
ーーとりあえず、ハッキリとわかった事が一つある。
ーーあの聖女は、サイコパスだ...。
夢で起きた出来事を、たったの一言で強引にまとめる。
あの聖女の事を思い出すと、
自然と、眉間にシワが寄ってしまう程、
苦い記憶として、焼きついた。
現実に戻っても、結論に、相違はなかった。
彼なりの解釈で、二度寝をするのであった。
「竜司さん、ご機嫌よう。」
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