Vol:21 毒を喰らわば皿まで



「二度と相手に舐めた態度を、

取らせないコツですが、まずは、

王様のイメージからしてみましょう。」



「例えば、『魔王』、です。」



ーーそこは優しい王様とか、

善なイメージじゃないんだ。



意外なチョイスであったが、

すっかり、常識を壊されている

竜司は、そういうモノだと受け入れた。



「それも、とびっきりの大魔王を、です。」



「竜司さんの性格的に、魔王になる位が、

ちょうどいい、塩梅なのですよ。」



「世界を支配せんとする方が、

今後の助けにもなりますしね。」



「いくら、魔王が相手となれば、

村人達は、下手にならざるを得ません。」



「ただし、動機は悪意じゃなくて、ですよ。」



これらの言葉に、竜司自身、驚く程、

冷静に、受け入れられていた。



むしろ、聖女の言葉で、ラクな気持ちになった。



ーーそうか...。



ストンッと、腑に落ちる様に、飲み込んだ。



まるで、長年の取り憑かれたモノが、

除霊されて、肩の荷が降りた感覚に近い。



先程まで、竜司は、禍々しいオーラが

身体全体を包み込み、暗黒卿さながらの

ヴィランとなっていた。



それは、彼の復讐心によるモノであり、

その姿は、魔王そのものとも言える。



にも関わらず、魔王になるとは、どういう事か?



聖女は、竜司の力を、認めている。



世界はおろか、銀河の支配さえも、否定しない。



しかし、聖女が指摘したのは、彼の動機にある。



力は、本人の意志次第で、何色にも染まる。



ついさっきまでの竜司が変貌した姿・形は、

闇に染まった事による、投影によって起きた。



映画やアニメ、マンガ、もちろん、

現実の世界でも、そうなった人物は

どうなっていくのか、



いずれにせよ、その結末は、想像に難くない。



破滅の未来が、待ち受けているであろう。



ーーそっか。



だから、手段がどうであれ、竜司自身、

どうしたいのか、問いを投げかけられた。



少なくとも、彼の決意に、闇を帯びていない。



今後の彼の力や在り方は、今後の旅を通して、

浮かび上がってくるのだろう。



ーーひとまず、最初の試験はパスした、所か。



そして、彼のパーソナリティを考慮し、

より力を引き出していく為には、

敵の親玉のメンタリティが重要。



逆説的であるが、毒を喰らわば皿まで、だ。



その表現が、「魔王」である。



竜司自身、勇者よりも、魔王という響きの方が、

聞こえが良く、また、満更でもなかった。



そもそも、人の下について働く事は、好まない。



むしろ、やりたい事を自由にやるのが、彼の性分。



何かと意見を言っては、周りを動かしていた。



ーーそういえば...。



それは、物心がつき始めた遠い過去。



勉強よりも遊びが最優先、

塾の講師や家族には、心の中では、

中指を立てている位の悪ガキ、



気が強く、自分の意志が、何よりも大事だった。



ーーいつからだろうな...。



現在の竜司の姿から、かけ離れてた

ギャップに違和感を覚えた。



古い記憶の為に、定かではない。



だが、抑圧されてしまった、確かだ。



彼の発言は、周りから疎んじられ、嫌悪、

鬱陶しく思われ、その口を無理矢理に閉じ、

首を鎖で縛られた状態になっていた。



それは、竜司にとって、屈辱そのもの。


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